全国からも相次ぐ視察…不登校&いじめ対策に効く?『学び合い』の授業【news23】

「明日から学校や仕事」という人も多いかと思いますが、連休明けに心配なのは五月病。それに子どもたちの不登校です。佐賀市立東与賀中学校では『学び合い』の授業で不登校が大きく減ったといいます。その理由とは。

 不登校を減らした中学校の取り組み 「学び合い」とは?

佐賀県佐賀市の公立中学校。保健室の目の前に『そよ風ルーム』があります。

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佐賀市立東与賀中学校 貞包浩洋 校長
「教室に入れない、別室登校。去年、一昨年はここに10人くらいいた」
――今は?
「ゼロ」

3年前までは、この学校にも保健室登校の生徒が十数人いましたが、今はおらず入学後、新たに不登校になる生徒もほとんどいません。

その秘訣は何なのか。この学校では3年前から全校的に取り組んでいることがあります。

宮﨑唯 教諭
「今日から『走れメロス』に入っていきます。今からやることの説明した後に、今日の活動に入っていきたいと思います」 

中学2年生の国語の授業です。宮﨑先生は「走れメロス」のある場面を4コマ漫画に要約するよう指示を出しました。すると… 

宮﨑 教諭
「35分までだからあと30分、33分か。はいどうぞ!」

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先生の一声で、生徒たちが動き始めました。どこで誰と活動するかは自由です。

生徒「まず街いって…」 
生徒「まず妹の結婚式のために何かドレスとか食べ物とか買いに行ったから…」

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早速、仲間と始める生徒もいれば、まずは一人で取り組む生徒もいます。

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壇上から先生が一方的に指導することの少ないこの授業。『学び合い』と呼ばれ、先生は基本的には生徒の様子を見守るだけです。

隣の教室を見ると、こちらも同じやり方です。この学校では、『学び合い』を全校的に導入して以降、いじめや不登校が減ったといいます。

宮﨑 教諭
「助けてあげて、間に合わないかも。(残り)12分」

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決められた時間までに全員が課題を達成できるよう、先に終わった人たちが手助けします。先生が皆に一斉に話すのは、最初と最後の数分間だけでした。

不登校対策やいじめ予防にも 「学び合い」に生徒は

入ったばかりの1年生はこのやり方に戸惑う生徒もいますが、2年生や3年生の多くはこの『学び合い』を高く評価しています。

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男子生徒
「先生に気軽に聞けないこととかあるんで、それは友達とかに気軽に聞けて、わかりやすい」 

男子生徒
「やっぱ一斉授業だと眠くなっちゃうとか、分からないとこあると思うんですけど、友達と話すので眠くもならないし、楽しく授業ができます」 

女子生徒
「分からないところ、いろんな友達に聞けるので知らないところ、『やっぱりそうなんだな』という気づきがあります。普段しゃべらない子にも教えてに行くので、やっぱり交流は絶対に増えます」

『学び合い』は、不登校対策やいじめ予防にも効果があると教員も言います。

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宮﨑 教諭
「孤独にしないというか1人を作らない。全員が達成するように動いていくんだよと、ずっと言っていくので、みんながみんなに関わらなきゃいけないから、1人という感覚は『学び合い』だからこそなくなっていくし、わからなかったことがわかるようになる。中学校に入ってきて、慣れなくて、なかなか学校に来れなくなったりとかという子が、ほとんどいない。友だちと関われる時間が『学び合い』で多いから、というのはあるのかなとは思います」

この学校では、2つのクラスの『学び合い』を一人の先生が見ることもあります。時には隣のクラスの子どもたちと一緒に学び合うのです。

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生徒「原子力もいいけど事故った時、危なくない?」

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授業とは思えない楽しい雰囲気ですが、学力向上にも繋がっています。今、この学校には全国から視察が相次いでいます。『学び合い』は、どこまで広がるのでしょうか?

