【魔人ブウから6年】国会議員票が集まらない石破茂氏の不義理の数々「麻生氏に退陣迫り、支援者にも挨拶せず…」 “最後の総裁選”で起死回生のコスプレは義理と人情の「寅さん」

6年前の“魔人ブウ”のコスプレ姿(朝日新聞社/時事通信フォト)

 過去最多の9人が立候補した自民党総裁選が佳境を迎えている。9月27日投開票の総裁選は1人1票の国会議員票と党員・党友による地方票(党員票)の合計数で争うが、いずれの候補も1回目の投票では過半数の獲得に至らず、決選投票にもつれ込むことが確実視されている。

【写真】今年は“寅さん”コスプレを披露した石破氏

 5度目の挑戦にして「最後の戦い」と位置付ける石破茂元幹事長は党員票を手堅く固めている。1回目の投票は党員票が全体の50%を占めており、26日朝の石破陣営の選挙対策会議では、幹部が「必ず1位だと確信している」と息巻いた。

 ただ、石破氏といえば、党員の間で人気はあっても国会議員の間では評判が悪く、国会議員票の重みが増す決選投票(国会議員票は1人1票のままだが、党員票は都道府県1票ずつの47票)で勝ち切れるかは不透明だ。かねてより求心力の低さが課題として指摘されてきた石破氏だが、石破氏はなぜこうも国会議員の間で不人気なのか。

自ら分析していた国会議員から不評の背景

 石破氏は先月19日に出演したBS日テレ『深層NEWS』の番組で、自身が自民党所属の国会議員から不評を買っている理由について、こう語っていた。

「自民党にいながら、自民党を批判しているからですよ。間違っていることは間違ってないか、これは考え直した方がいいんじゃないかってことを言うと、『後ろから弾を撃つ』とか、『雉も鳴かずば撃たれまい。雉が鳴くと撃たれるぞ』とか、そういうことがあって。そういうところが、『自民党にいながら党を批判するんじゃねえよ』というお叱りをいただくゆえんだと思っている」

 石破氏の自己分析の通り、「いつも後ろから鉄砲を撃ってばかり」と石破氏を酷評するのはある自民党の重鎮だ。

「(石破氏は)派閥に育ててもらったにもかかわらず、幹事長時代に派閥解消を訴え、幹事長を退いてすぐに自身の派閥を立ち上げた。その派閥も今や解散となったが、やっていることが支離滅裂だ」

 石破氏が「後ろから弾」を撃ったエピソードとして永田町で知られているのが、2009年の麻生太郎政権末期の出来事だ。石破氏は農水相でありながら与謝野馨元財務相(故人)と首相官邸に乗り込み、麻生氏に退陣を迫った。

「石破氏と与謝野氏は麻生氏に退陣を迫ったが、麻生氏から『じゃあ、お前らやるのか?』と切り返され、答えを用意していなかった。結局、すごすごと官邸を後にした」(公明党ベテラン)

 麻生氏が石破氏を毛嫌いしているのは、自身が窮地の際に寝首をかきにきた石破氏のこの言動が原因とされる。

 石破氏に求心力が生じないエピソードは事欠かない。石破氏は2018年9月の自民党総裁選にも立候補し、当時の安倍晋三首相との一騎打ちに挑んだ。多くの派閥が安倍氏の支援に回る中、当時の参院竹下派(平成研究会)と、竹下亘会長(故人)ら一部の同派衆院議員が石破氏を支援した。

 この総裁選後、竹下登元首相の弟である竹下亘氏は、周囲に怒りを隠さなかった。

「負け戦ではあったが、こっちは総裁選後に干されるとわかっていながら本気で戦った。総裁選後に石破氏とは一度も会話をしていない。『ありがとうございました』の一言ぐらいあったっていいじゃないか。二度とやるか」

「党員人気」が生まれる理由

 一方で、党員票を集めているのは石破氏のオタク気質による奇妙なパフォーマンスに拠るところもあるだろう。2018年の総裁選があった年には、人気漫画『ドラゴンボール』に登場するキャラクター「魔人ブウ」のコスプレ姿を披露し、耳目をひいた。

「体格は変にマッチするし、“トラウマレベル”の完成度で、党内だけでなく大きな話題となりました」(大手紙政治部記者)。しかし、当時の安倍晋三首相の3選を阻むことは叶わなかった。

「魔人ブウ」から6年を経て、今年の総裁選の直前には東京都葛飾区の柴又帝釈天の商店街を訪れ、義理と人情を大切にするキャラクターとして知られる映画『男はつらいよ』の寅さんに扮し、街を練り歩いた。これまでの“不義理”の数々を悔い改めたというアピールなのだろうか。

 そして、石破氏はこれが「最後の戦い」と意気込むだけに、石破氏を蛇蝎のごとく嫌っている麻生氏にも「頭を下げる覚悟」と伝えられているが、石破氏の姿勢に変化はあったのか。

「石破氏は今年7月に菅義偉前首相と、菅氏に近い武田良太元総務相と会食している。その際に『(支援を)お願いします』と頭を下げればよかったのだが、延々と政策の話をしたようだ。結局、菅氏と武田氏は小泉進次郎元環境相についた。石破氏は何も変わっていないのではないか」(前出・政治部記者)

 最後の戦いの結果はいかに。

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