感染者が出て職場が閉鎖し給料が激減。シェアハウスも追い出され〈ルポ・コロナで女性が直面する収入減・雇い止め・DV〉

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新型コロナウイルスが猛威を振るい始めてそろそろ1年が経つが、社会の片隅で困窮を極めている女性たちがいる。「病や感染は平等」でも、その暮らしへの影響はけっして同じではない。新しい道を模索する彼女たちの選択を追った。最終回は住むところを失い、路上生活せざるをえない状況に陥った女性に実情をきいた(取材・文=樋田敦子)

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雇い止めで家賃が払えず路上生活に

2020年3月、反貧困ネットワークなど、貧困層を支援している42団体が連携して「新型コロナ災害緊急アクション」が結成された。事務局長の瀬戸大作さんのもとには、「所持金がない」など、SOSのメールや電話が連日ひっきりなしに入ってくる。ネットカフェを追い出され路上に出てきた相談者は行き場がなく、「死にたくなくても死んでしまう」と切羽詰まった状態だ。

「収入の激減や雇い止めで家賃や住宅ローンを払えない、会社の寮を追い出された、電気やガスを止められたといったケースが急増することは、緊急事態宣言前から予想されていました」

そこで「緊急ささえあい基金」を作り、公的支援が受けられるまで、基金から宿泊費や生活費を代わりに支払っている。基金に寄せられた寄付は、約9500万円。相談者からのSOSで、相談者が待つ場所に行き、緊急宿泊費と生活費を直接手渡しで給付する。総給付金額は3700万円、約2000件で、瀬戸さんが対応したケースだけでも200件以上を数える。

「4月にネットカフェが休業したため、20~40代の比較的若い非正規雇用者からの相談が中心です。その2割強が女性。家族から虐待を受けている人、家賃が払えず、ペットの犬と追い出された人もいました」

相談者は、基金から渡されたお金で一息ついた後は、瀬戸さんらNPOの支援者が同行して生活保護を申請。コロナ禍による申請件数の増加にともない、生活保護の受給希望者を行政の窓口で追い返す《水際作戦》をとる自治体も。それでも粘り強く交渉し、アパート転居まで見届ける。

「生存権は公に認められた権利です。フードバンクの食料を渡して、これで2週間食いつなげという乱暴な自治体もあり、現場はかなり混乱しています」

貧困は自己責任ではない

「甘いものを食べるなんて、久しぶり」

田中公子さん(39歳・仮名)は、待ち合わせをしたファミレスでうれしそうにパンケーキを頼んだ。神奈川県の港近くの公園で、10日間ほど路上生活を送り、所持金50円になったところで支援につながった。

20年5月7日、田中さんは、それまで住んでいたシェアハウスから一方的に追い出された。4.2畳、光熱費込みで4万5800円の部屋は、突然鍵が替えられ入室できない状態に。収入が減り、1ヵ月分の家賃を滞納していたからだ。

田中さんは夫の精神的DVから逃れるため、19年に神奈川県にやってきた。携帯電話会社のコールセンターの契約社員として働き、初期費用の少ないシェアハウスで生活していた。ところが4月、勤務先に感染者が出て、事務所は閉鎖。従業員は2チームに分かれて、隔週勤務に。時給換算の給料は、減額のうえ遅配になった。そして4月分の家賃を滞納した。

「会社での感染も怖かった。家に荷物を置いたまま締め出され、財布と携帯だけ持って友人の家に滞在しましたが、それも3日が限度。そこから路上生活になりました」

「私はこのまま、死ぬんだろうな」

入浴できないのでにおいも気になり、再開された会社にも行けなかった。コンビニで小さな菓子パンが5個入っている袋を100円で購入。それを1日1個食べた。しかし3000円の所持金は間もなく尽きる。空腹を抱え、「私はこのまま、この公園で死ぬんだろうな」と思った。

携帯の充電がなくなりかけたとき、意を決して相談ダイヤルに連絡すると弁護士とつながり、瀬戸さんに取り次がれた。5月18日、すぐさま1週間分の生活費と宿泊代4万5000円(返済不要の一時金)を渡され、やっと落ち着きを取り戻した。その後、生活保護を申請したところ、6月初めに受給が決定しアパートに移った。

現在は家賃5万4300円のアパートで一人暮らし。支給される生活扶助費で光熱費、食費、携帯代などを払うと、わずかしか残らない。ケースワーカーの勧めで心療内科を受診したところ、複雑な生い立ちが原因のPTSDと診断された。父から虐待を受け、中卒の16歳で家出。人の何倍も働いて子ども2人を育て、1人は独立、1人は元夫のところにいる。働き詰めだったので、静養するように医師から言われている。

「生活保護は受けたくなかったけれど、コロナの影響で雇用が不安定になったので仕方なかった。でも離婚して置いてきた子どもたちへ月に10万円以上送金してきたので貯金ができなかった。やりくりが下手だったのです」

田中さんは自己責任と言うが、貧困は自己責任ではない。低賃金で不安定な仕事を強いられても、生活保護受給は恥ずかしいと支援につながれなかった結果なのだ。

9月末、田中さんは就職して収入を得たため、生活保護費も減額。生活保護からの脱出の日は近い。

雇用、DV。コロナ禍は、私たちが住む社会に潜んでいた歪みを顕在化させた。さらなる感染拡大も憂慮されるなかで、大きな選択をせざるをえなかった彼女たち。困窮する女性たちが孤立することなく、早めの支援につながる社会でなければいけない。


ルポ・女性が直面する収入減・雇い止め・DV 社会の歪みをコロナがあぶり出した
【1】資格があるから再就職も簡単だと思っていたけれど
【2】DV被害でシェルターに逃げ込んだ後、コロナ禍拡大
【3】感染者が出て職場が閉鎖し給料が激減。シェアハウスも追い出され


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