震災で倒壊した家から見つかった“駒” 藤井聡太八冠(21)の同学年対決で使われる 「特別な駒だと思うので いい将棋に」

2月24日、石川県金沢市で棋王戦五番勝負第2局が行われました。藤井聡太八冠が挑戦者の伊藤匠七段に勝ち、防衛まであと2勝としましたが、この対局で使われた駒には能登半島地震からの復興の思いが込められていました。

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24日に石川県金沢市で行われた、棋王戦五番勝負第2局。棋王初防衛を目指す藤井八冠に、同じ2002年生まれの伊藤匠七段が挑みました。

第1局は、タイトル戦では異例の「持将棋」=引き分けに。先に1勝し流れをつかめるか、両者にとって重要な第2局でした。

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そして、今回注目されたのが使用された「駒」。駒を選ぶ前日の検分では…

(塩井一仁さん)
「震災で倒壊した家屋の下から探し出されたものです」

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今回の対局に駒を提供したのは、石川県珠洲市在住で日本将棋連盟石川県支部連合会の理事・塩井一仁さん(63)です。塩井さんは、2009年から金沢での対局に自身が所有する駒を提供してきました。

塩井さんの妻・紀美子さんは能登半島地震で倒壊した自宅の下敷きになり、亡くなりました。

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しかし葬儀の後、がれきの中から愛用の駒が無傷で発見されました。

塩井さんは今回の対局で駒を提供するか思い悩みましたが、妻との思い出が浮かんできたそうです。

藤井八冠「“特別な駒”だと思うので、いい将棋にしたい」

(塩井さん)
「妻は私の将棋のこと、駒や盤の(収集する)趣味のこと、タイトル戦に(駒盤を)提供することをどう考えていたのか自問自答した」

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紀美子さんなら、駒の提供に賛成してくれるだろうと思ったといいます。

(塩井さん)
「書体が“清定書”という、江戸時代から伝わるかなり古い書体」

タイトル戦で使用されるのは「盛上駒」という、格が高い対局にふさわしいとされる最高級品。

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手掘りの文字に漆を何度も重ね、文字が浮き立つよう仕上げる駒。じっくり時間をかけてつくり上げる芸術品です。

(藤井八冠)
「ではこちらで(決定)」

駒は、最終的に棋士が確認して使うかどうかが決まります。

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(塩井さん)
「被災した皆さんも本当にパワーをいただけると思う。そして、笑顔になれると思っている」

第2局は、後手番の藤井八冠が94手でシリーズ1勝目を挙げました。

(藤井八冠)
「倒壊した家の中から見つかった“特別な駒”だと思うので、いい将棋にしたいという気持ちは強くありました」

そして、提供された駒については…

(藤井八冠)
「少し珍しい書体かなと思ったが、対局してみるとスッと局面に入り込める感じだった」

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棋王防衛とタイトル戦21連覇まで、あと2勝となった藤井八冠。第3局は、3月3日に新潟市で行われます。

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