「学校に行きたくない」に「なんで」が一番NG

小川彩佳キャスター:
ご自身も不登校を経験されその後、NPO法人で当事者の取材を行っていらっしゃる不登校ジャーナリストの石井しこうさんです、よろしくお願いいたします。

石井さんは不登校を経験されたということですが、いつ、どういうきっかけで?

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不登校ジャーナリスト 石井しこうさん:
私は中学2年生のときに不登校でした。きっかけは小学校のときの中学受験です。2年ぐらいさかのぼりますが、受験でずっと苦しくて、それが中学校に入ってからも続き爆発した、ということです。

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小川キャスター:
そのときの心理状態ってのはどういったものでしたか。

石井しこうさん:
何が原因なのか分からない、自分がどうして苦しいのか、というより、生活してるだけで苦しくなってきてしまって。いま考えると自殺願望みたいなものがあったり、踏切の音を聞くとなんか呼ばれてる感覚とか。どんどん理由がわからず追い詰められてたな、というのはよく覚えています。

藤森祥平キャスター:
相当な覚悟で「学校に行きたくない」と切り出されたわけですよね。

石井しこうさん:
そうです、途中までもう「学校行きたくない」と考えないようにしていました。でもある日突然「もう駄目だ」となり、母親に相談しました。

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ジャーナリスト 浜田敬子さん:
何年間ぐらい行けなかったんですか?

石井しこうさん:
私の場合は、その後ずっと戻ってないです。中学校卒業後はずっと不登校のままですね。

小川キャスター:
そのとき、家族の対応というのはどういったものでしたか。

石井しこうさん:
最初の対応が素晴らしくて、私が「行きたくない」って言ったら、母親が「わかった」と。「じゃあ、2週間休もう」と言ってくれて。

浜田敬子さん:
いきなり「休んでいいよ」と言える親御さんはすごいですね。まず、「どうして」と言ってしまうと思うんです。不登校の取材をしたことがありますが、責めてはいけないし、無理やり連れて行ってはいけない、とはわかってますが、「なんで、なんで」と絶対聞いてしまいそうな気がします。

石井しこうさん:
その「なんで」が一番NGなんです。SOSを言ってる子どもからすると「なんで」とか、「もう少し頑張ってみよう」というのは、断られた気持ちになって、すごく追い詰められてしまう。「ちょっと明日ぐらい行ってみよう」とか言ってしまう。でも「わかった」と言ってまず受け入れる、ということなんですね。

小川キャスター:
思いがあってのアプローチでも、それが逆効果になるということ。

連休明けは「ちょっと学校に行きづらい」

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藤森キャスター:
いま、不登校者数が過去最多になっていますが、連休明けは「ちょっと学校に行きづらい」という子がやはり多いんですよね。

石井しこうさん:
多いですね。この4月に環境が変わり、担任の先生が変わる、席替えがある、いろんなタイミングで環境が変わって行きたくなくなった。あるいは、ずっともう無理して頑張っていた。これが5月の連休明けにどばっと出てきて、不登校の相談を受けているところは、今日の例えば6時ごろから徐々にたくさん電話が入ってきている。

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小川キャスター:
学校に行かない期間が自分にとって居心地がよかったり、楽しかったり、ということがあるんですか。

石井しこうさん:
それもありますが、休みに入ると冷静になり、自分が苦しかったことを思い出すんです。「明日から学校だ」と思うと、ちょうど今日の12時ぐらいにその恐怖感がピークに達します。「明日からまたつらいのが始まる」と思うと、「ジェットコースターが落ちるときと同じだ」と言われていますが、上がってくるときが怖い、落ちてるときよりも上がってくるときに恐怖感が上がるので、“今が一番苦しくなるタイミング”と言われています。

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浜田敬子さん:
行かない間も別に楽なわけじゃないですよね。取材とかで聞いたのは、常にプレッシャーというか、「自分は駄目なんじゃないか」とか、学校に行けない自分を責めてしまうとか、親にどう思われてるのか、というのも結構皆さん気にしていますよね。

石井しこうさん:
私は「心の登校が続く」と言っていますが、本当は心ではずっと登校してるんです。だから休めていない。ずっと行けてない自分を責めてしまう、というのはありますよね。

5月に気を付けたい「子どものサイン」

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藤森キャスター:
特に5月に入って気をつけたい「子どものサイン」があります。

▼連休後に体調不良を訴える
▼学校行事後に登校できなくなった
▼手洗いなどに対してこだわりが強くなった
▼きょうだいやペットなどをいじめる

手洗いなどに対してこだわりが強くなる、というのも危険信号なんですか?

