OA中のスタジオに…ウーバー配達員? 突然声が出てしまう“トゥレット症”の怜音さん(29) 症状を知ってもらえると「めっちゃ生きやすい!」

(若狭敬一キャスター)
きょうは本番中ですが、スタジオにウーバーイーツを頼みました!

こんにちは~ウーバーイーツです!

CBC

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(若狭キャスター)
CBCテレビを長くご覧いただいている方はご存じかもしれません。ウーバーイーツ配達員・棈松怜音(あべまつ れおん)さん29歳です。玲音さんは「トゥレット症」という病と闘っているんですが、どんな症状があるんでしょうか。

(ウーバー配達員 棈松怜音さん 29歳)
あいよ!あいよ! 僕が今こうやって声を出しているみたいに、大きい声とか汚い言葉が出てしまう「音声チック」と、体が勝手に動いてしまう「運動チック」の両方が長期間続いている状態をトゥレット症というんですけど、工夫しながら生きています。あいよ!

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(若狭キャスター)
自分の意思とは無関係に声が出たり、体の一部が動いてしまうと。約140年前にこの病気が見つかったということですが、原因はまだ不明で、治療法もまだ見つかっていないということです。CBCテレビが玲音さんに密着して2年になりますが、放送を機に全国の学校から出張授業を頼まれているということで、今回、能登半島の被災地からも依頼が届きました。

講演依頼のきっかけは…被災地での「炊き出し」

あの地震から3か月。怜音さんは名古屋から被災地を訪れました。

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(棈松怜音さん)
「家の中の景色が見えるじゃないですか。あいよ、いろんな感情が出てきますよね」

被災地を訪れたワケは…

(怜音さん)
「石川県の被災地から“授業依頼”をいただきました。あいよ」

穴水町の福祉施設からの講演依頼があったのです。

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怜音さんは、小学生の時から意思に反して大声が出てしまう「トゥレット症」と闘っています。確固たる治療法がなく、少しでも理解してもらえたらと、これまで全国各地の学校で出前授業なども行ってきました。

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今回の講演依頼は、個人的に続けている能登での「炊き出し」がきっかけでした。

(怜音さん)
「石川県に6回炊き出しに行った。心に傷を負っているエリアの人たちに授業を届けられるのは、とても意味がある。やりがいを感じる」

CBC

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名古屋から車で5時間。いまだにあちこちに地震の爪痕が残ったまま。

(怜音さん)
Qトゥレット症患者の避難所生活については?
「かなりきついと思う。声が出ちゃうと、対人関係でトラブルになる。場所を選べないのは相当しんどい」

突然大声が出て…「マジでごめん!って思う本当に。許してって」

(怜音さん)
「現場入りします。お願いします!」

授業は、地域支援センターの一角で。依頼したのは、施設を管理する多木さんです。

(ピアサポート北のと 多木和也さん)
「炊き出しの様子を(目の前で)見て、すごく心に響くものがあった。ぜひ怜音さんの話を地域の皆さんに聞いていただけたら」

CBC

(怜音さん)
Q気合い入ってます?
「能登の人はウーバーを見たことない人もいるので。バッグを持ってきた」

準備万端です。

(怜音さん)
「シャ!おはようございます。ウーバーウーツでございます!」

参加したのは、親子連れや高齢者など15人。

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(参加者)
「1年生のランドセルみたい」

予想通り皆さんの興味は大きなバッグに。怜音さんは自身の心の傷を語り出しました。

(怜音さん)
「町を歩いていたらびっくりさせちゃう。怖い思いをさせてしまった。夜道で叫ばれたこともあった。ごめんねマジでごめん!って思う本当に。許してって思う。みそぎでもある。みんなに(炊き出しで)喜んでいただく。帳尻合わせで僕はメンタルを保っている」

CBC

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自分に降りかかった困難、他人に理解されない悔しさ。

(怜音さん)
「(配達先で)大きい声が出ちゃった。『あいよ、あいよ、あいよ』って。『なんだお前気持ち悪いな』(と言われた)。病気の説明をしました。だけど『病気なら治せよ。出歩くんじゃねぇよ』と言われて。説明してもわかってもらえない。『気持ち悪いから喋るな』とか言われて、こんな見た目だけど俺泣いた。えへへ。いつも楽しいことばっかりじゃないよね」

なんとか折れずに、ここまで歩いてきたと聞いた参加者からは…

(穴水町民)
「嫌なこともあって、いろんな経験をして大きくなっていくと思っている。嫌なことを乗り越えるための方法は何かありますか?」

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(怜音さん)
「無理くり笑顔をつくる。つらいときにイーッて30秒くらいやるとなんか笑えてくるんですよね。気持ちを上に引っ張り上げてくれる。強引な手法で誰かに習ったわけではないけど、自然にやるようになって、前向きに考えられるようになりました」

「笑顔が幸せを引き寄せるはず」と持論を展開。そして調理師免許をもつ怜音さんは、みなさんに故郷・鹿児島の郷土料理「鶏飯」を振る舞いました。

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(参加者)
「元気づけられました。これからいろんなことを頑張ってみようと思いました」

(ボランティア関係者)
「つらい経験のある人が支援側に立つ必要性を改めて感じた」

(穴水町民)
「いろんな生き方があるんだなと思った。こういう縁でお会いできて、うれしかったです」

CBC

トゥレット症を知ってもらえると、めっちゃみんな生きやすい

(若狭キャスター)
穴水町での支援と出張授業、怜音さんどうでしたか?

(怜音さん)
やっぱり石川県の人たち正月早々、地震にあってお正月を最後まで過ごせなかった。だから何か僕…あいよ、あいよ、ごめんなさいね。何か1食でも楽しい食事を提供して幸せになって欲しいなという思いで始めたんですけど、行って僕の方が元気をもらえることが多くて。やっぱり、喜んでもらえるのってめっちゃ嬉しいですよね。

CBC

(若狭キャスター)
子どもの頃は傷ついたこともたくさんあったと思うんですが、いつ吹っ切れるようになったんでしょうか?

(怜音さん)
僕はずっと大人になるまで、この病気のことをなるべく人に知られたくなくて、隠してきたんですよ。だけど大人になって、初対面の人と会うときに、ちゃんと病気の説明を先にするようになって、やっぱり自分の中にある、すごく大きい隠し事だから。これを先に相手に与えることで、何だろう…コミュニケーションが円滑になったなって感じました。

(若狭キャスター)
変な質問かもしれませんが、我々はどう接すればいいですか。

(怜音さん)
やっぱり、まず僕がこうやってトゥレット症のことを発信させていただいてるのって、まずこの病気について皆に知って欲しくて。まず知った上で理解するかどうかは、それは受け取る側の自由なんで、僕は「理解しろ」とは思わないです。なので、知った上で「あ、あの人トゥレット症っぽいな」と思ったら声をかけてくれてもいいし、苦手だったら無視して距離を置いてくれてもいいし、どちらでも構わないです。

CBC

(若狭キャスター)
まず「知る」ことからということですね。

(怜音さん)
知っていただけると、めっちゃみんな生きやすくなりますね。

(若狭キャスター)
ありがとうございました。

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