人口減少が進む日本で今後も公共サービスを維持していくことは可能なのか?

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日本の急激な人口減少は深刻な状況です。厚生労働省が公表した人口動態統計の数値では、2023年に生まれた出生数は過去最少の75万8631人。合計特殊出生率も1.20、東京に至っては0.99と、統計を取り始めて以来、最も低い数値となっています。

民間の有識者グループ「人口戦略会議」が4月に発表したレポートによると、2050年までに全体の4割にあたる744の自治体が消滅する可能性があるといいます。このような状況の中、今後、公共サービスを維持していくことはできるのでしょうか。(文:林 雅之)

急激な人口減少と少子高齢化

内閣府は2月に「デジタル行財政改革会議(第4回)」を開催し、急激な人口減少と少子高齢化が進む中での公共サービスの持続可能性について議論しています。その内容をご紹介します。

日本の総人口は1億2808万人だった2008年をピークに減少に転じました。2050年には約1億469万人になると予測されています。15歳から64歳までの生産年齢人口については、2022年の7421万人から2050年には5540万人になり、25%減少する見込みです。

今後は少子化対策を進めつつも、生産年齢人口が減っていく中でいかに社会を維持していくのか、対策を講じる必要があります。

出典:デジタル行財政改革会議(第4回) 2024.2

2050年の予測を都道府県別に見ると、首都圏をはじめとした都市部では、生産年齢人口の減少は限定的ですが、一方で高齢者人口が著しく増加する見込みです。急増する高齢者に対応した公共サービスの構築が急務となっています。

地方部については生産年齢人口・高齢者人口ともに加速度的に減少。コミュニティ全体の存続も難しいケースが出てくると見られています。

出典:デジタル行財政改革会議(第4回) 2024.2

公共サービスの担い手、どのくらい不足するのか?

では、そうした中でどう公共サービスを維持していけばいいのでしょうか。

地方公共団体の職員数は業務の効率化によって以前から減少傾向にあります。ピークだった1994年の328万人から2022年は280万人まで減りました。今後もデジタル化によって、さらなる業務効率を進めたいところですが、DX関係を担当する職員が3名以下の自治体は55%にものぼり、課題になっています。

出典:デジタル行財政改革会議(第4回) 2024.2

公共サービスの担い手不足も顕在化しています。教育分野では、公立小学校の教員採用試験の受験者数・倍率がともに低下傾向にあります。

交通分野では担い手の減少に加えて高齢化が進行。タクシー運転手の平均年齢は60.7歳と全産業の中でも極めて高いです。

介護分野では高齢者人口の増加に伴う需要の急増により、今後20年間で約69万人の人材不足が生じる見通しです。

出典:デジタル行財政改革会議(第4回) 2024.2

自治体の人口規模が小さくなると、生活に必要なサービス施設も運営を続けられず、撤退する可能性が出てきます。例えば人口が1万人を切ると、総合スーパー、病院、有料老人ホームなどが立地している確率が50%を切る、との見立てもあります。

出典:デジタル行財政改革会議(第4回) 2024.2

デジタルでこの課題に対応できる?

こうした状況を踏まえて、デジタル行財政改革は基本的な考え方を次のように示しています。

1.地域を支える公共サービスに関し、システムの統一・共通化等で現場負担を減らすとともに、デジタルの力も活用してサービスの質も向上。
2.あわせて、デジタル活用を阻害している規制・制度の徹底的な見直しを進め、社会変革を起動 。
3.EBPM(※編注 エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング。 証拠に基づく政策立案)の手法も活用し、KPIや政策効果の「見える化」を進め、予算事業を不断に見直し、これらによって、デジタルの力を活用して、豊かな社会・経済、持続可能な行財政基盤等を確立する。

こうした方針のもと一人ひとりの可能性を引き出し、 新たな価値と多様な選択肢が生まれる豊かな社会、及びデジタルの恩恵がどこでも実感できる社会を目指していくとしています。

こういった政府の取り組みで、今後日本は公共サービスを維持していけるのでしょうか。国だけでなく民間でも、これまでの常識にとらわれない発想で、人口減少や高齢化を前提としたコンパクトな街づくり、そして利用者視点でのDXなどに取り組んでいくことが求められています。

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