「井戸を掘らなあかん」 自治会長の呼び掛けで完成した“防災井戸” 災害への備えとして住民を支える存在に

能登半島地震の被災地では断水が長期化し、被災者の生活に深刻な影響を及ぼしていますが、三重県名張市では自治会が井戸を活用して災害への備えをしています。

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石川県の能登地方では、約4万戸で断水が続いています。

市内の7割近くにあたる約1万5000世帯で断水が続く七尾市では。

(名古屋市上下水道局・堀口茂さん)
「何とか水を出せるようにと進めている。まだまだ時間がかかるが、調査しながら1日でも早く届けられるように」

七尾市での完全復旧は、4月以降になる見通しです。

こうした大規模災害時に、いかに生活用水を確保するのか?

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三重県名張市の蔵持地区では、その対策として避難所に指定されている市民センターの敷地内に、ある設備が。

(蔵持地区まちづくり委員会・高山正之さん)
「もし停電したとしても手動式。(Q.これは何の水?)井戸水」

2014年に完成した防災井戸は、毎分約230リットルと豊富な水量を誇ります。

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この井戸を作ろうと呼び掛けたのが、10年前に亡くなった当時の自治会長、吉岡晋一さんでした。

(吉岡さんの妻)
「水が一番生活の資源。だから井戸を掘らなきゃいけないと。それも、なかなか(水が)出ない。もう一回掘ったら出る、出るまで掘れ!って」

1959年、夫の吉岡さんは子どもの頃に伊勢湾台風を経験。地域防災の大切さを、よく口にしていたといいます。

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「『やろうやろう』なんて人はいなかった」

自治会長当時、名張市は各地区の自治会に200万円の予算を割り当て、地区の整備などに使うことを許可。

吉岡さんの暮らす蔵持地区以外の自治会では、その予算を街路樹の整備などにあてる所が多かったといいます。

「絶対、井戸を掘るべきだ」と言っていた吉岡さんに対して当時は。

(蔵持地区まちづくり委員会・高山正之さん)
「『やろうやろう』なんて(乗り気の)人はいなかった。でも吉岡さんが強引に推すから、そういう人だったから。仕方がないと思いながら『やってみるか!』となった」

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この井戸の水は、飲料水として利用可能。

維持管理のために普段は有料で20リットルまで50円で使うことができ、災害時は市民に無料で使ってもらえるよう取り決めています。

さらに自治会では憩いの場として3年前に、この井戸水を使ったカフェスペースをオープン、コーヒー1杯が100円です。

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(蔵持市民センター・三瀬幸綱センター長)
「市民センターという場所と地域の人とのつながりが、より深くなっていくと思う」

能登半島地震の発生から1か月。水の確保は改めて大事だと、住民たちは再認識することになりました。

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(蔵持地区まちづくり委員会・高山正之さん)
「能登半島地震でも飲み水やトイレの水に苦労している。日本では、いつどこで地震が起きるか分からない。その時に(井戸が)役立ったら、携わった者としては、ありがたい」

伝説の自治会長、吉岡さんたちが声をあげて作った蔵持地区の井戸は今、住民たちの大きな支えとして水をたたえています。

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