コロナKP.3株 お盆に感染爆発危機!熱中症との併発で重症化リスクも増加

連日の猛暑で熱中症に厳重警戒が続く毎日だが、この夏、コロナの感染が急増している。

厚生労働省の統計によれば、7月22~28日の新規感染者数は全国で78,502人。1医療機関あたりの報告数は全国平均で14.58人と12週連続で増加している。7月初週と比べると新規感染者数は1.8倍に増加しており、引き続き感染が拡大しているのだ。

特に感染者数が桁違いなのは九州や沖縄で、1医療機関あたりの報告数は平均23.44人にものぼる。全国平均と比べると、その差は一目瞭然。

恐ろしいことに、コロナに加えて熱中症、さらには今年猛威を振るっている手足口病まで同時に患う人もいるという。いとう王子神谷内科外科クリニックの伊藤博道院長に話を伺った。

「3つの疾患を併発したAさんは、多くの子供と接する職業に就いている女性でした。倦怠感や手足のしびれ、筋肉痛などがあり、暑さ環境での労作と症状から、最初は熱中症を発症したとみられます。

休養を取り、体調が回復したため次の日には出勤。しかし、同じ日に、手足に発疹が出始めました。その2日後には高熱や咽頭痛、頭痛など、体調をさらに悪化させて来院されたのです。

診察したところ、手足口病の感染が判明しました。また、同日、コロナ感染症の抗原検査をしたところ、陽性を確認しました」

3つの疾患が併発した原因は、「熱中症で粘膜が乾燥し、免疫力が弱まっていたときに、たくさんのウイルスを吸い込んだため」と伊藤院長。やはり、同時期に、職場にいる子供たちが多数手足口病にかかっていたという。

「手足口病とコロナの発症は1日半ほどのタイムラグがあります。潜伏期間を考えると、ほぼ同時期の感染と考えられます」(伊藤院長、以下同)

熱中症の予防には、こまめな水分補給に加え、適切にエアコンを使用して室温を下げることが呼びかけられている。

一方、感染症対策には十分な換気が必要だといわれる。人が集まる環境で空気がこもると、コロナをはじめとする感染症にかかるリスクが高まってしまうためだ。 しかし、室温を下げることを考えると、換気はなかなか難しい。

熱中症と感染症の対策が相反してしまう状況に、伊藤院長も警鐘を鳴らす。

「感染症が猛威を振るっている現在の環境では、ひとつの空間の中に、何らかの形で感染症にかかっている人がいることは、十分に考えられます。 それが少量のウイルスであっても、換気をしない限り空間の中を飛び回り、さまざまな人に何回も再利用される形で、多数の人に感染しやすいのです」

そんななか熱中症になると、脱水によるダメージで、ほかのウイルスに対しても体の免疫力が十分に働きにくくなる。冒頭のAさんのように、感染症に感染するリスクが高まるのだ。

反対に、最初にコロナに感染し、その後熱中症になる場合もあるという。

「コロナに感染すると、喉の痛みが強くなるため、食事をとることがつらくなります。食事量が減ることにより、水分量も不足するので脱水症状にもなりやすくなってしまいます。

それ以外にも、悪寒が強まってエアコンの設定温度を高めにしてしまい、気づかないうちに脱水が進むケースも。熱中症は放っておくと意識障害、最悪死に至ることもあるので、大変危険なのです」

