「自縄自縛的くびきから脱却を」 国防最前線の島・与那国町長が改憲の気構えを説く 

日本最西端の島にある沖縄県与那国町の糸数健一町長は3日、「『21世紀の日本と憲法』有識者懇談会」(櫻井よしこ代表)が東京都内で開いた公開憲法フォーラムに登壇し、「自縄自縛的な現憲法のくびきから脱却を図るため、憲法改正に向けて勇往邁進するときだ」と改憲を強調した。糸数氏は台湾海峡問題を踏まえ、自衛隊の明記や緊急事態条項の創設に加えて交戦権の否認の見直しにも言及し、「平和を脅かす国家に対して一戦を交える覚悟が問われている」と気構えを説いた。要旨は以下の通り。

先島を守り抜く意思表示

国防最前線の与那国から参りました。

約30年前、当時住んでいた東京を離れ、与那国島に戻った時に感じた素朴な疑問が、なぜ沖縄本島から与那国島まで509キロの間に自衛隊も米軍もないのか。なぜ与那国島の真上に台湾の防空識別圏が敷かれているのか。町民として非常に屈辱的なことだった。

急がないといけない。仲間を募り、国家の責任で509キロを埋めるよう自衛隊を配備してくださいと訴え、誘致活動を行った。

平成28年、与那国島に陸上自衛隊の駐屯地が新設され、31年に(沖縄県)宮古島、(鹿児島県)奄美大島、昨年3月に(沖縄県)石垣島に陸自の駐屯地が開設された。先島を断固として守り抜くという政府として明確な意思表示が発信できたかと少しは安堵(あんど)している。

台湾は一番大切な隣国

しかし、尖閣諸島や台湾有事を考えた場合、さまざまなことが浮き彫りになり、突き詰めると現憲法に突き当たる。憲法や法律を学んだ学者ではないが、誰が読んでもおかしな日本語で書かれた前文からして、現憲法は先の大戦における大和民族の命を惜しまぬ勇猛果敢さに恐れをなしたマッカーサーをはじめ連合国軍総司令部(GHQ)に、かすめ取られた一部の日本人も加担して日本人を徹底的に粉砕するために作成された代物ではないか。

台湾は一番大切な隣国だ。旧宗主国として責任放棄してはならない。台湾が共産党一党支配の中国に武力行使であれ、名ばかりの平和統治であれ併合されれば、台湾海峡問題は与那国海峡問題になる。そうならぬようにする必要がある。

最低でも新しい憲法には自衛隊明記と緊急事態条項を盛り込む必要がある。できれば現憲法9条2項、「国の交戦権は、これを認めない」の「認めない」の部分を「認める」に改める必要がある。自衛隊、海上保安庁両法の改正と両組織のシームレスな運営、連携および作戦展開の上からも急ぐ必要がある。尖閣諸島、台湾有事の対応、地震、津波、台風など自然対応に即応可能な、強くしなやかで美しい憲法の制定を提言させてもらう。

エコノミックアニマルと化すのか

この日本が自縄自縛的な現憲法のくびきから脱却を図るためにも日本国民は憲法改正に向けて勇往邁進する、今がその時だ。岸田文雄首相はじめ国会議員には、一日も早く国会で憲法改正に向けた審議を進め、発議してほしい。自由、民主主義、法の支配、日本と同じ普遍的価値を共有する台湾を守るということは戦略的に50年先100年先を見据えた日本を守るということだ。まさにエコノミックアニマルと化して、12億人市場に目がくらんで将来、中国の属国に甘んじるのか。はたまた台湾という日本の生命線を死守できるかという瀬戸際にある。

このような国家存亡の危機にひんしては超法規的措置を取ってでも国家の命運をかけ、首相をはじめ、国会議員はもちろん全国民がいつでも日本の平和を脅かす国家に対しては一戦を交える覚悟が問われているのではないか。ともに、新しい憲法の制定に向けて頑張ってまいりましょう。(奥原慎平)

いとかず・けんいち 70歳。与那国町出身。東京理科大中退。平成18年の町議選で初当選し、3期務める。町議会議長など歴任。令和3年8月の町長選で初当選。

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