メリットは?副反応リスクは?「アストラ製ワクチン」気になる疑問4

「選択肢が増えるのはいいこと」

大阪府の吉村洋文知事は8月4日の会見でそう語った。東京、神奈川、大阪など、緊急事態宣言発出下の6都府県に今月からアストラゼネカ製ワクチンが配送され、23日にも集団接種会場での接種が始まる見込みだ。

これでファイザー製、モデルナ製と合わせて新型コロナウイルスのワクチンは3種類に。接種のスピードを速めることが期待されるが、アストラゼネカ製のワクチンは認可が遅れたこともあり、今後接種を控える人の中には、効果や副反応を気にする声もある。

そこで、感染症の専門家で日本ワクチン学会理事を務める、長崎大学の森内浩幸教授にアストラゼネカ製(以下、アストラ製)ワクチンについて気になる疑問をぶつけてみた。

【Q1】ワクチンはどういう仕組み?

「ファイザー製とモデルナ製のワクチンは、ウイルスの一部であるスパイクタンパク質の設計図となる『メッセンジャーRNA』を用います。いっぽうアストラ製ワクチンは『ウイルスベクター』を使った新しいタイプです。人体に無害なウイルスに『ベクター(運び屋)』になってもらい、ウイルスのスパイクタンパク質の遺伝子情報を体内の細胞へ運ぶものです。細胞の中に入った情報からスパイクタンパク質が作られ、体がスパイクタンパク質に対する免疫を作り出します」(森内先生・以下同)

【Q2】どんなメリットがあるの?

「アストラ製のワクチンは2〜8度という家庭用冷蔵庫の温度で保存でき、非常に取り扱いやすいのが利点です。メッセンジャーRNAのワクチンは凍らせた状態でないと輸送できません。アストラ製は、集団接種会場や医療機関に行くことができない人の家まで行って接種することも可能です」

国内に生産体制が確保されているため、速やかに供給できる点も強みだという。

【Q3】どうして認可が遅れたの?

「今年4月、欧州医薬品庁は、アストラ製ワクチンの接種でごくまれ(100万回接種で6.5件)に起こる副反応として、『血栓』が確認されたことを報告しました。そのため、診断法や治療法が医療現場に周知されるまで、使用が見送られていたのです」

副反応のリスクと接種による利益を精査した結果、7月30日に40歳以上への接種を承認。その効果に期待しつつ、森内先生は次のように注意を喚起する。

■気になる「血栓」リスクとは…

【Q4】「血栓」の副反応は大丈夫?

「欧州医薬品庁の報告を見ると、血栓が起きたのが20〜40代の女性に圧倒的に多い点が気がかりです。さらに血栓が脳の静脈洞という危険な場所で起きており深刻です。ワクチンの重篤な副反応のアナフィラキシーショックは接種直後に起こるため、会場内での対処が可能ですが、血栓の副反応は接種後しばらくたってから起こるため、的確な対応ができずに深刻な事態につながる恐れがあるのです。血栓への懸念から、デンマークやノルウェーでは接種を中止、フランスでは55歳以上、イタリアやドイツでは60歳以上に限定されています。開発元のイギリスでも、基礎疾患のない40歳未満にはほかのワクチンを推奨しています」

日本では40歳以上が対象とされているが、森内先生は個人の見解として「50歳かそれ以上の年齢まで引き上げたほうがよかったのでは」と続ける。

「40歳以上の女性でも、流行規模がそれほど盛んではない地域に住んでいる、肥満や高血圧、糖尿病、慢性の肺疾患などの特別な基礎疾患がない、そしてファイザー製かモデルナ製の予約が可能である方については、アストラ製を回避するほうが賢明だと考えています」

正しい理解をもって、未知のウイルスとの戦いを乗り越えていきたい。

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