上司と部下を逆転、階級が明確な警察でも「リバースメンタリング」試行…「幹部は知識」「若手は指導力」それぞれ強化

 静岡県警は、上司と部下を逆転させ部下が上司に指導や助言をする「リバースメンタリング」をデジタル分野で試行している。幹部らが敬遠しがちなデジタル分野を下の世代が教えることで業務効率化につなげる取り組みで、階級が明確な警察で行うのは珍しいという。(遠藤美奈)

グループワークで若手に質問する幹部(静岡市葵区で)

 DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の一環。一般的には上司が指導・助言する「メンター」となり部下にアドバイスをするが、逆(リバース)になっていることから「リバースメンタリング」と呼ばれ、民間では取り組みが進んでいる。

 大手金融機関、みずほフィナンシャルグループ(本社・東京都)では2023年度から、リバースメンター制度を導入。応募者から選ばれた30歳未満の若手社員が最高経営責任者(CEO)ら幹部に2人ずつメンターとしてつき、数か月に1度、幹部と1対1で会社の経営課題などについて議論する。幹部が多様な現場の意見を知ることができるほか、若手も経営陣の考えや悩みに触れ、会社のことを自分のこととして考えられるようになるという。

 県警では昨年、デジタル分野に限って試験的に導入。まず昨年12月から今年2月にかけて県警本部でオリエンテーションを含む3回を実施し、県警本部長や各部長ら幹部を前に、40歳代以下の警察官ら約30人が講義を行った。

 今年6月には、県警本部各部の次席ら幹部に加え、中部地域の警察署の課長らが参加。インターネットに接続するIoT家電の使い方や捜査で使う分析ツールの利用方法について若手から講義を受けた。

 インスタグラムの使用方法などを学んだ水嶋春彦生活安全部長は「曖昧だった知識が深まった」と話した。若手が新しいものを怖がらずに取り入れる姿勢を見て、「探究心や度胸は見習いたいと思った」という。

 県警ではこれまで、SNSやパワーポイントの使い方からデジタル解析といった専門的分野までを議題としてきた。キャッシュレス決済アプリ「ペイペイ」などに関する講義を受け持った女性職員は「講義のおかげで電子決済を始めたとの声も寄せられ、自信につながった」と話す。

 企画した県警デジタル企画課の担当者は「幹部が知識を得ることができ、若手の指導力を上げることもできた」と評価。「警察署にも取り組みを広げ、いずれはそれぞれの場所でリバースメンタリングが行えるよう働きかけていきたい」と話している。

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