東京15区補選で波紋広げる選挙妨害 公選法改正の動きも 告示後、公然と行為は異例

衆院東京15区補欠選挙(28日投開票)で一部の陣営が他候補の演説会場に駆け付け、大きな声で政策やスキャンダルについて〝質問〟する行為を繰り返し、円滑な選挙活動が妨害されている。こうした動きを受け、与野党からは公職選挙法を改正し、妨害への規制強化を検討するよう求める声も出始めた。

活動中止するスタッフも

「まだまだ妨害行為は止まらない。何らかの法規制が必要ではないか」

日本維新の会の若手議員は、こう問題意識を投げかける。

同区補選には維新の候補も出馬しており、一部の陣営は維新が成功を目指す2025年大阪・関西万博の開催の是非などについて維新陣営に執拗に質問を浴びせている。選挙会場は罵声ともとれる大声が飛び交う事態となっている。

若手議員は「暴行罪で訴えられるレベルで、少なくとも威力業務妨害罪には該当するのではないか」と語る。

実際、ある陣営のボランティアスタッフの女性は妨害活動に直面し、恐怖のため選挙活動が継続できなくなったという。

維新や国民民主党からは、公選法の選挙の自由妨害罪の適用がしやすくなるような法改正や罰則の強化などの検討を求める声があがっている。

多くの議員が類似の被害経験

選挙ポスターをはがされるといった妨害は、過去に多くの与野党議員が被害にあっている。

自民のベテラン議員は「街頭演説中に『お前の演説など聞きたくないんだ』と怒鳴られた」と振り返った。別の自民の若手議員は、東京電力福島第1原発事故を巡って街頭演説中に批判されたという。「『お前ら自民党が原発政策を進めたんだろう』と怒鳴られ、持っていたのぼり旗を蹴られ、地面に転がった旗も再び蹴られた」と語る。

令和4年7月に死去した安倍晋三元首相も街頭演説中、「安倍辞めろ」などと連呼する集団に妨害された。

一方、選挙が告示された後の妨害行為は、これまで今回のように公然と行われるケースは少なかった。

立憲民主党の辻元清美参院議員の場合は、演説の際に辻元氏のマイクが奪われ、事務所関係者が暴行されたことがあった。刃物が事務所に届けられた経験もあるというが、こうした嫌がらせは選挙の告示前だったという。立民関係者は「選挙が始まってから辻元氏に対する妨害は記憶にない。告示後に妨害すれば捕まる可能性が高まるからだろう。今回の東京15区の件は確信的な行為だといえる」と語る。

玉木氏は妨害候補と対話

東京15区補欠選挙を巡っては、国民民主の玉木雄一郎代表が23日、同党が推薦する候補の応援に駆け付けた際も、一部陣営の候補が駆け付け、玉木氏に向かっていった。

国民民主の関係者は候補を制しながら、「あなたにも選挙の自由がある。こちらにも選挙の自由がある」と訴え続けたが、候補は目を合わそうとしなかったという。この関係者は産経新聞の取材に「(一部陣営が)『選挙妨害ではない』といっても、選挙の自由と自由が衝突すれば、残るのは妨害行為だ。有権者が見ている前で恥ずかしくないのか」と憤った。

一方、玉木氏は一部陣営が求める〝質問〟に約20分応じていた。一部陣営の候補も玉木氏の姿勢に満足したのか、玉木氏にグーサインを向けてその場を去っていった。

国民民主の伊藤孝恵参院議員も25日、東京15区補選で応援に駆け付けた際、一部陣営に遭遇した。伊藤氏はその様子についてX(旧ツイッター)にこう書き込んだ。

「質問に答えろよ! 質問に答えたら静かにしてやるよ! と絶叫されていたので、私が答えます!と名刺を渡したら『なんだ国民民主か、国民民主は昨日“たまちゃん”(=玉木氏)に答えてもらったからもう用はない』と言われました」(奥原慎平)

ジャンルで探す