出産費用の保険適用は国民にとって重要かつ必須 東大・山口慎太郎教授

出産費用への公的医療保険の適用を巡る議論が、26日の厚生労働省の有識者検討会でスタートした。東大の山口慎太郎教授に聞いた。

出産費用は、海外でもカナダなど保険制度のある多くの国で公的医療保険でカバーされている。日本では「(正常分娩による)出産は病気やリスクではない」との考え方もあるが、合併症のリスクを伴う医療的ケアが必要であり、保険適用は国民にとって重要かつ必須なのは間違いない。

現在は50万円の出産一時金が支給されているが、出産費用が支給額を上回り、妊婦の経済的負担になっているケースもある。保険適用で一律化し、地域格差も解消すべきだ。また、保険適用に伴い出産費用の原則3割が自己負担となるのではとの懸念も出ているが、新たな支援制度などと組み合わせて妊婦の負担がなくなるような制度設計が必要だ。同時に医療機関の収益減や分娩からの撤退を招かないような(診療)報酬も設定すべきだ。

深刻化する少子化の要因は複雑に絡み合っており、出産費用の保険適用だけで少子化に歯止めをかけられるわけではない。だが、妊婦の経済的負担減は取り組むべき課題の一つだ。母親が妊娠中の経済状況は子供の成長や発達に影響する。出産費用の保険適用は、将来の社会を担う子供たちの健全な成長を支えるための取り組みともいえる。(聞き手 大島悠亮)

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