暴力団組織に意外な吸収合併の噂広がる 深刻な人手不足と高齢化、子分が飛んだら以前は制裁も今は「"そうか"で終わり」
警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、指定暴力団の世界で大組織が小組織へ吸収合併される噂が広がった背景について。
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10月中旬、ある噂がSNSを通じてヤクザたちの間に広がった。指定暴力団の中でも主要団体と呼ばれる組の傘下組織で、吸収合併が行われるという。大きな組織の傘下に小さな組が入る、小さな組が力のある大きな組織に吸収されるというのはよく聞く話だ。だが、流れてきた噂は違っていた。
噂された組はその組織が強い地域に本部事務所を置き、地域の中でも大きな組織として名の通った組だった。暴力団関係者に「傘下組織のうち、この地域でどこが大きな組なのか」と聞けば、必ず名前が挙がってくる組の1つ。その組が同じ地域に事務所を構える小さな組に吸収されるようだというのだ。同じ傘下組織の中で、小さな組が大きな組を吸収する。暴力団組織として、ありえる話なのかと山口組関係者に尋ねてみた。
一般社会でいえば、大きな会社と小さな会社が合併する場合、大きな会社が存続会社となり、小さな会社が吸収され消滅するのが一般的だ。しかし小さな会社が存続会社となって大きな会社が消滅するという”逆さ合併”というケースも存在する。小さな会社の方が知名度が高い場合や、専門的な技術や特許を持つ場合、節税などの税金対策を行う場合などである。だが暴力団組織に、一般企業と同じような法人としての節税対策が必要とは思えない。
今回の吸収合併で取り沙汰されている2つの組織をみると、あくまで噂の域を出ない話ではあるが、知名度でいえば吸収されるといわれる組の方が名はあり、小さな組に特別なシノギの手法やネタがあるという話も聞かない。なぜ噂話が流れたのか。
「時代の流れかね」と、山口組関係者A氏は一言で言い切った。「名がある組といっても人がいないんでしょう。どこの組も同じような事情を抱えているよ」という。つまりヤクザ業界も人出不足なのだ。
組を辞めるのも容易になった
ネットで”暴力団構成員数”と調べると、千葉県警の資料が真っ先に上がってきた。警察庁の「組織犯罪対悪に関する統計」からの引用だが、見やすくまとめられている。それによると現在の暴力団構成員および準構成員等の数は、2023年度末で約2万400人。2022年度末は約2万2400人と報じられていたから、1年で単純に2000人が減少した。全国の指定暴力団は25団体、そのうち主要団体が約1万4500人と7割を占めている。構成員数に関する統計として残っている1958年以降、最も多かったのは1963年で、構成員数は18万4091人。平成期で最も多かった1991年の約9万1000人からでも8割近い減少で、統計史上最少人数になったという。それだけ減少していれば、人出不足に喘ぐ組が出てくるのも当然の成り行きである。
分裂抗争が起きた山口組など、特定抗争指定暴力団に指定された組では事務所の使用が禁止され、大阪市や神戸市、名古屋市などの警戒区域では組員が5人以上集まれば即逮捕。指定暴力団でも本部事務所が使用制限を受けている組もある。そこにコロナ禍が重なり、緊急事態宣言でどこの組も事務所を閉鎖。稼ぎがなくても今まで事務所に行けば飯を食えていた者、事務所の電話番で食いつないでいた者、雑用をこなして親分や兄貴分らに小遣いをもらっていたような者が食えなくなった。
組員同士が顔を合わせることもなくなり、食べられなくなった組員は飛んだ。昔なら組から勝手に飛んで逃げれば、探し出され連れ戻され、組によっては制裁を受けたというが、「コロナ禍以降、子分の誰かが飛んでもみんな”そうか”で終わり。よほどのことがなければ、逃げたヤツをわざわざ探すようなことも今はない」と話すA氏は、「飛ばなくても、若い者が組を辞めるのも容易になった」という。警察による暴力団撲滅の動きの中、ますます厳しくなる規制を受けて若い子分たちは辞めていき、「組はますます高齢化。親分たちも顔を合わせれば、話題は病気と健康のことばかり」と苦笑いを見せた。
「映画館でヤクザ映画を見た後、誰もが帰り道には肩で風を切って歩いたような時代は遠い昔。今やヤクザは憧れの対象でも何でもない。ヤクザになっても得なことは一つもないから、若い者はこっちにはこない」(A氏)。多くの組で組員が減り続けているのが現状だという。
「山口組もそんなところばかりですよ」とA氏はタバコに火を点けた。
11/17 16:15
NEWSポストセブン