「大阪市は本気で万博を開催する気があるのか」渦巻く懸念 市内路上での禁煙決定も喫煙所設置は民間にカネをばら撒くテンヤワンヤ

建設途中の木造屋根(2024年1月時点)

 2025年4月に開催予定の日本国際博覧会「大阪・関西万博」まで、あと1年を切った。

【写真】会場建設の様子ほか、近未来を予感させるパビリオンのイメージ画像など

 刻一刻と迫る会期にもかかわらず、建設予定は遅れに遅れ、海外パビリオンに至ってはまさかの「間に合わない」懸念も報じられている。一方で当初1250億円と見積もられた建設費は最大2350億円 にまで膨れ上がっているといい、各所から万博開催への懸念点は噴出するばかりだ。地に足のついていない施策も多く、「そもそも開催する必要があるのか」と、その是非さえ問われている。

 例えば、今回の万博のシンボルとして建設が進められているリング状の木造建築物「大屋根」。完成すれば世界最大の木造建築となる。約344億円と高額な建設費用をかけるが、万博後の活用方法は定まっておらず、ただの廃墟を増やすだけとなる可能性がある。

 また、会場に用意する40カ所のトイレのうち8カ所は、「デザイナーズトイレ 」だ。しかもそのうち便器数が50~60個という2カ所の大規模な公衆トイレはそれぞれ建設費用が2億円。「高すぎる」と物議を醸している。

 クリーンでおしゃれなイメージを打ち出したい理想があるようだが、迷走しているように見える大阪市。そうした懸念点が浮上するなか、大阪市は環境整備の一環として、万博開催に合わせて市内全域の公道や公有地での路上喫煙禁止も検討していることはまだ知られていない。

大阪市内の喫煙所「120カ所あれば足りる」根拠

 世間では禁煙・分煙化の流れが強いとはいえ、大阪市のように規模の大きい自治体が市内を「全面禁煙」にするのは初の試みだ。

 市では2007年に市路上喫煙防止条例を制定。御堂筋沿いで路上喫煙禁止区域をスタート。その後、段階的に対象エリアを増やしてきたが、喫煙禁止と可能な区域の境目がわかりにくいという指摘は絶えなかった。そうした背景のなかで2022年4月に当時の松井一郎市長が「市内全面禁煙」の方針を示したのだ。

 市内の路上を全面禁煙にするのであれば、喫煙所の設置が急務になる。 “喫煙者を締め出すと、かえって路上にポイ捨てが増える”という事例は枚挙にいとまがないためだ。さらに喫煙所の「数」も検討しなくてはならない。

 市は、喫煙所の数について「120カ所あれば必要数を満たす」との見解を示しているが、その数の根拠や整備状況について、大阪市環境局に話を聞いた。

「大阪市の昼間人口は308万7000人です。そのうち健康増進計画『すこやか大阪21計画』より喫煙者数を算出すると63万人 。また、市が喫煙者を対象に “よく喫煙する場所”を調査したところ、『路上』『公園・広場』と選択した割合は21.4%でした。

 つまり、喫煙所がない場所で吸っている人たちは63万人のうち約2割=13万5000人ということになります」(大阪市環境局、以下同)

 市が「数」を算出する基準としたのは、2022年8月31日に1400万円かけて設置した堂島公園内の閉鎖型喫煙所(約13平方メートル)だという。公園内というものの、設置されているのは川沿いで周囲には何も無いエリアである。

「喫煙所の設置に必要な面積は、喫煙者一人当たりにつき1.2平方メートルを目安としています。市の調査結果から平均喫煙時間を4分、1日に2回利用した場合、11人の定員なら1日14時間稼働の計算で述べ2310人が利用可能。算出した、“喫煙所がない状態で吸っている人たち”の数である13万5000人×2(回)÷2310=116.8ということで、120カ所があれば足りるという計算です。この数を2025年1月までに設置することを目標にしています」

慌てて民間に丸投げ「補助金あげるから作って」

 市では20カ所の民間喫煙所を改修し、合計140カ所を目指すとしているが、大阪の商店街連盟 によると、最低367カ所の喫煙所が必要であるとの試算も出ており、足りるのかという懸念が指摘されている。「少ないのでは」という声については担当者も認識しているようで、「必要であればフォローしていく」とのこと。

 さて、市の設置はどのくらい進んでいるのか。

 実は市が新設するとした120カ所の目標に対し、「新しく設置が完了した」という発表はいまだなし。

 これでは間に合わないと、市は4月10日になり、これまでの”喫煙所の面積はおおむね5平方メートル以上”という面積要件を撤廃したうえで、喫煙所を作ってくれる民間事業者を大募集し始めた。新たに喫煙所を設ける場合、地上は1000万円、地下は2000万円まで、また既存の喫煙所を改修する場合は300万円を限度に、それぞれ補助金を出す。もうどんな形でもいいから数を間に合わせようという算段だろうが、テンヤワンヤ感しかない。
 
 なお禁止区域における路上喫煙は過料1000円を徴収することで、取り締まりを強化する予定。担当者は「指導体制を強化し、広範囲をパトロールしながら喫煙所の場所も案内することで、正しく喫煙できる環境を作る予定です」と言うが、喫煙所の数が間に合っていないのに、パトロール人員だけが路上で目を光らせていることになったら……。

 パビリオンは間に合わず、トイレにはムダなお金がかかり、喫煙所にも手が回らずにお金をばら撒いて民間に助けを求める始末。大混乱の様相を呈している大阪・関西万博だが、果たして1年後はどうなっているのか。

<撮影・文/白紙 緑>

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