欧州はなぜ「死刑廃止」を受け入れた? 独ジャーナリスト「人間は間違える」と訴え

会見するヘルムート・オルトナーさん

世界的に死刑を廃止していく傾向にある中、日本では死刑が執行され続けている。

アムネスティ・インターナショナルの調査(2017年)によれば、2017年末の時点ですべての犯罪に対して死刑を廃止している国は106カ国(1998年は70カ国)。事実上、死刑を廃止している国もあわせれば142カ国になる。

長年、死刑の問題に取り組んでいるドイツ人のジャーナリスト、ヘルムート・オルトナーさんは日本の現状を問題視。2月28日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見し、「日本でも死刑廃止に向けた啓蒙のキャンペーンが必要」と訴えた。

●「司法の誤りは決して稀なことではない」

なぜ、死刑を廃止すべきなのだろうか。

主要な論拠として、オルトナーさんは(1)非人道的で相手に屈辱を与えるおそるべき刑罰である、(2)死刑による犯罪抑止力が証明されていない、(3)まちがえることがある人間によって死刑がおこなわれている、の3つをあげる。そのうえで、会見で次のように述べた。

「死刑は残虐な刑罰です。今でも断首、銃殺、電気椅子、薬物注射、ロープを使った絞首などさまざまな手段による死刑がおこなわれています。

また、人間はまちがえることがある存在です。つまり、誤審の可能性があります。無実の人が処刑されてしまうおそれがあるのです。司法の誤りは決して稀なことではありません。

法のシステムを担うのは、結局のところ人間です。主観的な判断が入ってしまうこともあります。そして、この主観的な判断も外的な要因によって影響を受けることがあります」

●「問われているのは、法治国家の質」

日本でおこなわれた直近の世論調査(2014年)によると、「死刑もやむを得ない」と答えた人の割合は80.3%。「死刑は廃止すべきである」と答えた人の割合はわずか9.7%にとどまる。

一方、ヨーロッパでは、最高刑が終身刑であることを多くの人が受け入れているのだという。

「ヨーロッパでも、テロや小さな子どもに対する性犯罪について世論調査をすると、多くの人から『死刑にすべき』『贖罪が大切』という声は出ます。

しかし、この考え方をそのまま司法に持ち込むことは望ましくないと人々は考えています。問われているのは法治国家の質です。

どの裁判でも、司法に関わる人は総合的に考える必要があります。被害者からみれば、もちろん応報や贖罪の観点も重要ですが、一般予防や社会復帰などの観点も考慮しなければなりません」(オルトナーさん)

●「仮釈放のない終身刑」も1つの選択肢

死刑が廃止された場合、問題となるのは死刑にかわる刑罰だ。死刑廃止を訴え続けている日弁連は、代替刑として「仮釈放のない終身刑」などをあげている。

オルトナーさんは、さまざまな観点から、最高刑として20年の拘禁刑が望ましいとの考えだ。

「被害者やご遺族は、応報の観点から厳しい刑罰を望むでしょう。被害や応報の観点を参酌すると、厳しい刑罰が必要になるので、仮釈放のない終身刑も1つの選択肢ではあります。

『目には目を。歯には歯を』という考え方は今でも残っています。ただ、司法の判断においては、段階をつけて、それを均衡するような形で考えていく必要があります」

●「死刑廃止への法のイニシアティブを発揮すべき」

2020年には東京オリンピック・パラリンピックのほか、国連犯罪防止刑事司法会議(コングレス)が京都で開催される。死刑を廃止すべきという国際的な「圧力」が高まる中、日本の状況に変化の兆しがみえないことにオルトナーさんは警鐘を鳴らす。

「必要なことは、社会にシグナルを発することです。今こそ人権活動家、刑法学者らがいっせいに立ち上がり、死刑に対する考え方を変え、死刑廃止への法のイニシアティブを発揮すべく貢献しなくてはなりません」

オルトナーさんは2日におこなわれるシンポジウム「死刑、いま命にどう向き合うか~京都コングレス2020に向けて~」(日弁連・京都弁護士会が主催)などに登壇するため来日。著書は日本でも翻訳され、『国家が人を殺すとき 死刑を廃止すべき理由』(訳・須藤正美、日本評論社)が2月、出版されている。

(弁護士ドットコムニュース)

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