「偉くなるごとに、能力だけではなく人間性を強く問われる」という真理

 吉本興業の「号泣会見」を披露した社長の岡本昭彦さんに対しては、いまだに岡本さん何してんだよという話が渦巻いております。問題会見から1か月近く経ったいまも「ただのダウンタウンの付き人(マネージャー)が偉くなっただけだろ」とか「マネジメントの何たるかも学ばずに、社員やタレントを恫喝して統制してきただけではいざというときに脆い」などの論評もありつつ、問題究明と処方箋に資するための第三者委員会に舞台が移っていきました。

 菅義偉官房長官がなぜか三浦瑠麗さんまで吉本興業の委員会に送り込んだという風評から、メディアでは早くも「笑ってはいけない第三者委員会でガースー黒光り第三者委員会」とまで揶揄される始末です。

 さらに政治の世界に目を転じれば、こちらはこちらでまだ35歳の若き議員である自由民主党の石崎徹さんが秘書をボコボコに殴ったとかで新潟県警が事情聴取し、騒動は最終局面に入りつつあります。赤ちゃんみたいなすべすべ肌の石崎さんがハードなプレイを日常的にする怪紳士だったとは思いもよりませんでした。いや、ほんと何してんだよ。

地元の新潟自民党県連からは厳しい分を求められている石崎徹衆議院議員 ©AFLO

 同様に、泥酔してロシアと戦争しますと言い放って維新を追われ、NHKから国民を守る党という本来あるべきところに合流していった議員の丸山穂高さんも、早くアルコール依存からうまく脱してほしいと思います。丸山さんも顔があかちゃんみたいにすべすべしていて、肌ツヤのいい人が問題を起こす当たり年なんですかね。ほんと、何してんだよ。

 また、先日飲食店女性に暴行を加えて逮捕された埼玉県幸手市長の渡辺邦夫さんも、広島の平和式典に出席する市長だったはずが、いまや容疑者と呼ばれて報じられるとか、お前らほんと何してんだよと思うような事件が多発しています。

政治家の何%かは不祥事予備軍

 令和の時代の政治家や経営者がアカンようになった、というよりは、政治家というストレスフルな立場が本人の精神をゆっくりと蝕み、その人の本性がどこかで爆発してしまったというのが正直なところかもしれません。主義主張の好き嫌いはあれ、丸山穂高さんも渡辺邦夫さんも決して駄目な人ではなかったはずです。

 政治家も、総理大臣から地方議員に至るまで何万人かいれば、確率の問題として常に何%かは不祥事予備軍であってもおかしくはありません。こんな人をなぜ政治家にしたのか、あるいはなぜ経営者でいられるのか、というのはある種の後講釈であって、ストレス耐性のない人がストレスいっぱいの職場に来たら精神が持たずに派手にやらかして、何してんだよという状況になるわけですね。

人としての器量が物を言う

 どうしようもない逆境に直面して聖人君子でいられる人は稀で、どうしてもイキったり号泣したりしてしまうのが人間の性(さが)だと思うんですよ。

 俗に「帝王学」と呼ばれる組織運営や人心掌握の術というのもいざという時には役に立たず、これまでも、印鑑のない借用書を記者会見で示しカバンに5000万円が入らずに都知事という名誉ある職を追われた猪瀬直樹さんを筆頭に「能力はきっとあるんだろうけど、しょうもない問題をやらかしてその立場にいられなくなった偉い人たちによる豪快な失脚劇」が歴史を彩っています。

 能力を発揮して偉い人になることはできても、人間性を備えて偉い人であり続けるのは別の条件なんだと痛感するところがありますし、こういうスキャンダルにおいてなお、「いや、そういう問題はあったけれども彼にはこういう美徳や功績があるから」と声がかかることは本当の意味での人としての器量だと思うのです。

