介護休暇とは?取得上限や無給の理由、介護休業との違いを解説!

介護休暇とは?制度の概要と取得条件を徹底解説

介護休暇の定義:短期的な介護ニーズに対応する休暇制度

介護休暇とは、要介護状態にある家族の介護や世話を行うために、労働者が取得できる短期の休暇制度です。この制度は、2010年の育児・介護休業法改正により導入され、仕事と介護の両立を支援する重要な制度として位置づけられています。

介護休暇の主な目的は、突発的な介護ニーズや短期的な介護の必要性に対応することです。例えば、要介護状態の家族の通院の付き添い、介護サービスの手続き、急な体調変化への対応などに利用することができます。

介護休暇は、年次有給休暇とは別に付与される休暇であり、労働者の権利として法律で保障されています。このため、企業は原則として介護休暇の取得を拒否することはできません。

介護休暇の取得可能日数と時間単位:年5日(対象家族が2人以上の場合は年10日)

介護休暇の取得可能日数は、要介護状態にある対象家族が1人の場合は年5日、2人以上の場合は年10日と定められています。この日数は、1年度(4月1日から翌年3月31日まで)ごとに新たに付与されます。

2021年1月1日からの法改正により、介護休暇は時間単位での取得が可能になりました。これにより、より柔軟な利用が可能となり、労働者の介護と仕事の両立がさらに支援されることとなりました。

2022年の三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査によると、時間単位で介護休暇を取得可能な事業所の割合は50.5%となっています。また、半日単位での取得が可能な事業所は25.1%で、合わせて75.6%の事業所で1日未満の単位での取得が可能となっています。

時間単位での取得が可能になったことで、例えば、午前中だけ介護のために休暇を取り、午後から出勤するといった柔軟な働き方が可能になりました。これにより、介護の負担を軽減しつつ、仕事のパフォーマンスも維持しやすくなりました。

さらに、2024年の法改正により、介護休暇の取得事由が拡大され、子の看護休暇と同様に、家族の通院の付き添いだけでなく、介護サービスの利用に関する手続きや相談なども対象となりました。

また、勤続6ヵ月未満の労働者を労使協定に基づき除外する仕組みも廃止されました。

介護休暇の対象となる労働者と家族:条件と範囲

介護休暇は、原則として全ての労働者が取得できます。介護をしている人数は約629万人いるとされており、そのうち有職者は365万人です。

介護をしている人のうち有職者の割合

約半数以上は仕事をしながら介護をしており、両立には制度の利用が重要となります。なお、対象となる家族の範囲は以下の通りです。

  • 配偶者(事実婚を含む)
  • 父母
  • 配偶者の父母
  • 祖父母
  • 兄弟姉妹

要介護状態の判断基準は、「負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態」と定められています。

ここでいう「常時介護を必要とする状態」とは、食事、排泄、入浴、移動等の日常生活上の基本的な動作の全部または一部について、常時介護を必要とする状態を指します。

要介護状態にあるかどうかの判断は、必ずしも介護保険制度における要介護認定を受けている必要はありません。医師の診断書などで要介護状態であることが確認できれば、介護休暇の対象となります。

介護休暇が原則無給である理由と代替の経済的支援

介護休暇は、原則として無給です。これは、介護休暇が労働者の権利として法律で定められているものの、休暇中の賃金支払いについては個々の企業の判断に委ねられているためです。

無給である理由としては、以下のような点が考えられます:

  • 短期的な休暇制度であるため、企業の負担を軽減する
  • 介護休業制度との区別を明確にする
  • 濫用を防止し、真に必要な場合に利用してもらう

ただし、企業によっては独自の判断で有給とする場合もあります。

同調査によると、介護休暇を取得した際に賃金を有給と取り扱う事業所の割合は22.1%である一方で、66%の事業所では無給となっています。

介護休暇が無給であることによる経済的負担を軽減するための代替策としては、以下のようなものがあります。

  • 年次有給休暇の利用
  • 企業独自の介護支援制度(介護手当など)の活用
  • 介護保険サービスの利用による介護負担の軽減
  • 地域の介護支援サービスの活用

これらの支援策を適切に組み合わせることで、介護休暇取得による経済的影響を最小限に抑えることが可能です。

介護休暇と介護休業の違い:93日の制限と使い分けのポイント

介護休業の概要:最大93日の長期休業制度

介護休業は、介護休暇とは異なり、より長期的な介護ニーズに対応するための制度です。介護休業を利用することで、労働者は最長93日間、仕事を休んで介護に専念することができます。

介護休業の主な特徴は以下の通りです。

  • 対象家族1人につき、通算93日まで取得可能
  • 3回を上限として分割取得が可能
  • 原則として無給(ただし、介護休業給付金の受給が可能)

介護休業は、介護の体制を整えたり、長期的な介護計画を立てたりするのに適した制度です。例えば、親の介護が必要になった際に、介護サービスの利用手続きや自宅の介護環境の整備などを行う期間として活用できます。

