宿泊税「しっかり研究」と和歌山知事 導入には慎重姿勢

京都市や大阪府など全国の自治体で導入が進んでいる「宿泊税」について、和歌山県の岸本周平知事は20日、県議会定例会の一般質問で「非常に貴重な税財源となる」との認識を示す一方、「県全体のバランスを考慮しつつ、今後、しっかりと研究したい」と述べ、導入には慎重な姿勢を示した。

宿泊税は、ホテルや旅館の宿泊客らへの課税。地方団体が地方税法に定める税目(法定税)以外に、条例によって「法定外税」として徴収する。税の目的は、観光振興に必要な施設や交通インフラなどの整備のほか、観光客が押し寄せて住民生活が脅かされるオーバーツーリズム(観光公害)への対応に必要な財源とする場合が多い。

岸本知事は答弁で、宿泊税の導入に必要な条件について言及。観光客が税を支払えることやオーバーツーリズム対策に使う自治体の財政状況を踏まえ、地元の観光関係者や住民の合意が整うことを挙げた。

県内では、今年で登録20周年を迎える世界遺産・高野山がある高野町が令和10年4月に法定外税を導入する方針を発表。観光客に課税する「入山税」の形式を検討しており、オーバーツーリズム対策やインフラの維持管理費の確保を目的としている。

岸本知事は高野町の「入山税」について「繁忙期の駐車場の運用など財政事情はある」とし、「地元の合意がどうなるかを見守っていきたい」と発言。一方で「県では高野山、白浜、熊野三山のようにたくさんの人々が来る地域があるが、努力していてもホテルや旅館の稼働率が高くない地域もある。(宿泊税の導入で)どのような影響が出るか地域ごとに違ってくる」との考えを示した。

その上で「観光振興のための行政需要に対処する使い道もある非常に貴重な税財源となる」と述べ、宿泊税の徴収コストや制度設計などについて研究を進めるという。

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