ロシア ウクライナに軍事侵攻

「これまでの常識が通じない」医師が警戒するオミクロン株の感染力

国内でも感染者が確認されはじめている、新たな変異株。その強い感染力と、既存の変異株では見られなかった広がり方から、「これまでの常識が通用しない」と、医師は警戒を呼び掛けるーー。

「オミクロン株は、アフリカ、ヨーロッパを中心に70カ国以上に広がっており、日本国内でも徐々に感染者が見つかっています。オランダでは、11月中旬に採取された検体からオミクロン株が発見されたという報告も。日本でもすでに市中に入り込んでいると考えるのが妥当でしょう」

こう警鐘を鳴らすのは、医療ガバナンス研究所の理事長で内科医の上昌広さんだ。

オミクロン株は、11月末にWHO(世界保健機関)がVOC(懸念される変異株)に分類した変異株。最初に発見された南アフリカでの1日あたりの新規感染者は2万人に達し、11月下旬と比較すると約6倍以上に増加している。

「このまま世界的に感染が拡大していくのか、慎重に経緯を見なければなりません。これまでのコロナウイルスの傾向からすると、イギリスやインドで発見されたアルファ株、デルタ株は主に北半球で流行し、ラムダ株、ベータ株、ガンマ株など南半球で流行した変異株は、北半球で広がりを見せることはありませんでした」(上さん・以下同)

つまり、南半球で発見されたオミクロン株は、北半球では流行しないと思いたいところだがーー。

「心配なのはアメリカの状況です。アメリカでは、ゲノム解析した新型コロナ患者全体の14%がすでにオミクロン株で、隣国のカナダでも10%と急増しているという報告があります。変異株に対するこれまでの常識は通じないでしょう」

すでにデルタ株以上の感染力が確実視されているが、重症度リスクはどうか。

南アフリカでは、オミクロン株の拡大以降も、入院患者や死亡者数に大きな変化はないという。

「そのため、米国立アレルギー感染症研究所のファウチ氏は『より正確な解析をするために数週間以上かかる』としながらも、現段階で『デルタ株よりも軽いことはほぼ確実』と述べました」

感染力が強くなるものの、弱毒化するのであれば、新型コロナが「普通の風邪」になる1つのステップという見方もあるがーー。

「まだオミクロン株の解明が進んでいないなか、けっして安心することはできません。とにかく、今年の冬の流行期を乗り切ることが肝心です。高齢者や基礎疾患のある人たちは、2回目のワクチン接種から約半年がたち、効果が下がっています。私自身、2回目接種から150日後に受けた検査では、抗体がほぼなくなっている状態でした」

そのために求められるのが、迅速な“ブースター接種(3回目の接種)”だ。しかし、既存のワクチンでオミクロン株に対する効果は期待できるのだろうか。

ワクチンがウイルスを攻撃するための標的となる、“スパイクタンパク質”と呼ばれる部分の変異が、オミクロン株では30カ所以上にものぼる。そのため「ワクチン効果は下がる」と考える専門家は多い。モデルナ社のCEOも「現行のワクチンではオミクロン株への効果は下がる」と言及している。

南アフリカの国立感染研究所は、従来型に感染し、免疫を獲得している人が“再感染”するリスクが、デルタ株などに比べ3倍も増していると発表している。

■3回目接種で、抗体値を高める

さらにヨーロッパでは、2回のワクチン接種を済ませている人がコロナに感染する“ブレークスルー感染”の頻度が高まるというデータが出ているのだ。

「たしかに、ワクチンはウイルスが変異するたびにその効果が下がるものです。しかし、それは感染予防効果であって、重症化予防に関しては、従来型もデルタ株でも大きな差はなかったため、オミクロン株に対しても期待できます」

12月9日、ファイザー社は、「オミクロン株へのワクチン効果は、ブースター接種によって25倍になる」と発表している。

「現段階において私たちにできることは、可能な人からブースター接種をして、抗体価を高めること。同じm-RNAワクチンであるファイザー社とモデルナ社のワクチンの『交差接種』も、今後は増えていく見込みです。副反応に関しては、現状で2回目接種のときよりひどくなる確率は低いとされています。ブースター接種は、オミクロン株だけでなくデルタ株対策にもなる。イスラエルでは、ブースター接種によって重症化率が20分の1、感染率が10分の1に抑えられると報告されているのです」

ワクチン接種に加え、検査体制にも早急に是正すべき点があると上さんはいう。

「デルタ株が猛威を振るった首都圏や大阪など、オミクロン株の広がりが想定される地域においては、無症状の人であっても無料のPCR検査を積極的に行って、いち早く感染者を割り出し、感染拡大を食い止めることが必須です」

■次のピークは来年の1月下旬〜2月初旬か

空港で実施されている抗原検査を用いた検疫体制も、PCR検査に比べ精度が低いと指摘する。

「CDC(米疾病予防管理センター)の調査では、PCR検査で発見された“陽性者”のうち、抗原検査では“症状のある陽性者”で8割、“症状のない陽性者”では4割しか割り出せなかったといいます」

医療の受入れ体制に関しても、今夏のデルタ株流行の際、コロナ病床として補助金を受け取りながら、患者を受け入れない“幽霊病床”があったことも問題視されたため、不安が残るところだ。

「非難の的になった国立病院や、尾身茂氏が理事長を務める地域医療機能推進機構も、これまで以上の数の患者を受け入れざるをえないでしょう。重症者を受け入れ、高度医療ができる病院同士の連携が求められます」

現役世代がブースター接種を受けるのは年明け以降になる。この冬は、これまでどおりに密を避け、マスク着用、手洗いなどの徹底した感染対策を続けることが求められる。

「昨冬は、1月10〜11日あたりにコロナのピークがきました。オミクロン株の感染力が予想されているレベルであれば、流行期間は長くなり、ピークがやってくるのは1月下旬から2月初旬あたりになるでしょう」

“第6波”を大規模なものにさせないためにも、けっして気を緩めてはならないのだ。

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