「何とか続ける方法はないのか…」音響の素晴らしさ誇る「しらかわホール」が30年の歴史に幕 所有する三井住友海上「建物全体を売却する予定だがホールの存続や売却先などは未定」 名古屋

2月29日、名古屋・伏見にあるクラシックコンサート専用のホール「しらかわホール」が、30年の歴史に幕を下ろしました。会場には閉館を惜しむファンの姿が。

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(クラシックファン)
「やるせない。代わりがないので」
「何とか続ける方法はないのかな」

中区にある「しらかわホール」。クラシックコンサート専用の約700席のホールで、音響の素晴らしさやステージとの“近さ”で知られています。

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(名古屋芸術大学音楽領域 長江和哉准教授)
「シューボックス型、その名の通り“靴箱”のようなホールで、ステージで演奏された楽器の音が直接観客に届くっていうのと、左右の壁や天井や床やさまざまなところに反射して、本当に音楽に包まれるような感覚が得られる」

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今 名古屋は深刻な“ホール不足”


しらかわホールは1994年に誕生。一流のアーティストからアマチュア音楽家まで、多くのコンサートが行われてきました。しかし、ふんだんに使われている木材の維持費や耐震工事の費用負担、コロナ禍などでの需要の落ち込みなどを理由に、建物を所有する三井住友海上は、2024年2月末での閉館を決めました。

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(名古屋音楽大学 佐藤恵子学長)
「音のすばらしさや好立地…文化の発信源になっている大事なところなのでやっぱり残ってほしいなと」

ホールを存続するため、去年、大学の学長らが、名古屋の河村たかし市長に協力を求める場面も。

(名古屋・河村たかし市長)
「残さないかん。そりゃあ応援しますよ」

存続を求める署名は2月時点で1万2千人分を超え、企業側にも手渡されましたが、状況は変わりませんでした。

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今、名古屋のコンサートホール不足は深刻です。2008年に愛知厚生年金会館が、2010年には愛知県勤労会館が、2015年には名鉄劇場、2018年には中日劇場が閉館。さらに、愛知県芸術劇場は現在改修中、日本ガイシホールはことし4月から、センチュリーホールは来年から改修に入り、使えなくなります。

所有する三井住友海上「ホールの存続や、売却先などは未定」

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そんな中で迎えたしらかわホール最終日。ステージに上がったのは国内外での活躍がめざましい名古屋生まれのピアニスト、阪田知樹(さかたともき)さん30歳です。このホールで、何度も演奏してきました。

(ピアニスト 阪田知樹さん)
「(閉館前の最後の演奏会は)間違いなく私の中で特別な時間となりますし、本当に大切にしたい」

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そして“最後のコンサート”が始まった…

ホール入り口には、開場前から、閉館を惜しむ人たちの姿が。スマートフォンで建物などを撮影する姿も。

(訪れた人)
「見納めになってしまう…大好きなホールだったので記念に(撮影した)」

(音楽科の高校生)
「あこがれのステージです。立てたらすごい。ずっと残っていてほしかったです。このホールには」

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♪ショパン 24の前奏曲から15番「雨だれ」

(阪田さん)
「きょうが最後の日、特別な日っていう熱量は、わたし自身の中にもわきあがってきましたけれども、みなさんからも伝わってきて…」

ショパン「24の前奏曲」、シューマン「クライスレリアーナ」など叙情にあふれた2時間のステージ。最後に阪田さんが演奏したアンコール曲は、自ら編曲したラフマニノフ“ここは素晴らしい処”でした。

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(訪れた人)
「最高でした。もう最後でここで音が聴けないのがつらいです」
(音楽科の高校生)
「本当に涙が出るほど感動しました。特にシューマンがよかった。(将来)こういう舞台に立てたらいいなと思います」

30年間、上質な音楽でたくさんの人を包んできたしらかわホール。所有する三井住友海上によりますと、建物全体を売却する予定ですが、ホールの存続や、売却先などは未定だということです。

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CBCテレビは「しらかわホール」最後のコンサート、阪田知樹さんのピアノリサイタルの一部を、3月18日(月)午後7時から期間限定で無料配信する予定です。会場にいるかのような臨場感を味わえる立体音響(バイノーラル)でお送りします。イヤホンやヘッドフォンを用意してお楽しみください。

詳しくはCBCの公式ホームページのイベント欄をご覧ください。

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