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日露首脳会談 舞台裏は? 北朝鮮めぐる説得は奏効 プーチン氏から「妖刀」の真意は…

 ロシア極東ウラジオストクで7日に行われた日露首脳会談は、北朝鮮への融和姿勢を崩さないプーチン大統領に、安倍晋三首相が圧力強化の意味を説く希少な場となった。11日の国連安全保障理事会ではロシアが圧力強化を求める日米に歩み寄りをみせ、北朝鮮の外貨収入源を奪う制裁決議が採択された。日露首脳間の個人的な信頼関係を生かした安倍首相の説得が功を奏した形となったが、プーチン氏は会談でドスを利かせることも忘れていなかった。(大橋拓史)
 「プーチン氏と制裁についてまともに話し合えたのは安倍首相だけだ」
 ウラジオストクで開催された日露首脳会談に同席した日本政府高官は、安保理制裁決議の採択後にこう振り返った。
 会談前まで対北制裁の強化に反対していたプーチン氏に対し、安倍首相は「対話だけを主張することはよくない」と説得を試みた。同席者は「プーチン氏が制裁決議に許可を与えたとき、首相との会話が念頭にあったはずだ」と語る。
 政府高官が語る「安倍効果」は必ずしも手前みそとは片付けられない。プーチン氏は安倍首相との会談に先立つ韓国の文在寅大統領との会談で「北朝鮮を追い詰めてはならない」と語っていた。日本と同じく対北圧力強化を求めるトランプ米大統領は対露関係の悪化でロシアと対話もままならず、プーチン氏の説得は安倍首相に委ねられていた。
 制裁決議の採択という結果だけをみれば、プーチン氏との会談は成功だった。だが、安倍首相にとって対露外交の最重要課題は、北方領土問題の解決だ。露側との緊張関係を極度に高めたくないのも本音であり、友好ムードの演出にも腐心した。
 安倍首相は会談後、柔道愛好家のプーチン氏に、柔道の始祖、嘉納治五郎の書を贈った。これにはプーチン氏も「素晴らしい! すてきなプレゼントだ」と感激した。嘉納の書はロサンゼルス五輪金メダリストの山下泰裕氏からも以前に贈られており、プーチン氏が喜ぶのは織り込み済みだった。まずは安倍首相が「一本」をとったといえる。
 これに対し、プーチン氏が安倍首相に贈った記念品は、日本側が今も「判定」に苦しんでいる。
 プーチン氏の記念品は室町時代の伊勢の刀工の手による名刀「村正」。戦後の連合国軍の占領期間中に米国に流出した文化財だったという。妖刀ともいわれる村正がどういった経緯でロシアに渡ったかは不明だが、露政府からは「日本にお返しする」との説明もあった。
 外務省幹部は「『米国にぶん取られたものを取り返してやったぞ』とでも言いたいのだろうか…」と苦笑いを浮かべる。ソ連がぶん取った北方領土の代わりに村正を贈ったのであれば、到底受け入れられるものではないからだ。
 北方領土問題をめぐり、プーチン氏はこれまで繰り返し日米同盟が障害になっているとの認識を示してきた。先の大戦に敗れた日本から大切なものをかすめ取ったのはロシアだけではないことを示すことで、日米を分断する意図があったのかもしれない。