原爆で命落とした祖父母と父 「被爆2世」の手帳でつなぐ思い 医療費補助のメリットなくても大切なもの

61歳の女性がことし受け取った「被爆2世」の手帳。祖父母も父も原爆で命を落とした女性。伝えたい、平和への願いとは。

(鈴木理恵子さん)
「8月6日広島に、9日は長崎に原爆が落とされてたくさんの人が亡くなった」

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ここは三重県津市の学童保育。7日、子どもたちに「原子爆弾」の話をしていたのは、鈴木理恵子さん61歳。ここの指導員で、子どもたちから「すーず」と慕われています。

(鈴木理恵子さん)
「そのときにアメリカに落とされた原子爆弾でおじいちゃん、おばあちゃんが亡くなった」

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祖父母は即死 父は被爆の後遺症で…

毎年この時期に話をしている鈴木さん。家族を何人も原爆に奪われました。

1945年8月6日。アメリカが広島に落とした原爆「リトルボーイ」。その年の犠牲者は約14万人。

爆心地の近くでカフェを営んでいた鈴木さんの祖父母は即死でした。父親は当時5歳で疎開していましたが、1週間後に両親を探すため、広島に戻り被爆。その約50年後に白血病で亡くなり、原爆の後遺症と認定されています。

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毎年8月6日に広島を訪れ、平和記念式典に三重県の遺族代表として出席している鈴木さん。帰ってきた後にこうしてお話し会を開いています。

(鈴木理恵子さん)
「すーずのお父さんも原子爆弾の影響で56歳の時に亡くなった。すーずは『被爆者の子どもだよ』と言っても分からないが、この被爆二世の健康記録簿というのがあって…」

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メリットはないが「二世」と認めてくれる証明に

子どもたちに見せた1冊の手帳。「被爆二世健康記録簿」と記されています。ことし2月、県から受け取りました。

(鈴木理恵子さん)
「被爆者は『被爆者手帳』というものがあるが、被爆二世にはこういう手帳がなかった。二世として行政が認めてくれる証明になるものだと思う」

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被爆者団体の長年の要望によって、3年前から配布されている被爆二世健康記録簿。

現在、発行予定がない青森や岩手、検討中の北海道や大阪などを除く35の都府県で交付されています。しかし、年1回無料で受けられる健康診断の結果を自分で書き込んでおくメモ帳のようなもので、被爆者に保証される医療費の補助などは受けられません。

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(鈴木理恵子さん)
「医療費の補償(助成)は全くない。行政にも『メリットがない』と言われた」

過去の裁判でも認められていない被爆二世への補償。それでも、この手帳は大切なものだといいます。

(鈴木理恵子さん)
「被爆者も高齢化してきて、その思いをわたしたち(被爆二世)が受け継がないといけない」

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「わたしと父の思いが詰まった手帳」

鈴木さんの父親、公治さんは、自身の被爆を生前全く話さず、死後、被爆者手帳を見つけて初めてその事実を知りました。

(鈴木理恵子さん)
「親の被害状況もあるので、わたしだけではなく、父のことも書ける手帳。わたしと父と2人の思いが詰まった手帳」

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すーずの話を聞いた子どもたちは…

「お父さんが病気で亡くなったのが悲しい」
「どうして(被爆者が)病気にかかるのか、もっと知りたいと思った」
「(手帳に)いろいろ書いてあって、(被爆二世と)証明できることを知った」

あの悲劇を風化させないため小さな手帳を支えに、これからも原爆の話を伝えていきます。

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