寸断が続く大動脈、前例ない回り道 所要時間1.8倍に

龍山町瀬尻の通行止め表示。ここを起点に三遠道経由で天竜区役所に行ってみた=2020年11月11日午後2時57分、浜松市天竜区

 浜松市中心部と同市の北部地域(北遠)の山間部を結ぶ大動脈が豪雨被害で寸断されたままになっている。主な被災場所は4カ所あり、全面復旧のメドは立っていない。2005年の合併以来、地元では「北遠軽視の浜松市政」と不満が強い。前代未聞の事態に怒りが広がっている。

 被災地は浜松市天竜区龍山町。7月の豪雨で国道152号の秋葉トンネル(2002年供用開始)など3カ所が被災。10月には回り道の県道斜面が崩壊した。

 この結果、旧龍山村北部、旧水窪町、旧佐久間町から市中心部への南北の交通が遮断された。被災地以北の住民は約5500人。回り道は愛知県経由の三遠南信自動車道ルートで、距離は60キロ以上もある。

 寸断された区間の北側にある龍山町瀬尻。天竜区役所までのルートをカーナビで設定すると、天竜川沿いを南下して43分と表示される。現在は南下できないので、152号(2車線)を北上した。

 5分後。元プロ野球選手の江川卓さんが幼い頃、天竜川越えの石投げで肩を鍛えたという大輪バス停を通過。狭い国道473号(1・5車線)を佐久間町方面に向かう。

 20分後。15年に土砂崩れで崩落(市職員2人死亡)し、今年3月に開通した原田橋を通過。自動車専用の三遠南信道(2車線、無料)を通って愛知県に入り、国道151号(同)を南下した。同県新城市から再び三遠道(同)に入り、静岡県に戻る。

 52分後。時間短縮のため三遠道と直結する新東名高速へ。浜松浜北インターで下りた。料金490円。

 78分後。天竜区役所に着いた。カーナビが示した通常ルートの1・8倍の時間を要した。新東名ではなく市が推奨する一般道を使えば、さらに15分はかかりそうだ。道の駅やコンビニなど気軽にトイレ休憩できる施設は新東名のサービスエリアまで約1時間見当たらなかった。

■「軽視」浜松市に地元憤り

 「コロナ禍に続く通行禁止でお客さんが来ない。蓄えでしのぐしかない」。龍山町瀬尻の地区活性化施設「ドラゴンママ」代表の玉本君枝さん(76)は嘆く。食堂や特産品販売をしているが、不安が募る。

 三遠道まで遠い水窪町では特に打撃が大きい。スーパー経営の牧内基さん(41)は2トントラックで週4回、片道1時間15分かけて浜松市南区の市場に行き、野菜や鮮魚を仕入れていた。今は週3回に減らし、片道2時間。「燃料代と高速代がかさむ」と言う。山間部に人工透析の施設はない。町内約10人の患者は市街地にある病院の送迎車を使うが、時間がかかるようになった。

 現場の国道や県道は市が管理している。会社経営の小林博幸さん(69)は「復旧に向けた現場の工夫や熱意を感じない。一部でも開通させる方法はあるはずだ」と指摘する。農業の男性(74)は「合併前なら役場が県や国にがんがん陳情した。国道1号なら突貫工事で直すはずだ」と憤る。旧役場のOBは「昔なら危険箇所にセンサーを付け、時間制限で通行させただろう」と話す。

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