能登地震、被災者語る「保険金はまだ先…」“地震破綻”防ぐ3つの命綱

住宅が倒壊、「二重ローン」を抱え、仕事を失い、生活が立ちいかなくなる人が出る可能性も……。地震による生活破綻を避けるための補償と制度、ぜひ知っておきたい!

「まるで空襲後のような風景が広がっていました」

と語るのは、石川県輪島市や珠洲市などの“奥能登エリア”の移住支援をしている「ぶなの森」の高峰博保さん。

今年1月1日夕方に能登半島で最大震度7を観測する地震が発生。

輪島市では観光名所として有名な朝市通りを大規模な火災が襲い周辺の約200棟が焼失。また珠洲市では強い揺れと津波で多くの家屋が倒壊。いまだに被害の全容はつかめていない。珠洲市に高齢の両親がいる女性は本誌の取材に、

「両親は80代半ば。家は2階建ての家屋が半壊しました。とくに1階部分の被害が大きく、家への出入りも危険な状態です。現在は避難所にいますが、高齢のため、今後、どのような支援が受けられるかわからず不安な様子です」

また前出の高峰さんも、

「能登では2022年5月にも大きな地震があり、そのときに傷んだ屋根瓦などを何百万円かけて直したという人もいます。それが今回はもっと傷みが激しくてもう諦めざるをえないのではないでしょうか」

一刻も早い支援が必要な事態だが、被災した人の暮らしの再建を支える手立ては具体的にどうなっているのか。ファイナンシャルプランナーの長尾義弘さんは言う。

「まず生活再建のための公的支援として『被災者生活再建支援金』があります。住宅の被災の程度等によって異なりますが、日常生活用品の購入などの経費に対し最高100万円、被災住宅の解体・撤去等の経費、住宅再建のための借入金に対する利息や借家の家賃などの経費に対し最高200万円、合計で最高300万円が支援されます」

これとは別に、全国の人たちから被災者支援に寄せられるのが「義援金」。日本赤十字社などが窓口となり、被災県を通して、被災者に届けられるものだ。

「2011年の東日本大震災を例に見ると被災者に対する善意による『義援金』は約100万円でした。『被災者生活再建支援金』と合わせても400万円。この金額では当座の生活資金にはなっても家の再建はむずかしい金額です」(以下・コメントは長尾さん)

長尾さん監修の『NEWよい保険・悪い保険2024年版』(徳間書店)で紹介されている東日本大震災を例とした住宅再建費用にかかるお金になる。

「全壊した住宅を新築した場合、費用は平均で約2500万円。約2100万円の不足が生じます」

ここで助けになるのが「地震保険」だ。

■雇用保険の失業手当を休業時に受けられることに

「今回、地震で倒壊した家屋はもちろん輪島市で全焼した家屋も火災保険では保険金は出ません。地震やそれに伴う津波、火災などで家屋や家財が受けた場合は『地震保険』でしか対応できないのです」

仮に被災した家屋の住宅ローンをまだ返済中の場合、新しく家を再建すると二重でローンを支払うことになり、たちまち生活が立ちいかなくなる人も多いという。

「住宅ローンが残っている人、新築住宅を購入したばかりの人、被災したら生活が苦しくなる個人事業主などはとくに必須。それ以外の人も加入してほしい保険です」

注意が必要なのは「地震保険」は単独で加入することができないこと。必ず火災保険とセットでの契約が必要になる。

「火災保険と同じように『建物』と『家財』に分かれており、それぞれに加入可能。補償される保険金は同時に加入した火災保険の30~50%の範囲で設定でき『建物』は5千万円、『家財』は1千万円が限度額で、全損の場合は契約金額の全額が支払われます。なお公共性が高い保険なので政府と損保会社が共同で運営しているため、どこの保険会社で契約しても保険料は同じです」

保険料は地域や建物の構造によって異なり、建物に保険金1000万円をかける場合の保険料は、地震災害リスクが高い東京都で木造の持ち家で年41100円(月額3425円)石川県は木造の持ち家で年11200円(月額933円)に(日本損害保険協会のサイトで試算)。

「都市部のマンション住まいの場合、建物部分は管理組合が保険に入っているケースが多いですが、家財は補償外。個人で地震保険の家財に入っていると安心です」

また地震による避難生活で職場が被災し休業、収入が途絶える事態もありえる。これにはどんな支援があるのだろうか。

「今回の能登半島地震では、厚生労働省は『雇用保険』の失業手当を休業時にも受けられる特例措置を始めました。離職していなくても失業時と同じ1日最大8490円が支給されます。また被災した企業側には『雇用調整助成金』の特例措置を設け、解雇せずに休職させて雇用を維持する企業への助成率を引き上げて、解雇を減らす措置が決定しています」

冒頭で紹介した珠洲市で被災した両親を持つ女性は「保険金が入るとしてもまだ先の話。現在は避難生活で日々の暮らしのことで頭がいっぱいだと思います」と切実な胸の内を明かす。

いつどこで大地震が起きても不思議ではない日本。公助・共助で当面の生活資金の支えとなる「被災者生活再建支援金・義援金」「雇用保険」に加え「地震保険」への加入。この3つの命綱で「地震破綻」を回避してほしい。

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