【有森裕子の本音】東京五輪パラは山本寛斎さんの精神受け継ぐ大会に

有森裕子

 ファッションデザイナーとして世界的に知られる山本寛斎さんが、急性骨髄性白血病のため亡くなったことが先日、発表されました。突然の訃報に驚くと共に、「日本にとって、なくてはならない人を亡くしてしまった」という思いでいます。

 寛斎さん総指揮のもと行われたイベント「日本元気プロジェクト2015スーパーエネルギー!~元気とLOVEを浴びてくれ~」にお声がけをいただき、出演したことがあります。「ファッション業界をアスリートを使って表現したい」と話され、両脇を観客に囲まれた中、100メートルくらいの距離を寛斎さんのデザインした服を着て走りました。

 その時におっしゃった「人間は走るだけでも感動するんだよ」という言葉に「アスリートの持つ精神と波長が合うんだな」と感じたことを覚えています。底知れぬエネルギーを求めると同時に、自らもエネルギーを放たれていた。勝手な例えですが「(芸術家の)岡本太郎のファッション版」みたいな感じでしょうか。

 寛斎さんとはその後も何度かご一緒する機会があり、ご本人が講師を務めたオープンカレッジの講義を聴かせていただいたこともありました。一つ一つの言葉や表情から湧き出るエネルギーを感じながら、今何か自分に足りないもの、忘れているものを突きつけられ、自然と涙を流しながらいた自分を今でも思い出します。

 私は以前から、アートとスポーツ、音楽は人間に不可欠というのが持論です。消してはいけないエネルギー、人間の内なる部分を育むのに必要なものなのです。寛斎さんも同じ考え方をお持ちだったのではないかと思います。来年に延期された東京五輪・パラリンピックが開催されるのであれば、その時には寛斎さんの精神を受け継ぎ、選手だけでなく国民全員がエネルギーを感じ、受け取れるような大会になればと思います。(女子マラソン五輪メダリスト)

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