座間事件、10日滞在し無事な女性も…殺害「線引き」どこで 審理終える

 平成29年に神奈川県座間市で男女9人が殺害された事件の裁判員裁判は、白石隆浩被告(30)が一貫して金銭や乱暴目的で殺害を繰り返したと主張し、全被害者の実質的な審理を終えた。公判では事件の渦中に現場アパートに10日間も滞在しながら、無事に帰った女性がいたことも判明。被告はこの女性との「良好な関係」を理由に犯行に及ばなかったとする一方、自身への好意を感じた被害者にも手をかけたと告白した。殺害の線引きはどこにあったのか、20回の審理を重ねても見えてこない。(村嶋和樹)
 ■「通報するとは思わなかった」
 白石被告はまず29年8月下旬に男女3人を殺害後、ツイッターで数十人の女性とやりとり。「一緒に首つり自殺をしよう」と嘘をついて招いた女性が翌9月14~23日に現場アパートに滞在した。被告は公判で、女性について「身なりから月50万円は稼いでいると感じた。殺そうと思ったことは一度もなかった」とし、滞在中の飲食費など約3万円を女性に負担してもらったと述べた。
 被告はこの間、アパートで4番目の被害者となった大学2年の女子学生=当時(19)=を殺害。一方で女性を殺害しなかった理由について、被告は「私に対し信用、信頼、恋愛、依存のいずれかの感情があり、警察に通報するとは思わなかった」と証言。「(高額な)収入がなくても、分かりやすい好意を示すなら付き合うことを考えていた」とも話した。
 ■好意の有無と殺害、直結せず
 しかし、被告に明確な好意を見せていたにもかかわらず、殺害された被害者は複数人に上っている。
 被告の証言によると、最初に被害に遭った会社員の女性=同(21)=は、「一緒に住むために」とアパートの契約費用として被告に計51万円を渡していた。6番目の高校3年の女子生徒=同(17)=も、2人の買い物代などをすべて負担。タクシー内でカップルのようにふるまう姿が運転手に目撃されており、好意の有無が殺害の判断に直結したわけではなさそうだ。
 被告は犯行動機の一つとして金銭目的を挙げるが、これも殺害と直結させるには説得力に欠ける。全被害者9人のうち最初の被害女性ら2人からは数万円を奪ったとされる一方、残る7人は1人数百~数千円と少額にとどまるためだ。
 被告は3番目に殺害した介護職の男性=同(20)=には「給与の入金状況や所持金を何度も尋ねた」などと証言した。しかし、4人目以降は「身なりや雰囲気から収入の有無を判断した」などと説明。最後の被害女性=同(23)=に至っては、事前に所持金が千円程度しかないと聞き、会う前に殺害を決意したとしている。
 殺害を重ねるにつれ、金銭目的が薄れ乱暴目的が強まったとみられる被告。ただ、3年前の事件で被害者も多いためか「記憶がない」と答える場面も多く、裁判は終盤に至っても「不可解」さを残したままとなっている。
 ■判決は12月15日
 9月30日に初公判が開かれた座間9人殺害事件の裁判員裁判は、次回24日と25日に白石隆浩被告の責任能力に関する審理や、複数の被害者遺族による意見陳述などが行われる。26日の検察側の論告求刑などを経て、来月15日に判決が言い渡される予定だ。
 量刑についての証拠となる「心情に関する意見陳述」を予定しているのは少なくとも3遺族。また、3番目の被害者となった介護職の男性と、8番目のアルバイトの女性=当時(25)=の2遺族は、被害者参加制度に基づく「被害者論告」も実施する方針で、事件の悪質性の主張や求刑について意見を述べるとみられる。

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