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“フルヤホ”古谷一之・官房副長官補が官邸を去る意味とは? 安倍vs.菅で混沌の後任選び

民主党政権時は主税局長として復興増税などを担当した「フルヤホ」 ©共同通信社

 首相官邸の番記者が慌てふためいたのは3月17日。発表された国会同意人事案に、通称「フルヤホ」を公正取引委員会委員長に充てる案があったからだ。

 古谷一之官房副長官補(64)。財務省出身で第二次安倍政権発足後間もない2013年4月、官僚トップの杉田和博官房副長官を支える副長官補に。この7年間、日々の政策立案に加え、天皇退位などの重要案件に携わり、文字通り、首相官邸を「補佐」。今も新型コロナの対応にかかわる。

 ベテラン財研記者によると、東大法学部在学中、国家公務員上級試験に加え、司法試験にも合格。1978年の大蔵省入省同期で「主計のエース」真砂靖氏が12年夏に財務次官に昇格すると、「主税のエース」古谷氏は国税庁長官へ。その後、次官級ポストの副長官補に昇格。「省内でも図抜けた頭脳だが、性格も穏やかで上からも下からも人望がある」(ベテラン記者)。

 毎朝の出勤時、番記者を車に乗せて取材に応じる「箱乗り」を実施。官邸近くに住むため、車内取材はほんの数分だが、他社に席を奪われまいと午前6時から待ち構える記者も多い。官邸担当記者は「それだけ重要な政策に携わっている証拠。一言が一面トップの特ダネにつながる」と語る。

古谷氏が官邸を去る人事の意味とは?

 実は古谷氏、何度も辞意を漏らしてきた。激務に加え、給与にも不満があった。事務次官級の年収は約2500万円。同期や後輩は天下り先でより多額の報酬を得ていることから、周囲に「給料がなぁ」と愚痴っていたという。だが公取委員長の年収も3000万円前後。果たして満足できるのか。

 一方、古谷氏が官邸を去る今回の人事について、政治部デスクは「安倍晋三首相と菅義偉官房長官の対立で首相側が勝利した結果」とみる。菅氏は決して「ノー」と言わず粛々と仕事をする古谷氏を和泉洋人首相補佐官と並んで高く評価。78歳の杉田氏の後任に据えようと首相に進言したが、首相は信頼の厚い杉田氏の交代を許さなかった。

 隙間風が吹く首相と菅氏の間で、杉田氏は古谷氏を強く慰留。「杉田氏は『古谷氏を代えると官邸内の権力バランスがさらに崩れる』と心配したようだ」(同前)

 秋以降、古谷氏の後任には同じく国税庁長官を務めた藤井健志氏の登用が本命視される。だが、対抗馬に「菊池桃子の夫」で有名になった経済産業省の新原浩朗経済産業政策局長の名を上げる者も。首相の懐刀・今井尚哉首相秘書官に近い新原氏になれば、杉田氏の危惧通り、官邸の権力バランスは益々崩れる。神は細部に宿る。副長官補は地味なポストだが、激しさを増す権力闘争の行方を占う貴重な材料となりそうだ。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2020年4月2日号)

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