【増加する孤独死】“生涯未婚率の上昇”“熟年離婚の増加”の影響 高齢者と社会との接点の少なさも後押し

「孤独死」は決して他人事ではない(写真/PIXTA)

 最期の瞬間をどう迎えるかは、人生100年時代になってさらに複雑なテーマになっている。病院か自宅か、延命治療をするかしないか、そして家族や友人に見守られながら逝くのか、たった独りで旅立つのか──家族の形が変わる中で、「孤独死」は決して他人事ではない。誰にも迷惑をかけず、誇りを持って旅立つ。その潔い死のためにできることを考えたい。【全4回の第1回】

【図表】年齢別の孤独死の人数

 これまでベールに包まれていた実態がついに明らかになった。警察庁が5月に初めて出した統計によると、今年1〜3月にひとり暮らしの自宅で亡くなった65才以上の高齢者はおよそ1万7000人。このままのペースで推移すると、独居状態で死亡する高齢者は年間約6万8000人になると推計される。

 同庁によると、1〜3月に自宅で死亡したひとり暮らし(全年代)は2万1716人(暫定値)で、うち約8割を65才以上が占めたことになる。超高齢社会の形成とともに増加が予見される孤独死への危惧が、数字で裏付けられたといえる。いまや孤独死で最期を迎えることは決して珍しいケースではないのだ。そうであるならば、最期のときに向けて備えておくべきことはなんだろう。

生涯未婚率や熟年離婚は年々増加し60〜70代の女性は“孤独死予備軍”に

《誰にも看取られることなく息を引き取り、その後、相当期間放置されるような悲惨な「孤立死(孤独死)」の事例が頻繁に報道されている》

 内閣府が発表する「高齢社会白書」(2022年版)にはそう記されている。孤独死に確定した定義や全国統計はないが、東京都監察医務院が公表するデータによれば、23区内におけるひとり暮らしの65才以上の自宅での死亡者数は2003年の1441人から2020年は4207人と約3倍に増えたとされる。さらに白書はこう続く。

《死後、長期間放置されるような悲惨な孤立死は、人間の尊厳を損なうものであり、また、死者の親族、近隣住人や家主などにとって心理的な衝撃や経済的な負担を与える。孤立死を、生存中の孤立状態が死によって表面化したものとしてとらえ、生きている間の孤立状態への対応を迫る問題として受け止めることが必要である》

“人間の尊厳を損なう”とまで言わしめる孤独死増加の背景に何があるのか。社会保障政策に詳しい淑徳大学総合福祉学部教授の結城康博さんが語る。

「まず年齢は孤独死の7〜8割が60才以上で、統計的に男性が多い。女性は男性より長生きするのに男性が多いのは、男性は生涯未婚率が女性より高く、離婚後に家族と離れてひとりで暮らす人も多く、単身世帯が増加したことが一因でしょう。家族のありかたが変化し、人と人のつながりが希薄化したこともひとつの要因です」

 いまは統計上、男性の孤独死が多いが、これからは女性も増えていくと結城さんは予想する。

「現在、女性の生涯未婚率や熟年離婚が増えています。加えて、今後は夫と死別し、子供も独立してひとり暮らしになる女性が増えるでしょう。いま60〜70代の女性は、“孤独死予備軍”と言えるかもしれません」(結城さん)

 孤独死をテーマにした『死に方がわからない』の著者で、文筆家の門賀美央子さんは「高齢者の社会的孤立」も大きいと語る。

「孤独死が増えている最大の理由は高齢者と社会の接点が少なくなったことです。従来のように家族と一緒ではなく、単身で暮らす高齢者が増える中、ご近所や友人知人などとの交流が少なくなった。これまで受け皿として機能していた地域社会の役割が希薄になって高齢者の社会的な孤立が進んだことが、孤独死の増加を後押ししています」

 結城さんは高齢者だけでなく、中高年も孤立化が進んでいると指摘する。

「ひと昔前は会社を無断欠勤したら『何かあったのでは』と同僚が心配して家を訪ねましたが、いまの40〜60代は契約社員や派遣社員など非正規社員が増え、横のつながりがなく無断欠勤しても放置されがちです。他方、正社員もテレワークやフレックス制で社内の人間関係が希薄化して、突然自宅で体調が悪くなったとき、誰にも気づかれず亡くなるリスクが増しています」

第2回へ続く)

※女性セブン2024年6月27日号

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