 私の身の回りでも、兵庫県明石市長の泉房穂さんが、部下へのパワハラ・暴言で騒動になり辞職に追い込まれて出直し選挙に出馬するという話がありました。泉さんの人柄は聞き及んでいたのと、泉さんの明石市長としての実績を見ると捨て置けない部分があったのでネットで記事にしたところ死ぬほどバズったんですが、泉さん支持者だけでなく明石市政を知る当事者が泉さん擁護に回って出直し選挙で次点候補に3倍という圧倒的な得票差で再選した事例もありました。

明石市長・泉房穂氏の暴言をよく読むと、市民の命を守るための正論である件(山本一郎) - Y!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/byline/yamamotoichiro/20190129-00112928/

「暴言」前明石市長・泉房穂さん、出直し出馬表明の真意を問う(追記・修正あり)(山本一郎) - Y!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/byline/yamamotoichiro/20190307-00117356/

擁護されないパターン

 一方、セブン&アイ・ホールディングスがやらかした「7pay」では、初動対応の失敗もあって経営者が謝罪に追い込まれてもフォローの風は一向に吹かず、サービスそのものの早期打ち切りという屈辱的な結果に終わったのも記憶に新しいところです。いや、何してんすかね。コンビニ業界では最大手でもスマホ決済では後発だったという焦りから、とんでもないことをやらかして信頼を失墜させたセブンイレブンを擁護する声はメディアでもあまり聞かれません。

 アスクルとヤフーの戦いでは、業績不振でどうしようもない経営者の岩田彰一郎さんの更迭を巡って、大株主であったヤフーと文具大手プラスから三行半を突き付けられるわけですが、他の少数株主はともかく社内から岩田擁護の声はほとんど出ず、ヤフーが嫌いなメディアからのヤフー批判が騒ぎになった程度で結局は社外取締役もろとも解任されるという結末になりました。

勝ち取った成功を維持できる人とは

 このあたりを並べてみてみると、結局はその偉い人が、得た立場で何をしてきたのか、どれだけの人が「この人の下で働くなら我慢できる」「賛同したい」と思えてきたかというところで吹く風の向きが決まってくるのでしょう。実際、「何してんだよ」と言いたくなる行動を偉い人がとっているケースはたくさんあります。偉い人だって人間ですから、酔えば暴言交じりの本音は出るし、業績が悪ければ辛い気持ちにもなって部下に当たりたくなる。

 同じ酔っ払いでも(丸山穂高さんと比べるレベルではないかもしれませんが)亡くなられた中川昭一さんなどはご存命のころから「普段はいい奴だけど、酔っ払えば酔っ払うごとにもっといい奴になる」と話す方もおられました。

 酒の飲み方ひとつで暴言吐いて騒ぎになったり女性を殴って逮捕されたりといった結果を出して、みんなから何してんだよと言われる人もいれば、酒のお陰で翼を広げて大物になっていく人もいるんだと思うと、やはり頭一つ出て社会的成功を勝ち取り、それを維持できる人は性格的な陶冶と言いますか、愛される、支持される愛嬌というものが必要なんだろうなあ、併せてその人の信念や考えを忠実に組織内や外部に対して伝え、それを貫き通しているという評価が必要なんだろうと感じます。

問題にどう対処するか

 先日も、リクルートでも騒動があり、話題が広がってきていますが、利益を出している会社はそれに対するやっかみが、偉くなった人には偉くなり損ねた人や対立して割を食っている人からの妨害があるのもまた社会の一部だと思うんですよ。

 それもこれも、問題に対しては「批判されないようにおとなしくしている」というスタイルでは切り抜けられず、「常日頃、問題や批判については常にオープンに応えている」という偉い人のスタイルあってこそのようにも見えます。逆に言えば、そういう受ける批判も半笑いで流しつつ組織固めをして実績を積み重ね、何かあったら適切な範囲内で応えたり無視したりするという戦略的聖人君子を貫ける人こそが、お前何してんだよという事例においては折れない強さ、したたかさをもつのではないのかなと考える次第です。

(山本 一郎)

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