紫陽花(アジサイ)の花色が違う意外な理由とは? 土が関係するの?

日本の初夏を代表する花、アジサイの時季がやってきました。

ウェザーニュースでアジサイの開花状況についてアンケート調査を実施したところ、九州での開花が一番進んでいて、約7割が「2、3輪以上咲いている」と回答しています。

関東、東海、近畿、四国でも半数近くが「2、3輪以上咲いている」と回答していて、これから本格的な見頃を迎えそうです。

雨がちな季節に私たちの心を癒してくれるアジサイには、紫やピンク、白など様々な花の色があります。

姿形は同じように見えるアジサイの花色がそれぞれ異なっているのはなぜなのでしょうか。意外と知られていないその理由について、公益財団法人日本花の会研究員の小山徹(こやま・とおる)さんに伺いました。

アジサイ花色は土壌の酸度(pH、ペーハー)により変わる

アジサイには様々な色合いの花がありますが、どんな理由で異なった色を咲かせるのでしょうか。

「アジサイの花色は品種の特性やそのほかの要素によっても変わりますが、一般的には同じ品種でも咲いている場所の土壌の酸度の違いによって、花色を変えるのです。

アジサイの花色は、本来赤みがかったピンク色をしています。ところが、酸性の土壌では青みが強くなり、アルカリ性の土壌ではより赤みが強くなるといわれています。

この変化は、アジサイの花に含まれる天然色素のアントシアニンと、土壌に含まれるアルミニウムとの化学反応によるものです。

アントシアニンは通常赤色ですが、酸性の土壌から溶け出してきたアルミニウムと反応すると、青色に変化します。従って、アルミニウムをたくさん吸収したアジサイは青みが強く、吸収しなかったものは赤みが強くなるのです」(小山さん)

土壌の酸性、アルカリ性以外にアジサイの花色を変える要素には、どのようなものがあるのでしょうか。

「土壌の水分量と、肥料にも使われるリン酸の含有量がアジサイの花色に影響を与えます。水分量の多い土壌ではアルミニウムが溶けやすくなってアジサイの吸収量が増えるため、アントシアンとの化学反応が盛んになって、花色の青みが強くなる傾向にあります。

一方、リン酸の多い土壌ではアルミニウムが溶けにくくなるため、アジサイの吸収量も減少します。そのため青みがかからず、アジサイ本来の赤みがかった花色が保たれるのです」(小山さん)

品種によって花色が変化しないアジサイも?

品種の特性で花色が変化しないアジサイには、どのようなものがありますか。

「品種の特性上、土壌の酸度に影響されにくいアナベル系のアナベル(白)、グランデ、ミディピンク。ノリウツギなどが知られています。

アナベル(白)など花色が白色のものは、元々アントシアニンを持っていないので土壌の酸度の影響を受けず、花色は白いままで変化しません。

ノリウツギは土壌中の酸度ではなく、紫外線と夜温によって花色を変化させます。夏の咲き始めのノリウツギの花色は白ですが、紫外線を多く受けたり夜温が15℃程度になったりするとアントシアンが生成されて、赤みがかった花色に変化します。

青色のアジサイはアルカリ土壌で育てても青色が残ります。同じように赤色のアジサイを酸性土壌で育てても赤色が残ります」(小山さん)

家庭で好みの花色に変えるには?

家庭でアジサイを植栽して楽しむためのポイント、注意点はどのようなものでしょうか。

「花をキレイに咲かせるためには肥料が必要ですが、特にアジサイに限っては肥料に気を配ってください。

肥料によって花の酸性化やアルカリ化が進められます。青色の花を咲かせたいときは油かすを単体で、ピンク色の花を咲かせたいときは骨粉や魚粉、油かすなどが混ざった有機肥料を与えるといいと思います。

土壌によって花色が決まっているアジサイは特性に合った土壌で育てることで、より美しい花色で楽しむことができます」(小山さん)

今年のアジサイの開花は平年より非常に早い所が多く昨年並で、東京では開花し始め、6月中旬にかけて各地で開花する予想です。

土壌の酸度の違いによって花の色が変わるというアジサイ。名所を訪ねたり、公園などで、青やピンク、白色それぞれの違いを楽しんでみてはいかがでしょうか。

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