「タイトルがヘイトだ」 アイヌ新法に疑義呈する講演会めぐり小競り合い

アイヌ新法に疑義を呈する講演会の会場前で、一部の参加者と「ヘイトスピーチだ」と主張する人々との間に割って入る北海道警=札幌市白石区(寺田理恵撮影)

 アイヌ新法に疑義を呈する講演会をめぐり、参加者の一部と「講演会のタイトルがヘイトスピーチだ」と主張する反ヘイト団体のメンバーらとの間で小競り合いが発生、警官が出動する騒ぎに発展した。現場は、会場となった貸しホールのある札幌市白石区民センター前の歩道。開催前に反ヘイト団体が市に対して利用制限を求め、当日は約20人が「アイヌ差別は違法」と書いた横断幕などを掲げていた。
 「アイヌになれる?」
 一方が「やれるものならやってみろ」と叫ぶと、もう一方が「触ってない」と怒鳴り返す。講演会開始の約1時間前。公道上に怒号が響く中、講演会の趣旨に賛同して街頭演説をしていた女性が声を張り上げた。
 「意見の違う者に言論の封殺をしてくるのはなぜなのか。私たちは警察の許可を得て街頭演説をしている。もめごとを誘発するのはご遠慮いただきたい」
 講演会のタイトルは「あなたもなれる? みんなで“アイヌ”になろう?」。憲法改正の実現などを目指す日本会議北海道本部が主催して9月21日夜に開かれ、「アイヌ先住民族、その不都合な真実20」などの著書がある医師の的場光昭氏と、元道議の小野寺秀(まさる)氏が講師を務めた。
 アイヌ新法めぐる議論
 アイヌ問題をめぐっては、アイヌ文化を生かした地域振興のための交付金創設を柱とするアイヌ施策推進法(新法)が5月に施行され、初めて「先住民族であるアイヌの人々」と明記された。しかし、新法が土地や資源などに関する先住民族としての権利に触れていないことを課題とする意見もある。新法には「アイヌの人々」の定義に関する規定がなく、「アイヌの定義があいまいだ」と疑義を呈する人々もいる。
 主催団体の日本会議北海道本部に対し、事前に抗議や中止要請を行った団体はなかったが、道本部によると、個人から開催に反対するメールが1件あったほか、講師2人を名指しして危害を加えることをにおわせる手書き文書1件がファクスで届いたという。
 市の承認に賛否23件
 一方、ヘイトスピーチ反対活動を行う団体「クラックノース」は9月12日、札幌市に対し、利用承認を取り消すか、条件付きにするよう要望書を提出した。
 新法4条のアイヌ差別禁止規定を根拠に挙げ、「題目は、アイヌの独自の民族としての一体性を否定し、誰でも“アイヌ”というものになれるのだと民族的アイデンティティーを剥奪したヘイトスピーチだ」などと主張している。
 会場は先着順や抽選で利用者が決まる有料の貸室の一つで、講演会や発表会、音楽活動などに利用できる。道本部の講演会は予定通り行われ、市は「貸室であり、承認時に講演会の内容までは確認しない。今回は不承認の要件に該当するという判断には至らなかった」としている。
 市白石区地域振興課によると、開催前にメールなどで市に寄せられた意見は計23件。このうち「使用させるべきではない」という趣旨は17件で、「利用承認を取り消すべきではない」も6件あった。
 会場内も騒然
 講演会には参加費1000円(学生無料)を払えば誰でも入れるため、当日は反ヘイト側や多数の報道機関も入場した。
 講演会では、的場医師が「(アイヌを先住民族と初めて明記した)アイヌ新法ができて、(差別禁止規定の)第4条によって、アイヌが先住民族であることを否定すると『ヘイトだ』といわれるようになった」。小野寺元道議は「騒いでいる方たちは厳密な定義があるというが、実際は結婚するとアイヌになれる」などと持論を展開した。
 質疑応答の場面では、意見を表明する反ヘイト側に対し、他の参加者から「質問をしろ」と抗議する声が上がり、会場は約5分間にわたって騒然となった。(寺田理恵)

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