「ゴジラ」の山崎監督らが官邸に 新資本主義会議、コンテンツ産業の活性化を議論

政府は17日、新しい資本主義実現会議(議長・岸田文雄首相)を開き、官民連携でのコンテンツ産業の活性化について議論した。日本のゲームやアニメなどコンテンツ産業の輸出規模は半導体や鉄鋼産業に匹敵するが、クリエーターへの収益還元が十分ではないという課題がある。会議で示された論点案では公正取引委員会による取引慣行の実態調査を促しており、年内にも音楽と放送番組の分野で開始したい考えだ。

「スタッフまで報酬届かない」

この日は現場視点での意見を求めるため、「万引き家族」でカンヌ国際映画祭の最高賞「パルム・ドール」を受賞した是枝裕和氏と、「ゴジラ―1・0(マイナスワン)」で米アカデミー賞の視覚効果賞を受賞した山崎貴氏の映画監督2人が招かれた。

2人は首相官邸で記者団の取材に応じ、是枝氏は「個々の監督が現場で戦っているだけでは、変わらない部分もある。どういうふうに業界全体の取り組みとして広げていけるかというのが、会合に出た一つの目的でもある」と説明した。

山崎氏は「映画が世界的に評価されたとき、それがスタッフまで報酬面も含めて届かない部分がある。国と民間が一緒になってシステム自体を変えていき、映画産業がもっと夢が持てるようにやらなければ、若者が入ってこない」と語った。

デジタル、日本出遅れ

世界のコンテンツ産業でデジタル化が主流となる中、日本は映像や音楽などの分野で出遅れている。米動画配信大手ネットフリックスの有料会員数が2億人を超えて好調なのに対し、日本のテレビ局の広告収入は減少。在京民放4局の制作費の合計は、ネットフリックスの4分の1程度だという。

音楽市場も日本ではCDなどの音楽ソフトの比率が音楽配信を上回るなど、構造的に現場のクリエーターらに収益が十分に行きわたらない状況となっている。

官民でビジネスモデル構築

論点案では、クリエーターや制作会社の多数が多重下請け構造の中にあると指摘。取引適正化に向け、契約作成のための専門家による個別支援や弁護士相談窓口の整備の検討を促している。

また、若手を海外に派遣する機会の提供や、国内のスタートアップ(新興企業)がエンタメ分野に新たに取り組む際の支援も求めている。

首相は会議の中で「クリエーターが安心して持続的に働くことができる環境が未整備だ」と指摘し、官民によるビジネスモデルを構築する考えを示した。

政府は経済の好循環を実現する実行計画の改定について6月ごろの取りまとめを目指しており、今回の議論も反映させる見通し。(今仲信博)

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