石井しこうさん:
これはコロナ禍以降、すこし増えました。強く言うと強迫神経症が始まってるような感じなんです。手洗いなど、何かこだわりが止められなくなってしまうという感覚です。

小川キャスター:
こうしたサインが現れたとき、どういう対応をしていくのが一つの正解なんでしょうか?

石井しこうさん:
もちろんケースバイケースですが、やはり私は「休ませてあげてほしい」と思います。思いますが、親の立場を思うと、いきなり「休んで」とは言いづらいので、子どもが例えば「行きたくない、苦しい」と訴えたら、まず“生返事で返す”。「ふーん」とか「ほー」とか。

学校に登校できるような、頑張れるような「魔法の言葉」を探してしまいがちですが、そういう言葉は無いので、「生返事で返して子どもの様子を見る」というのが、実戦的にはすごく効きますね。

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浜田敬子さん:
私の友人で子どもが不登校という人が何人かいます。最初は「いいよ休んで」と言いますが、長くなると「どうしていいのか」と親がすごく悩み、実は親が相談に行けない、どこに相談していいかわからない、という声を聞きますが、どうしたらいいですか?

石井しこうさん:
本当は長くなっても大丈夫なんです。昼夜逆転したり、たくさんゲームしたり。でもやはり大丈夫なんです。

「親がどうしたらいいのか」ということを、親自身がどっかと繋がって学ぶ。絶対1人では無理なので。親だけだと追い詰められますし、親自身にすごいプレッシャーが強いです。

浜田敬子さん:
最近、悪質なのは「引き出しビジネス」というのがあります。要は、引きこもりの人を部屋から出してくれる、ビジネスなんです。そこに頼って、さらに子どもがつらい状況になる、という話もありますよね。

やはり、親の会などに入って「情報交換をして『大丈夫』と言われて安心しました」という話を聞きます。

小川キャスター:
「12時になったらピークを迎える」とおっしゃってましたが、子どもの中でもつらい思いをしている人もいるかと思います。石井さんから何かメッセージとして伝えたいことはありますか。

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石井しこうさん:
自分が不登校になったとき、本当に絶望の淵にいました。「これで人生なくなっちゃった」と思いました。あれから30年経ち、不登校の友人もいますし、いっぱい取材してきて、どうなったかっていうと、結構みんな普通のおじさんかおばさんになってるんですよね。

学力と協調性とか、いろいろな事に悩んでいましたが、いま痛風に悩んでます、というのが一番で、だから「ぜひ安心してください」というのは言いたいですね。

浜田敬子さん:
社会との接点をどうやって取り戻したんですか?

石井しこうさん:
私はフリースクールに行ったのが一番大きかったですが、みんなボチボチ社会との接点を持っています。

「登校渋り」「不登校」の対策に「みんなの声」は

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NEWS DIGアプリでは『「登校渋り」や「不登校」の対策』などについて「みんなの声」を募集しました。

Q.「登校渋り」や「不登校」どんな対策が有効?
「子どもの声を聞く」…62.8%
「親が子の生活習慣を見直す」…21.1%
「学校に相談」…4.3%
「医師・カウンセラーに相談」…7.0%
「その他・わからない」…4.8%

※5月6日午後11時20分時点
※統計学的手法に基づく世論調査ではありません
※動画内で紹介したアンケートは7日午前8時で終了しました

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<プロフィール>
石井しこう さん
不登校ジャーナリスト
中学時代から不登校を経験
NPO法人で当事者の取材を行っている

浜田敬子 さん
ジャーナリスト
元「AERA」編集長
元「ビジネスインサイダージャパン」統括編集長

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