介護休業を取得して介護の体制を整える

介護休暇と介護休業の使い分け:短期と長期のニーズに応じて

介護休暇と介護休業は、それぞれ異なる介護ニーズに対応するために設計された制度です。これらを適切に使い分けることで、より効果的に仕事と介護の両立を図ることができます。

【介護休暇の主な用途】

  • 突発的な介護ニーズへの対応(例:急な通院の付き添い)
  • 定期的な介護サービスの利用手続き
  • 介護に関する短時間の相談や打ち合わせ

【介護休業の主な用途】

  • 長期的な介護体制の構築
  • 介護施設への入所手続きや環境整備
  • 自宅での介護環境の整備
  • 介護者自身の心身のリフレッシュ

効果的な活用方法の一例として、介護が必要になった初期段階で介護休業を取得して全体的な介護計画を立て、その後は介護休暇を活用して必要に応じて短期の休暇を取るという方法があります。

両制度を柔軟に組み合わせることで、より効果的な介護と仕事の両立が可能になるでしょう。
 

介護休業給付金:条件と申請方法

介護休業給付金は、介護休業中の収入を補填するための制度です。雇用保険の被保険者が一定の条件を満たす場合に受給できます。

介護休業期間中に休業開始時賃金の67%が支給され、原則として非課税所得として扱われます。受給の条件は以下になります。

  • 雇用保険の被保険者であること
  • 介護休業開始前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12か月以上あること
  • 介護休業期間中の就業日数が10日以下であること

【申請手続きの流れ】

  1. 介護休業開始前に、勤務先に介護休業の申出を行う
  2. 介護休業終了後、勤務先を通じてハローワークに申請書類を提出
  3. ハローワークでの審査を経て、給付金が支給される

介護休業給付金は、介護休業中の経済的負担を軽減する重要な制度です。介護休業の取得を検討する際は、この制度の活用も併せて考慮することをおすすめします。

介護休暇と介護休業の法的保護:不利益取扱いの禁止

介護休暇や介護休業の利用を理由とした不利益取扱いは、法律で明確に禁止されています。これは、労働者が安心して制度を利用できるようにするための重要な保護措置です。

不利益取扱いには、解雇や雇止め、契約内容の変更(正社員からパートへの変更など)、降格や減給などが当たります。

不利益取扱いを受けた場合は、まずは人事部門や上司に相談しましょう。労働組合がある場合は、労働組合に相談することも良いです。

なお、都道府県労働局の総合労働相談コーナーでも相談が可能です。解決しないようであれば、必要に応じて弁護士や社会保険労務士などの専門家への相談も検討してみてください。

介護休暇や介護休業の利用を躊躇する理由の一つに、キャリアへの影響を懸念する声があります。しかし、法律による保護があることを認識し、必要な場合には適切に制度を利用することが重要です。企業側も、介護休暇や介護休業の利用者に対する公平な評価や処遇を行うことが求められています。

解決しない場合は専門家への相談も検討

介護休暇を活用した仕事と介護の両立術:制度を最大限に生かすコツ

介護休暇の効果的な取得方法:計画的な利用と職場との調整

介護休暇を効果的に活用するためには、計画的な利用と職場との円滑な調整が不可欠です。以下に、介護休暇を上手に取得するためのポイントをまとめます。

  1. 事前の介護ニーズの把握
    定期的な通院や介護サービスの利用など、予測可能な介護ニーズを事前に把握し、カレンダーなどで管理しましょう。
  2. 上司や同僚との早めの相談
    介護の状況や休暇取得の可能性について、早い段階で上司や同僚に相談しましょう。突然の申し出は職場の混乱を招く可能性があります。
  3. 業務の引き継ぎ準備
    休暇中の業務について、誰がどのように対応するかを事前に決めておきましょう。必要に応じてマニュアルを作成するなど、スムーズな引き継ぎを心がけます。
  4. 柔軟な取得方法の検討
    時間単位や半日単位での取得が可能な場合は、業務への影響を最小限に抑えつつ、必要な介護時間を確保する方法を検討しましょう。
  5. 代替要員の確保
    長期的な介護が必要な場合は、人事部門と相談し、代替要員の確保を検討することも有効です。
  6. 復帰後のフォローアップ
    介護休暇から復帰した後も、定期的に上司や人事部門と面談を行い、仕事と介護の両立状況をフォローアップしましょう。

これらの方法を実践することで、職場の理解を得ながら、より円滑に介護休暇を取得することが期待できるでしょう。

介護休暇と他の両立支援制度の組み合わせ:フレックスタイム制度など

2024年の法改正により、介護に直面した労働者に対して、事業主は両立支援制度等に関する情報の個別周知と意向確認を行うことが義務付けられます。これにより、労働者は自身の状況に合わせて、より適切な制度を選択できるようになりました。

