鉄道の赤字路線「維持を」88%、全国自治体首長アンケート…地元の多額負担に困惑も

 4月の統一地方選を前に読売新聞が行った「全国自治体首長アンケート」。全国の約9割にあたる1606自治体から回答が寄せられた。鉄道の赤字路線を維持するべきか、廃線とするべきか。JRが不採算路線の収支を相次いで公表したことを受け、存廃に対する考えを尋ねたところ、「維持するべきだ」と答えた首長が「どちらかといえば」を含めて88%に上った。

 その理由(複数回答)で最多だったのは「通学・通勤で必要」の83%。「廃線にすると地域の衰退が加速する」が76%で続いた。「鉄路はつながっていることに意義がある」(長野県小谷村)との指摘もあった。

 維持するための方策を複数回答で聞くと、「国が財政支援を行う」が85%と大多数で、「鉄道事業者に企業努力を求める」(49%)が続いた。関係自治体による財政支援は30%、自治体が線路や駅を保有・管理し、鉄道事業者が運行に特化する「上下分離方式」は16%にとどまった。

■「廃線」は8%、公費負担増や人口減を懸念

 「廃線」「どちらかといえば廃線」は計8%。その理由では「赤字が続けば公費負担が増す」(74%)と「十分な需要が見込めない」(58%)が上位に並んだ。「人口減少にあわせてインフラ(社会基盤)も縮小していくべきだ」(兵庫県洲本市)との意見もあった。廃線とした場合の対策は、「予約に応じて運行するデマンド交通を導入する」(69%)、「代替の路線バスに転換する」(63%)の順で多かった。

 赤字路線を巡っては、青森県で今年1月、大雨被害で不通となっているJR津軽線の一部区間について、存廃に向けた協議が始まった。JRは「上下分離方式」を採用した場合、年間4億円ほどの地元負担が生じるとの試算を提示。自治体側は存続を求めるものの、「小さな町に億単位の負担は考えられない」(外ヶ浜町)と困惑する。

 利用が低迷する鉄道をどうするかは全国的な課題で、JRは今月、久留里線(千葉県)の一部区間について自治体側に協議を申し入れた。竹内健蔵・東京女子大教授(交通経済学)は「廃線に直結するとして協議入りを警戒する自治体も少なくないが、地域交通の将来を考えていくためにも、まずはテーブルに着くことが大切だ」と話している。

 アンケートは、47都道府県と1741市区町村の首長を対象に2月、質問票を郵送し、インターネットによる回答方式で実施。1606自治体(89・8%)が回答した。

ジャンルで探す