選択的夫婦別姓議論、自民が3年ぶり再開 慎重派は懸念「保守離れ加速する」

自民党は近く選択的夫婦別姓を巡る党内議論を3年ぶりに再開させる。経団連が早期実現を求める提言を発表するなど、家族の多様性を尊重する風潮が背景にある。とはいえ、保守層を中心に家族の一体感が失われるとして慎重論も少なくない。保守層が求める早期の憲法改正が一向に進まない中で推進論に傾けば、「自民離れ」が加速するのは必至だ。

自民の茂木敏充幹事長は25日の記者会見で、「多様な人材の活躍は社会活力の源だ。選択的夫婦別姓は社会全体にも関わる問題であり、国民の幅広い意見も踏まえて、しっかり議論を進めていきたい」と述べた。

自民の渡海紀三朗政調会長は21日、選択的夫婦別姓を含む「氏制度のあり方に関するワーキングチーム(WT)」で議論に着手すると表明した。新たな座長には逢沢一郎党紀委員長を起用する方針だ。党幹部は「政権与党として、いつまでも夫婦別姓の議論を棚ざらしというわけにはいかない」と議論再開の必要性を強調する。

自民は菅義偉政権下の令和3年4月にWTの初会合を開催。同年6月に論点整理をまとめたが、議論が紛糾したため制度導入の是非には踏み込まず、結論を先送りしていた。

しかし、経団連が今月10日、早期実現を訴える政府への提言を発表したことを受け、党内では再び推進派と慎重派が動きを活発化させている。

自民の有志議員でつくる「選択的夫婦別氏制度を早期に実現する議員連盟」(会長・浜田靖一国対委員長)は21日、国会内で会合を開き、経団連から提言を受け取った。浜田氏は「大変心強い。時代の要請として受け止めていく」と語った。

一方、慎重派でつくる「婚姻前の氏の通称使用拡大・周知を促進する議員連盟」(会長・中曽根弘文元外相)は19日に党本部で会合を開き、結婚前の氏を通称として幅広く使用できる環境整備を進めることを確認。慎重派の議員は「拙速に議論を進めれば『岩盤保守層』のさらなる離反を招きかねない」と不安を口にする。岸田文雄首相(自民総裁)も21日の会見で、慎重な姿勢を示した。

対立の激化は自民分断の芽となりかねず、党重鎮は「経団連の手前、議論はしなければならないが、明確な方向性を示すことは難しいのではないか」と述べた。

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