大阪市、入札改革も…談合防止「いたちごっこ」

 大阪市発注の公共工事の入札をめぐる官製談合・贈収賄事件は、6日に市建設局の職員2人が逮捕されてから10日が経過。これまでに、市は以前から談合情報が寄せられていたにもかかわらず有効な手立てを打てていなかったことが判明している。談合事件が起こるたびに入札方法を変更するなどの対策を講じながら、今回も談合を許した大阪市。専門家は「法律や制度を定める行政と業者側のいたちごっこだ」と指摘する。(入澤亮輔、森西勇太)
談合調査の対象者
 「情報を漏らしていたとは分からなかった。信頼を置いていたのでショックは大きい」。大阪市建設局の中井博之・道路公園設備担当課長は、部下だった青木伸一(45)と坂東浩樹(45)の両容疑者についてこう語る。
 2人は電気工事会社「アエルテクノス」社員の白木京介容疑者(48)=贈賄容疑などで逮捕=に対し、計30件の入札情報を漏洩したとする官製談合防止法違反容疑で大阪地検特捜部に逮捕された。青木容疑者は、情報提供の見返りなどとして現金や自動車など計約700万円相当の賄賂を受け取ったとする加重収賄容疑にも問われている。
 「2人がアエル社の人間と懇意にしていることは知らなかったし、そういうそぶりもなかった」と中井課長。しかし、彼らは過去、談合情報が寄せられたことに関連して聞き取り対象になっていた。
 市によると、平成28年に「同じ業者が最低制限価格に近い金額で工事を落札している」などの情報が寄せられ、市は2容疑者を含む複数の職員や業者を調査。2人は幹部の聞き取りに「情報は漏らしていない」などと否定したという。
 ところが、青木容疑者は今回、26~29年の入札で情報を漏らした疑いが持たれている。中井課長は「限られた情報の中、捜査権があるわけではないので、(談合への関与を)否定されたらそれまでになってしまう」と釈明した。
対策打ち出すも…
 大阪市では過去にも市職員が関与する談合事件が起き、そのたびに対策を講じるなどしてきた。
 12年には、公営住宅の電気設備工事の指名競争入札をめぐり、大阪府警が当時の市議会議長や市幹部らを逮捕。市は、職員と業者らが顔を合わせる機会を物理的に排除しようと、16年2月からインターネットによる電子入札を導入した。
 手抜き工事につながる恐れのある低価格入札が全国的に問題になると、24年度から予定価格(落札できる上限額)の事前公表を廃止。最低制限価格(落札できる下限額)の算出を複雑にするため、いったん設定した設計金額に、事前に設定した複数の係数のうち1つを無作為に選んで掛けあわせ、それを最低制限価格とするように改めた。
 ただ、情報漏洩が疑われている26~28年度の場合、設定された係数はわずか15通りで公表もされていた。約10社の談合グループを束ねていたアエル社は、2容疑者から漏れた設計金額に係数をかけた金額を各社に割り振ることで“対抗”。グループの会社が落札した場合、その下請けに入ることで談合の甘い蜜を吸っていた。
 市は29年度に係数を101通りに増やしたが、いくら係数を増やしても、設計金額が低ければ算出される最低制限価格は似たような金額になるといい、実効性には疑問の声も上がる。
 「業者は工事を受注してなんぼ。談合はなくならない」と大阪府内のある電気工事会社の関係者。入札改革などに詳しい法政大大学院の武藤博己教授(行政学)も「業者側は利益がバランスよく配分されるほうがいいと考え、対策が強化されてもそれに対応してくる」と指摘する。
 市は事件を受けて、警察や検察のOBをトップに据える不正取引監視室の設置の検討を開始した。この対策は実効性があるものになるのか。真価が問われるのはこれからだ。

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