■コロナ・熱中症発生で重症化…「免疫性肺炎」に注意

感染がコロナだけなら、ほとんどの場合、1週間程度で自然に回復する。しかし熱中症を併発することで、重症化する可能性は高まるという。

「コロナによる消化器系症状に加えて、熱中症による吐き気で、嘔吐、下痢を起こし脱水が進みやすくなります。

加えて、今の季節は高温多湿なため、水分や電解質のバランスが崩れやすい。これらのことが重なって免疫力が低下し、重症化するリスクが高まります」

症状が悪化すると、頭痛や倦怠感や吐き気に加えて、けいれんや意識障害まで出てくるという。

さらに症状が進行した場合に懸念されるのが、「免疫性肺炎」という恐ろしい肺炎の発症だ。

コロナ罹患後、1週間程度で発症するものは「ウイルス性肺炎」で、レムデシビルなどの抗ウイルス薬で軽快する人が多い。

一方、罹患後2~3週間たった後に症状が現れるのが「免疫性肺炎」。コロナが治ったと思った矢先に発症することも多いという。

「ウイルスが直接肺を傷つける『ウイルス性肺炎』の後に、体内の免疫反応が暴走して起こるのが『免疫性肺炎』です。そのため、時間差で現れます。

症状も比較的重く、薬ですぐに治るものでもありません。入院や治療を繰り返す、あるいは人工呼吸器を必要として重症化し、命を脅かすリスクもあります」

免疫性肺炎にならないためにも、早期に適切な診断が必要だ。

コロナは抗原検査やPCR検査の結果で診断を下すが、熱中症は患者本人から聞き取った症状や経過、ほかの病気を否定することなどで、最終的に医師が判断する。

「コロナの検査結果が陰性で熱中症と結論づけても、2日後に再度検査をしたところ陽性になるということもあり得ます。

また熱中症とコロナは似た所見が多く、合併することもあるため、互いに油断できない関係なのです」

仮に熱中症と診断されても、症状が長引いたり、改善が見られなかったりした場合、再び医師の診察を受けることが推奨される。

■ワクチンが効きづらい新・変異株「KP.3」によりお盆に感染爆発の危機

今夏は歴史に残る猛暑になるといわれている。そんななか、流行しているのが「KP.3」という新たな変異株だ。

これまでに流行してきた変異株と比べると、症状は中程度なものの、発熱を伴わないケースもあるため、コロナだと自覚しづらい側面もある。

また、免疫回避機能が高いため、ワクチンを打った人や、過去に感染したことのある人も、感染する可能性が高いという特徴があるという。

今年は、コロナが5類に移行してから2年目の夏に突入する。昨年以上に、地元と通常の生活の場を行き来する、あるいは旅行に行くといった機会が増えている。

「KP.3」の流行と、猛暑、人の移動が増える時期が重なることで、全国的な感染爆発に加え、熱中症と併発する患者が増えることが懸念されている。

「今年のコロナの感染は、働き盛りの大人が中心です。子供を中心とした学校での感染の広がりではないので、夏休みに入ってもコロナの感染者数は減らないと思います。

むしろ、お盆時期の帰省などで都会と地方の人流がシャッフルされると、より広い世代に広まる形で、患者数は増加してしまうと考えています。

暑さは今後も続きます。感染爆発によって、熱中症とコロナの併発のリスクは今後ますます高まる恐れがあります」

実際に、その兆候は出ているという。

KP.3は、重症化リスクは高くないといわれているにもかかわらず、最近は、頻回な受診や点滴が必要になる患者が増えていると伊藤院長は言う。

「やはり、熱中症を併発することで症状が重くなる人の割合が増えているように思います。特に基礎疾患や持病がある方、高齢者は注意が必要です」

■命を守るために 夏のコロナ対策とは?

「コロナと熱中症を併発しないために、3つの対策を心がけるべき」と伊藤院長。

「1点目は、こまめな水分補給と、ビタミン、タンパク質、食物繊維などの栄養素をバランスよくとること。そして、帰宅後手洗いうがいをしっかりして、湯船に入ることです。

2点目は換気と室温管理をバランスよく行うこと。エアコンを利用して体の温度を下げることは大切ですが、猛暑であっても、換気を心がけましょう。特に、自宅であっても複数の人がいる場所では、1時間のうちに5~10分だけでも窓を開けるなど換気をして、また閉め切りエアコンを稼働させるとよいでしょう。命に直接関わるような熱中症対策を十分に行いつつ、空気を入れ換えることが大切です。

そして3点目は、ピンポイントのマスク着用です。常時の着用は、熱中症のリスクが高まるため注意が必要ですが、極めて混雑した公共交通機関の中や病院の中、発熱のある人や咳をしている人と接するなど感染が危惧される場面数分だけでもマスクを着用すると対策になります」

【後編】感染急増中の新型コロナ 治療費、ワクチン…補助金廃止でいくらかかる?へ続く

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