新首相・石破茂が考える政治が信頼を失った理由。「裏金問題で揺れた永田町。思い出されるのは、駆け出し議員だった時に起きたあの事件で…」
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【写真】「国民は、本当に自民党が反省して改革をしていくのかどうか、じっと見ている」と話す石破首相
日本の政治はどう刷新されるべきか
今の日本をどう見るべきでしょうか。
日本の政治はどう刷新されるべきなのでしょうか。
2023年秋から24年にかけて、永田町はパーティ券裏金問題で揺れました。
派閥のパーティ券を多く売った議員に対し、収入の一部を払い戻していながら、その収支を政治資金収支報告書に記載しなかった、という事実が明るみに出て、その払戻金が裏金として利用されていたのではないかという疑惑が生じました。
いま政治改革への熱気はあるか
収支の不記載は、形式犯と言えど明らかな法令違反です。しかも、政治におけるお金の流れの透明化という、政治が国民から信頼を受けるために大切なプロセスを、大きく損なうことになってしまいました。
検察の捜査結果も踏まえ、自民党として、なぜこんなことが組織的に長く続いていたのかをきちんと説明し、再発防止策も含め、国民が納得できるような対応策を前倒しで明らかにしていくことが大事だと思っています。
再発防止策としては、パーティ券購入者の公開基準を「5万円超」に引き下げることや政策活動費の使い道を10年後に全面公開することなどが盛り込まれた政治資金規正法改正が24年6月の通常国会で成立しました。
一歩前進だとは思いますが、なんとなくこれで一段落みたいな雰囲気にならないように自民党全体で心がけていかなければなりません。特に、事務所数やスタッフの数の制限など、お金があることで有利だということにならないための仕組みを含め、幅広い議論を継続すべきでしょう。
国民は、本当に自民党が反省し、改革をしていくのかどうか、じっと見ているはずです。手を緩めてはなりません。
リクルート事件当時の熱気
リクルート事件のことを思い起こします。今から三十数年前、1980年代の後半でした。
リ社が値上がり確実の未公開株を政治家、官僚、経済人に大量にばら撒き、それが贈収賄や政治資金規正法違反に問われた事件でした。
私はその時まだ当選1回の駆け出しの衆院議員でした。同じ当選1回の仲間たちと連日連夜、議論に議論を重ね、お金のかからない、政策本位の政治をどう実現するか、そのために我々政治家が身を削ることを含め、どういう改革をしたらいいのか、一生懸命考えたものでした。
熱に浮かされたような議論だった、と後に批判も浴びますが、逆に言えば、あの熱気がなければ、1989年5月の政治改革大綱の策定から5年越しの選挙制度の改革(中選挙区制→小選挙区比例代表並立制)まではとても至らなかった、と思います。
それは永田町だけではありませんでした。経済界、メディア界、学界の方々もとても熱心でした。
ちょうど、国際社会にあっては冷戦が終結し、国内にあってはバブルの崩壊という、大きな構造変化と並行していたこともあり、世論の関心はとても高く、我々も選挙区や識者の声に押されるようにして改革論議を進めたものでした。
2023年に起きた事件の共通項
それに比べると、今はどうでしょうか。永田町の熱もさることながら、世論の熱も当時ほどは感じられません。
あれから三十余年、政治改革に寄せる社会の期待感は、明らかに落ちている印象です。政治の世界はどうせこんなもんさ、という一種の諦観が世の中に横溢しているようにも見えます。
情けなく哀しい話でもありますが、それは日本の国力が相対的に落ちてきたことと決して無縁ではない。むしろ、どこかで因果が重なっている気もするのです。
2023年を振り返ると、中古車販売大手「ビッグモーター」の損害保険会社に対する不正請求・過剰ノルマ事件があり、日本を代表する芸能プロダクション「ジャニーズ事務所」における長年の性的虐待事件が、明るみに出ました。そして、国内外含めて64車種で174件の不正が確認されたという、「ダイハツ工業」の品質不正問題もありました。
これらメディアを賑わせた事件に私はある種の共通項を感じ取りました。それは何か。
ひと言で言うと、組織内部からの不正を告発する声が押さえ込まれ、健全な形で組織が新陳代謝を起こせる状態になかった、ということです。
※本稿は、『保守政治家 わが政策、わが天命』(講談社)の一部を再編集したものです。
11/18 12:30
婦人公論.jp