【書評】市井の建築家が考える理想の家とは ~『見たことのない普通のたてものを求めて』

『見たことのない普通のたてものを求めて』著:宇野友明

市井の建築家が考える理想の家とは

普通のたてものって、なんだろう。「ありふれている」という意味なら、わが町など、平成初期に大流行した画一的な建売住宅ばかりで個性がない。でも、著者がいう「普通」はこれではないのだろう。

読んでみると、著者は市井の住宅をつくっている建築家だった。左官業を継いでほしいと思っている父親の期待を受け止められず、しかし完全に裏切ることもできず大学で建築を学び、就職。会社所属の一級建築士となる。

しかし幼いころ見た光景が忘れられない。父の働く現場では、建築士はみな横柄な態度で、命令口調だった。そのイメージをピエロにたとえる著者は、建築士だが心は職人の側にある。

職人の目で住宅建築の現場を見れば、あれこれの矛盾や欠点が見える。そこで会社をやめ、個人で仕事を始めた。目の前に現れたものを受け止め、欲張らずに進む。

現代の高額商品としての住宅を見れば、アイデアやコンセプトを表現することに必死で、〈新人タレントを売り出すかのようなキャッチフレーズ〉が躍る。しかし〈そのほとんどはポンコツ住宅である〉。住む人が健康で幸せに暮らせてこその建築であるという点が忘れられている。この問題をなんとかしようとしている著者の、現場報告のような本である。

また、職人たちの働きぶりや高い技能を書き記すことも、この本の役割のひとつ。やがて見事に育つように、住宅完成時にはむしろ寂しい庭をつくる庭師。完成した住宅では見えなくなる部分のコンクリートを、徹夜仕事で見守り手を加える左官工。決して「できない」と言わない大工。彼らの存在が頼もしく描かれ、住宅建築の魅力と可能性を伝えている。

『見たことのない普通のたてものを求めて』
著◎宇野友明
幻冬舎メディアコンサルティング 1900円

ジャンルで探す