介護休暇だけでなく、他の両立支援制度も併せて活用することで、より柔軟に仕事と介護を両立させることができます。以下に、主な両立支援制度と、それらを組み合わせた効果的な活用方法を紹介します。

  • フレックスタイム制度
    始業・終業時刻を柔軟に設定できる制度です。介護休暇と組み合わせることで、例えば朝の介護に時間をかけ、遅めの出勤を選択するなど、柔軟な働き方が可能になります。
  • 時差出勤制度:
    所定の勤務時間を変更せずに、始業・終業時刻をずらすことができる制度です。通院の付き添いなどに合わせて勤務時間をずらすことができます。
  • 短時間勤務制度:
    1日の勤務時間を短縮する制度です。介護休暇と併用することで、日々の介護時間を確保しつつ、仕事も継続することができます。
  • テレワーク制度:
    2024年の法改正により、介護期の働き方としてテレワークを選択できるよう、事業主に努力義務が課されました。自宅で仕事を行うことで、介護が必要な家族の近くで仕事ができ、急な対応も可能になります。

効果的な活用事例

  • 介護休暇とフレックスタイム制度の併用
    月に1回の定期通院に介護休暇を使い、その他の日はフレックスタイムを活用して柔軟に勤務時間を調整する。
  • 介護休暇と短時間勤務制度の併用
    週2日は介護休暇を取得し、残りの日は短時間勤務を利用して、毎日一定の介護時間を確保する。
  • 介護休暇とテレワーク制度の併用
    介護休暇で対応できない急な介護ニーズに、テレワークで柔軟に対応する。

これらの制度を上手に組み合わせることで、個々の状況に応じた最適な仕事と介護の両立が可能になります。自社の制度を確認し、人事部門とも相談しながら、最適な組み合わせを見つけることが重要です。

介護休暇中の介護サービス活用:レスパイトケアの重要性

介護休暇を取得する際は、自身で全ての介護を担うのではなく、適切に介護サービスを活用することが重要です。特に、介護者自身の心身の健康を維持するためのレスパイトケア(一時的な休息)は非常に重要な役割を果たします。

主な介護サービスとその活用方法

  • 訪問介護(ホームヘルプサービス)
    介護職員が自宅を訪問し、身体介護や生活援助を行います。介護休暇中に、自分では対応が難しい介護タスクを依頼することができます。
  • 通所介護(デイサービス)
    日中、介護施設で食事、入浴、機能訓練などのサービスを受けられます。介護休暇を取得しつつ、要介護者の日中の活動を支援することができます。
  • ショートステイ
    短期間、介護施設に宿泊してサービスを受けられます。介護者が数日間の休養を取る際に活用できます。
  • 訪問看護
    看護師が自宅を訪問し、医療的なケアを行います。医療ニーズの高い要介護者の介護に不安がある場合に利用できます。

レスパイトケアの重要性

  1. 介護者の心身の健康維持
    継続的な介護は身体的にも精神的にも大きな負担となります。定期的なレスパイトケアにより、介護者自身の健康を維持することができます。
  2. 介護の質の向上
    介護者が適度な休養を取ることで、より良質な介護を提供することができます。
  3. 社会とのつながりの維持
    レスパイトケアの時間を利用して、友人との交流や趣味の時間を持つことで、社会とのつながりを維持できます。
  4. バーンアウト防止
    介護による過度のストレスや疲労の蓄積を防ぎ、介護離職のリスクを軽減します。

介護休暇を取得する際は、自身で抱え込むのではなく、これらのサービスを適切に活用し、介護者自身の健康維持にも注意を払うことが、長期的な介護と仕事の両立につながります。

介護休暇制度の今後の展望:より柔軟な制度設計に向けて

介護休暇制度は、仕事と介護の両立支援において重要な役割を果たしていますが、社会の変化に伴い、さらなる改善や柔軟化が求められています。2024年の法改正により、いくつかの重要な変更が加えられましたが、さらなる改善の余地があります。

現在の主な課題は取得可能日数が 年5日(対象家族が2人以上の場合は10日)という制限があること。これは、実際の介護ニーズに十分対応できていない可能性があります。

そして、無給原則であることが、経済的な理由となり利用を躊躇する場合もあるでしょう。制度の認知度も低いことで、多くの労働者が十分な理解が得られていないことも考えられます。

今後は、取得可能日数の拡大や有給化の検討、企業の自主的な取り組み促進などが求められ、より柔軟で使いやすい制度としていくことが期待されます。

労働者一人ひとりのニーズに合わせた制度の活用と、企業側の理解と支援が、真の意味での仕事と介護の両立につながるでしょう。

介護休暇制度は、仕事と介護の両立を支える重要な制度です。この制度を正しく理解し、適切に活用することで、介護者の負担軽減と継続的な就労の両立が可能になります。社会全体で介護と仕事の両立を支援する環境づくりを進めていくことが、今後ますます重要になっていくでしょう。

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