【政界徒然草】「二階」対「岸田」 新型コロナ緊急経済対策めぐり自民内で激しい綱引き   

自民党総務会に臨む二階俊博幹事長と岸田文雄政調会長(右)=2月14日、国会内(春名中撮影)

 新型コロナウイルスの感染拡大に対処する政府の緊急経済対策をめぐり、自民党の二階俊博幹事長と岸田文雄政調会長が激しい駆け引きを繰り広げている。岸田氏は安倍晋三首相から指示を受けて党内議論を進めているが、二階氏は今月17日、突然、政府と与野党による連絡協議会の設置をぶち上げた。過去最大級の対策を策定し、「ポスト安倍」としての存在感を示そうとしている岸田氏にとっては寝耳に水で、面目をつぶされた格好だ。
 「首相の意向をうかがい、大筋の方向性では一致した。党内でもしっかりと議論をさせたい」
 岸田氏は17日午前、首相から経済対策の取りまとめを指示された後、首相官邸で記者団にこう語り、表情を引き締めた。
 岸田氏は首相からの指示に先立ち、令和2年度補正予算案の編成を見据えた対策の取りまとめを党のそれぞれの部会に指示しており、対応をさらに加速させようとしていた。
 ところが同日午後、国会内の公明党役員室から出てきた岸田氏の表情はいつになく硬くなっていた。対策策定への意気込みを聞こうと待ち構えた記者団の問いかけにもほとんど答えず、足早に国会内の別の部屋に入っていった。
 岸田氏の不機嫌の理由は、公明党の斉藤鉄夫幹事長から「こんな話がある」と協議会の設置を知らされたからだ。
 岸田氏は党の政策責任者だが、事前に協議会の話を知らされていなかった。岸田氏周辺は、二階氏の動きが表面化する前に岸田氏が首相から指示を受けていたことを取り上げ、「本当によかった。その前にやられていたらかなりまずかった」と胸をなでおろした。
 協議会の設置は、表向き、対策に取り組む姿勢を見せたい野党の要請に与党が応じる形をとっている。ただ、実際に水面下で主導していたのは二階氏だ。意向を踏まえた自民党の森山裕国対委員長が、立憲民主党の安住淳国対委員長に根回しして実現した。
 岸田氏は、同日夕の記者会見で、協議会と党の政調会で議論の住み分けをどうするのか問われ、こう強調した。
 「(協議会が)どういうことをされるのか承知はしていない。党としては政調会長のもとでしっかり経済対策をまとめてもらいたいとの総理の指示だったので、しっかり議論をまとめ政府に提出し、政府が対策に反映させる。そのように努力する。それに尽きる」
 翌18日、二階氏の側近の林幹雄幹事長代理と森山氏が、党本部の政調会長室に岸田氏を訪ねた。協議会設置の“事後連絡”に、岸田氏は「協議会は政策を議論する場ではない」とクギを刺した。この時、政調会長室は「ピリピリした雰囲気」(政調幹部)に包まれ、「手柄を争っている場合ではない」(二階氏周辺)という幹事長室との間に緊張が走ったという。
 協議会は、新型コロナ対策に関わりたい野党と、野党にも責任を負わせることで政府・与党への批判を分散しつつ、補正予算案の編成などを円滑に進めたい与党の思惑が一致したものだ。ただ、協議会が政策決定にどの程度、関与できるのかは見通せない。
 19日に開かれた協議会の初会合には、自民、公明両党から新型コロナ対策本部の幹部が出席し、立憲民主党など野党5党は各党の政策責任者が出席した。与党の政策責任者である岸田氏と石田祝稔政調会長は出席しなかった。
 与党内には「与党が練った対策を野党に『良いところ取り』されるだけだ」「野党を入れると相対的に与党の存在感が低くなってしまう」と警戒する声がある。一方、野党でも対策の規模や消費税の扱いなど主張に隔たりがある。
 政府の経済対策の事業規模は、民間資金の活用分なども加えて30兆円を上回る見通しだ。「インパクト」を求める岸田氏は国民の手に届く具体策として現金給付を「有力な案」として掲げている。
 しかし、二階氏は「何かあるたびに現金を給付しなければいけないということではダメだ」と否定的だ。自民党は週明けにも経済対策を取りまとめるが、岸田氏と二階氏のせめぎあいは激しくなる一方だ。
(政治部 長嶋雅子)

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