ママ友同士で話題「すごいね葛飾」…区立小中の給食費無償化の方針、他の区は慎重姿勢

(写真:読売新聞)

 区立小中学校の給食費を完全無償化するという東京都葛飾区の方針が波紋を広げている。23区初の取り組みで保護者は歓迎一色だが、残る22区で無償化を検討中なのは4区にとどまる。毎年、莫大(ばくだい)な費用が必要になる上、「一度始めたら、途中でやめるわけにはいかなくなる」(区長のひとり)ためで、各区とも慎重な対応を余儀なくされているようだ。

■トップダウン

 「家計が助かる。浮いたお金で塾に行かせたい」。葛飾区立小中学校に3人の子どもを通わせる主婦(39)が声を弾ませた。区の補助制度で第3子の給食費は今も無料だが、残る2人に毎月計約1万円がかかっているという。この主婦は「ママ友同士でも『葛飾はすごいね』と話題になっている」と話す。

 葛飾区の青木克徳区長は7日、来年度からの完全無償化を目指す考えを表明した。ウクライナ危機などに伴う食材価格の高騰を理由に挙げている。

 学校給食法では、調理職員の人件費を含む運営費は自治体が負担し、食材費は保護者が支払うと定めている。ただ、文部科学省は「あくまで原則」としており、自治体が食材費を負担することは可能だという。

 導入後、区の負担は毎年17億円ほどに上る見通しだが、青木区長は「子育て負担の軽減が区の最重要課題だ」と強調。踏み込んだ支援策が必要と判断した。

■高いハードル

 読売新聞が葛飾区を除く22区に取材したところ、12区が「現時点で無償化は考えていない」と回答した。多くの区が過大な財政負担を挙げている。

 墨田区の場合、無償化には年間約7億8000万円がかかるという。区教育委員会の西村克己・学務課長は、「教育予算から数百万円を捻出するのも大変なのに、数億円単位となればハードルはかなり高い」と語る。

 物価高を受けて小中学校に補助金を支給している豊島区も、完全無償化には毎年約5億8000万円がかかると試算する。区教委の星野良・学務課長は「一時的な措置ならともかく、無償化を続けることには懸念がある」と打ち明ける。

 7月から食材高騰分の補助を始めた新宿区も「すでに物価上昇には対応をしている」としている。

■「国費」求める声も

 これに対し、中央、世田谷、杉並、江戸川の4区は「検討している」と回答した。ただ、こちらも早急な実現は厳しいようだ。

 6月の杉並区長選で初当選した岸本聡子区長は、選挙戦で給食費の完全無償化を公約に掲げた。ただ、区教委の松下美穂子・学務課長は「毎年16億~17億円が必要で、教育費の1割にあたる」とし、「校舎の建て替え予算などが削減される事態は避けたい」と語る。

 世田谷区は一部の世帯を対象に無償化制度を導入しており、年間7億円を投入している。全世帯を対象とするには追加で約20億円がかかるといい、保坂展人区長も20日の区議会で「安定的な財源確保が課題。早いタイミングで判断したい」と述べるにとどめた。

 「バラマキにつながりかねない」という意見も根強い。23区の区長でつくる特別区長会の会長を務める江東区の山崎孝明区長は「一つの区が始めると、残りの区には『なぜやらないんだ』という批判が殺到する」と明かし、無償化については「将来を見越して慎重に考えなければいけない。国費でまかなうことも検討すべきだ」と指摘する。

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