「原点回帰」、党勢曲がり角=公明・斉藤新代表、重い課題

衆院選で敗北した公明党の新たな「顔」に斉藤鉄夫国土交通相(72)が就いた。来年には参院選や、党が重視する東京都議選が控えるが、支持基盤の先細りや党内の人材不足は深刻さを増す。自民党との連立与党は衆院で過半数を割り込み、党を取り巻く状況は曲がり角を迎えている。立て直しへ「原点回帰」を掲げた新代表の肩には重い課題がのしかかる。
「衆院選結果を真摯(しんし)に受け止め、原点に立ち返り、再出発したい」。斉藤代表は9日の臨時党大会での就任あいさつでこう述べ、立党精神に立ち返る考えを繰り返し強調した。
わずか一カ月余り前の9月28日、党代表は在任15年に及んだ山口那津男氏(72)から石井啓一氏(66)に交代したばかりだった。
それが衆院選で石井氏を含む8議席を失い、国民民主党(28議席)の後塵(こうじん)を拝する24議席に後退。党内外でホープと目された中堅も次々落選した。山口氏と同年齢の斉藤氏自ら「じくじたる思い」と話す今回の緊急登板は、党の人材不足を示す事態に他ならない。
党勢退潮のシグナルはあちこちで点滅している。かねて支持母体・創価学会の高齢化などによる集票力の低下が指摘されていたが、衆院選では比例代表の得票数が596万票となり、現行制度になった1996年以降で最少。ピーク時からおよそ300万票減らした。「常勝」と誇った大阪の4選挙区では日本維新の会に全敗した。
公明は、自民が派閥裏金事件を受けて非公認とした候補らを推薦し、野党から「共犯」批判を受け、苦戦につながった。
複数の公明関係者は、推薦決定には創価学会で選挙対策を仕切る幹部の判断があったと証言。立党時からの「腐敗政治との対決」の看板は傷ついたが、安倍、菅、岸田の各政権を通じ政権中枢とのパイプで存在感を示す学会幹部に「今の党幹部はものが言えない」(党関係者)との指摘もある。
苦境の石破政権に対し、国民民主は「手取りを増やす」政策を次々要求し、存在感を増している。「大衆福祉」を掲げてきた公明はお株を奪われ埋没気味だ。
斉藤氏は臨時党大会で、党が今月17日に結党60年を迎えることを引き合いに、「還暦には新しく出発するとの意味がある」と強調。記者会見で「『これはなかなか実現しにくいな』と初めから考える傾向が出ていた」と党の「与党慣れ」を認め、「公明案を実現するとの強い決意で臨まなければならない」と訴えた。



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