「春眠暁を覚えず」は時差ボケが原因だった!?

春は寝心地がよくてなかなか起きられない、と感じる方が多いですね。「春眠暁を覚えず」という言葉があります。中国の唐代の詩人、孟浩然(もう・こうねん、689〜740年)の詩の一説で「春の夜はまことに眠り心地がいいので、朝が来たことにも気付かず、つい寝過ごしてしまう」という意味です。これだけ一般的に浸透しているのは同感している人が多いからでしょう。

なぜ春はつい寝過ごしてしまうのでしょうか? それは春の気候が大きく関係しています。ウェザーニューズ気象病顧問アドバイザーの佐藤純先生に「睡眠」と「春の気候」の関係について教えてもらいました。佐藤先生は“天気痛・気象病”研究・診療の第一人者で愛知医科大学客員教授(中部大学教授)です。

生活環境の変化によるストレス

春は入社や異動など生活環境の変化が多く、この環境の変化が睡眠に影響しているそうです。

「思い通りにいかないことが増えると、常にピリピリとした警戒態勢になり、交感神経が優位になる状態が続きます。私たちは自律神経のコントロールを無意識のうちに行っていますが、交感神経と副交感神経のバランスが乱れ、どちらか一方だけが優位な状態が長く続くと、倦怠感や不眠などの不調が生じやすくなってしまうのです」(佐藤先生)

寒い冬から身体が解放される

また、冬と比べて睡眠に適した気候であることも、原因のひとつだといいます。

「人間の体は深部体温(体の内部の温度)が下降期にあるほど眠りやすくなるようできていますが、冬は寒さで身体が熱を放出しないため、深部体温が下がりにくくなり、眠りも浅くなりがちです。

春になり気温が上がると血管が拡張して放熱されやすい、つまり深部体温が下がりやすい環境になるため、自然と眠りが深くなり、暁(明け方)に気づかず寝過ごしてしまうことがあるのです」(佐藤先生)

体内時計がズレて軽い時差ボケ状態に

春は日の短い冬が終わり、徐々に日照時間が増加していく時季でもあります。この日の出・日の入り時間の変化が睡眠に大きな影響を与えるそうです。

「眠気を誘う『メラトニン』というホルモンは夜間に分泌が活発化し、光を浴びることによって抑制されます。私たちにはメラトニンの量が増えたり減ったりの自然なリズムがあるのですが、夏に比べて冬のほうがメラトニンが増える時間帯が後ろにずれる傾向があり、起床時刻も遅くなります(上図参照)。

ところが春になると日の出が早くなっていくので、冬の日照時間に慣れた身体がその変化に対応しきれなくなり、体内時計にズレが生じてしまうのです。つまり、この軽い時差ぼけのような体内時計のズレが、春の眠気を引き起こしているのです」(佐藤先生)

「春眠暁を覚えず」の対策法は?

「春眠」とうまく付き合うためには、この時差ボケを解消することが肝心だと佐藤先生はいいます。

「体内時計と日照時間を調節するため、日の出が早くなる分、早めに入眠することが大切です。例えばぬるめの入浴(38〜40℃)で自律神経を整えたり、寝る1〜2時間前は少し照明を落とすなど、副交感神経を優位な状態にすることを意識しましょう。そうすることで、メラトニンの分泌が活性化します」(佐藤先生)

逆に、次のようなことは、交感神経を刺激して、脳を覚醒させてしまうので、できるだけ避けたほうが良いと、佐藤先生は指摘します。

●寝る前まで明るい照明のまま過ごす
●寝る前にスマホやタブレットを使用する
●夕食後にコーヒーや紅茶などのカフェインを摂る

日照時間など季節変化による体調の変化は自然の現象ですが、原因がわかれば人工的にコントロールすることもできます。是非参考にして、快適な「春眠」を手に入れてください。

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