【自公過半数割れの衝撃】高市支持派が仕掛ける石破首相退陣要求のタイミング 11月臨時国会での野党不信任案提出に呼応の可能性も

高市早苗氏を支持する反石破勢力は倒閣をいつ仕掛けるか(写真/共同通信社)

 国民の怒りがついに爆発した。自公は過半数割れに追い込まれ、現役の大臣や大臣経験者、さらには公明党代表の石井啓一氏まで落選するなど、大物が次々と苦杯をなめる結果となった。だが、政界全体を巻き込む“本当の大嵐”がやってくるのはこれからだ。自民党総裁選で注目を集めた勢いで解散総選挙を乗り切ろうとした石破茂・首相の目論見は大きく外れ、恨みを募らせた反主流派との政争が始まる。発火点と見られるのは高市早苗・前経済安保相だが、それは燎原の火の如く燃え広がり、日本の政界地図は大きく塗り替えられようとしている。【全4回の第1回】

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選挙応援で“仲間作り”

 総選挙の終盤、自民党内では“政界秋の陣”をにらんだ全く別の方向の2つの動きが見られた。

 厳しい情勢が伝えられるなか、党執行部は選挙後の政権維持を必死で画策していた。

 10月21日に関西での応援演説で悲痛に支持を訴えた石破茂・首相は、帰京すると自民党本部に菅義偉・副総裁、森山裕・幹事長、小泉進次郎・選対委員長ら党幹部を集めて緊急会議を開いた。

 自民党中枢筋が明かす。

「情勢分析を踏まえ、過半数割れした場合を考えて日本維新の会や国民民主党に連立を打診することが話し合われました」

 連立の枠組みを自民・公明から維新や国民民主などに広げることで、なんとか政権を維持しようという動きだ。

 一方、高市早苗・前経済安保相を支持する反石破勢力は、選挙戦で「高市総理」の誕生を声高に訴えていた。

 高市氏は、裏金問題で自民党非公認や比例との重複立候補を認めないというペナルティを受けた候補と、総裁選での自分の推薦人の選挙区を中心に、積極的に応援に回った。

 そうして応援して回ったうちの1人である三谷英弘氏(神奈川8区)は高市氏とツーショットの街頭演説で「高市早苗総裁を誕生させていく」、高鳥修一氏(新潟5区)も「私を国会に戻していただけたら高市政権をつくる」と訴えたのだ。

 視線は選挙後の“敵は本能寺”に向けられていた。

高市支持派が逆襲に出るタイミング

 その高市支持派は、自民党が大きく議席を減らしたことでいよいよ逆襲に出る。

「今回の選挙は自民党内に深い怨念を生んだ。それが石破首相には命取りになるでしょう」

 そう指摘するのは、政治評論家の有馬晴海氏だ。

「石破首相は非公認などの処分で旧安倍派を中心とする“裏金候補”たちに“お前たちが落選しても自業自得だ”と粛清を図った。当然、生き残った者も落選した者も深く恨みます。それでも、自民党が選挙に勝っていれば強引に批判を封じ込めることができたかもしれないが、大きく議席を減らした以上、間違いなく首相の責任論が噴出する。石破嫌いの麻生太郎・元首相が率いる麻生派や旧安倍派の反主流派はここぞとばかりに『高市のほうが総理に相応しい』と石破降ろしに動き出すでしょう。

 高市氏はそれを見越して準備してきた。9月の総裁選の決選投票で逆転負けした後、麻生氏から『(次の総理となる)用意しとけ。議員は仲間作りが大事』とアドバイスされ、選挙の応援に全国を駆け回ってチャンスを待っていたわけです」

 しかも、反主流派にはいつでも石破首相を退陣に追い込める切り札がある。

 政治ジャーナリストの宮崎信行氏が語る。

「衆院が与野党伯仲状態になったことで、高市氏や麻生氏ら反主流派が石破政権の命運を握った。たとえ総理の座にしがみつこうとしても、野党が内閣不信任案を出した際に、石破氏に恨みを持つ旧安倍派など反主流派が賛成、あるいは欠席すれば不信任案が成立する。そうなれば内閣総辞職か、もう一度、解散総選挙を打つかを迫られる。事実上、解散は無理でしょう。そういう状況に置かれて党内から退陣要求を突きつけられれば、抵抗するのは難しい」

 では高市支持派はいつ、倒閣を仕掛けるのだろうか。

「最短なら特別国会の首班指名選挙もあるが、11月中にも召集される臨時国会がヤマでしょう。野党が内閣不信任案を提出するのは確実です。その時に、自民党の反主流派が不信任案賛成をちらつかせて退陣を要求すれば、石破首相に逃げ道はない」(同前)

 党内に強力な反主流派を抱えた石破首相が総選挙で議席を大きく減らした。その段階で“死に体”になるのは、時間の問題なのだ。

 そして、自民党内の混乱がより深まるのは、石破首相退陣後だ──。

第2回に続く

※週刊ポスト2024年11月8・15日号

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