潜水艦建造は川重含め2社のみ 裏金、業界は「濃くて狭い人間関係」

川崎重工業神戸工場=2024年7月4日午後、神戸市中央区、朝日放送テレビヘリから、白井伸洋撮影

 海上自衛隊の潜水艦を受注する川崎重工業(本社・神戸市)が潜水艦の乗組員らに対し、下請け業者との架空取引で捻出した裏金を使って物品供与や飲食代の負担などをしていた疑いが浮上している。同社、自衛隊とも実態調査を進めているが、「潜水艦業界」はそもそも、極めて独特な世界だという。

 海上自衛隊が保有する潜水艦は、任務用22隻のほか、練習潜水艦2隻、試験潜水艦1隻の計25隻。潜水艦隊は司令部(神奈川県横須賀市)のほか、横須賀基地と呉基地(広島県呉市)を拠点とする。

 海上自衛隊約4万5千人のうち、潜水艦隊は約2300人。その乗員は、閉鎖空間のストレス耐性などいくつもの適性検査を経て選ばれ、「ドルフィンバッジ」を胸につけるエリート集団だ。

 多くの潜水艦乗員は、司令部、横須賀、呉の3拠点を中心とした転勤を繰り返す。「顔見知りが多く、濃くて狭い人間関係が築かれる世界」(潜水艦乗員)でもある。

 潜水艦を造るメーカー側の状況も、特殊さが際立っている。

 日本で潜水艦を建造できるのは、川崎重工業(川重)と三菱重工業(三菱重工)の2社のみ。防衛省は毎年度、1隻ずつ潜水艦を発注し、2社は隔年で交互に建造している。

 潜水艦の設計・建造は「最新の技術、秘密、ノウハウの塊」(防衛省幹部)。定期的な受注を続け、技術を継承させることなどが理由だ。

 他業者が参入することもなく、価格競争もない、「良くも悪くも、2社による秩序化された業界」(海自幹部)。これが、日本の潜水艦建造の実態だ。

 今後も旧型艦から順次退役していくことから、防衛省はそれを補完する形で年に1隻の建造ペースで調達していくとみられる。

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