蓮舫 都知事選出馬で批判再燃する「2位じゃダメなんですか」発言の「切り取られた真意」

立憲民主党の蓮舫参院議員(56)は5月27日、党本部で記者会見し、7月7日の東京都知事選に無所属で出馬する意向を表明した。現職で3期目を目指す小池百合子都知事(71)との一騎打ちが予想される中、改めて注目されているのが”あの発言”だーー。

「2位じゃダメなんですか」。民主党政権下の’09年11月、事業仕分けにおける“次世代スーパーコンピューター事業”を巡る議論の中で蓮舫氏が放ったひと言だ。

一般的には、“世界一のスパコンを作る”計画に対し、「2位じゃダメなんですか」と予算を減らし、日本の科学技術の発展を軽視した“迷言”と受け取られている。今回の出馬をきっかけにネット上でもこの発言で蓮舫氏を揶揄する声が後を立たない。

「当時、マスコミフルオープンだった事業仕分けの会場には、専門分野の記者だけではなくワイドショーや週刊誌なども集まり、ちょっとした“お祭り”状態でした。肝心の中身はまともに報じられず、“政治ショー”としてテレビは繰り返しこの発言を切り取って流しました。

また、当時スパコン“京”の開発を担う理研理事長が『歴史という法廷に立つ覚悟があるのか』と批判するなどの科学者らの反発もあり、発言自体が一人歩きして、いまだに蓮舫氏の黒歴史として扱われています。でも、実際の文脈は全く異なる上に、後の日本のスパコンの発展に結果的に貢献したことはあまり知られていません」(全国紙記者)

事業仕分けは、自民党政権時代の“予算のムダ”を洗い出す会議で、やり玉に挙がったのが“世界最速”を目指すスパコン“京”の開発計画だった。’05~’12年の7年間で約1150億円の予算投入が予定され、仕分けを行った’09年度までに545億円が投入されていた。

議事録によると、“京”と同時期に計画されていた米国のコンピューターがスピードで“京”を上回り、世界一になれない、またはなっても一時的なものですぐに抜かれる可能性が事業仕分けで指摘されていた。そのような状況下で、スピードだけにこだわり”世界一を目指す”計画に疑問が呈されたのだ。

こうした議論の過程で、蓮舫氏から「世界一になる理由は何があるんでしょうか? 2位じゃダメなんでしょうか?」という言葉が出た。

「蓮舫氏の発言は、サイエンスに費用対効果の考えがなじまないことは理解した上で、“世界一じゃなければ意味がない”と文科省が主張する事業で、“世界一になれない”可能性が高い状況の中、事業を継続する意義を問うたわけです。“2位でも無価値じゃないですよね?”という、いわば計画を継続するための“助け舟”だったのです」(前出の記者)

しかし、文科省の役人や研究者は「世界一の研究には、世界一の装置が必要」「国民に夢を与えます」などと噛み合わない答えを繰り返すのみで、まともな説明はなされなかった。1時間半余りの議論の結果は「限りなく見送りに近い縮減」、つまり事実上の「凍結」だった。

こうした経緯から翌年、文科省は“開発側視点から利用者側視点への転換”として、スピードだけにこだわらず、利用者の使い勝手の良さを目指した計画に変更。仕分けの2年後に完成した“京”は計算の速さで一時的に“世界一”となるが、仕分けで指摘された通り翌年にはアメリカに抜かれる。しかし、“京”はスピード以外の性能ランキングで世界1位となり、’19年の運用停止まで世界のトップを走り続けた。

「新型コロナウイルスの飛沫の飛散シミュレーションで記憶に新しい“富岳”は“京”の後続機です。省エネ性能など総合的な性能を追求し、スピードにこだわらず利用者の使いやすさに重点を置いて開発されました。’20年に計算速度世界1位を獲得。他の指標でも1位となり4冠に、’21年にはスパコンランキング世界初の4期連続4冠を達成しました。

“富岳”の開発に関わった研究者は後に『“富岳”が、蓮舫さんの問いに対する我々の答えなんです』と新聞のインタビューで話しています。蓮舫氏の質問は間違ってなかったのです」(前出の記者)

果たして都知事選の行方はーー。

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