「政治とカネ、追い続ける」 自民党派閥の裏金問題報道に新聞協会賞

第77回新聞大会では、新聞社の幹部や識者らが「新聞は生き残れるか」などをテーマに議論した=秋田市

 第77回新聞大会(日本新聞協会主催)が16日、秋田市で開かれた。今年度の新聞協会賞の授賞式があり、朝日新聞社の「自民党派閥の裏金問題をめぐる一連のスクープと関連報道」など計6件が新聞協会賞、他の新聞社にも汎用(はんよう)できる本社と北海道新聞社、富士通が共同開発した「統合編集システム(愛称marche(マルシェ))」が新聞技術賞として表彰された。

 朝日新聞は、自民最大派閥の安倍派が政治資金パーティー収入を裏金化して所属議員に還流していた疑いを、昨年12月1日付の朝刊で特報した。東京本社社会部の板橋洋佳次長は「埋もれたファクトをつかみとる力を磨き、政治とカネの問題を追い続けていきたい」とあいさつした。

 統合編集システムは4年の開発期間を経て今春、朝日、道新でそれぞれ稼働した。本社統合編集システムプロジェクトの黒田周作サブマネジャーは「紙にもデジタルにもコンテンツをスムーズに発信できるシステムを完成させた」と話した。

 新聞協会賞の他の受賞作は、中日新聞社の「福祉事業会社『恵』の不正に関するスクープ」など。新聞経営賞は西日本新聞社の脳活新聞プロジェクトが受賞した。

 新聞社の幹部や識者による座談会では、コーディネーター役の中村史郎・日本新聞協会会長(朝日新聞社会長)が、デジタル、AI時代における新聞の役割や、強みをどのように発揮すればよいかと質問。鈴木秀美・慶応大教授は「ぱっと見てニュースバリューがわかる新聞の一覧性のよさを、もっと知らせるべきだ」としつつ、苦情を業界横断で受け付けるドイツの仕組みを紹介し、「読者の声を聞く姿勢」がますます大事になると強調した。社会起業家のたかまつななさんは「主権者教育を担ってほしい。市民と政治の距離を近くするのは新聞社だからできること」と述べた。

■第77回新聞大会決議

 人々の命や暮らしを守るのは、時間と労力をかけた取材に基づく確かな報道である。SNSが情報流通の主流となるなか、偽情報や誤情報、詐欺広告が社会的な問題となっている。元日に起きた能登半島地震でも、悪意あるものを含む不確かな情報が拡散し、救助や支援活動の妨げとなる憂うべき事態も生じた。

 生成AIはこうした問題に拍車をかけかねない。文脈を無視して組み合わされた無責任な情報の流布により、社会にさらなる混乱を招く恐れもある。また、知的財産権を軽視した生成AI事業により、報道活動の経済サイクルが損なわれ、良質なコンテンツの制作が難しくなることが懸念される。

 日本では総選挙が行われ、米国をはじめ各国で政権選択の選挙が相次いでいる。ウクライナ、中東では戦闘が続いている。平和で豊かな未来に向け、私たちは正確で信頼される情報を届ける責務を改めて自覚し、全うすることを誓う。

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