「いきなり超大物政治家をドカンと捕える」裏金問題を指揮する森本検事部長の素顔「リクルート事件の遺伝子を継ぐ」「あだ名はパンチ森本」

“パンチ森本”と呼ばれる森本宏最高検刑事部長(写真・共同通信)

 

 司直の手は、果たして自民党中枢まで伸びるのか――。

 

 12月19日、東京地検特捜部は、自民党最大派閥・安倍派と二階派の事務所への強制捜査に踏み切った。

 

 東京地検特捜部は、政財界の不正などを摘発する「日本最強の捜査機関」。過去には、ロッキード事件やリクルート事件などの政界汚職を手がけたことで知られる。

 

 

 今回、捜査の指揮を執るのが森本宏・最高検刑事部長と伊藤文規・特捜部長のコンビだ。

 

「森本氏はハードな仕事ぶりと髪型から『パンチ森本』と呼ばれています」(社会部記者)

 

“パンチ森本”の登場に「捜査の“本気度”が伺える」と語るのは、「インサイドライン」編集長の歳川隆雄氏だ。

 

「森本氏は2017年9月から2020年7月まで特捜部長を務め、在任中には日産元会長のカルロス・ゴーン被告の特別背任事件や、秋元司・元衆院議員のIR汚職事件、元法相の河井克行夫妻の大規模買収事件などを手がけてきました。森本氏を副部長の一人として支えて来たのが伊藤氏です。検察内部では、2人とも行政官としての経歴が長く、国会答弁などに注力するような“赤レンガ派”ではなく、実地での捜査の実績が豊富な“現場派”です。彼らには、そもそも政治に気を遣うという発想自体ないでしょう」

 

 今回のパーティ券をめぐる裏金事件は「令和のリクルート事件」とも呼ばれている。リクルート事件とは、1988年に当時の竹下登首相や、森喜朗氏がリクルートの関連会社の未公開株を賄賂として受け取っていたことが発覚した事件。政界・官界を巻き込む一大疑獄事件だ。森本氏には、このリクルート事件を捜査した先輩検事たちの“遺伝子”が脈々と引き継がれているという。

 

「森本氏は下呂温泉で有名な岐阜県下呂市出身。岐阜県立益田高等学校、名古屋大学法学部を卒業しました。もともと弁護士志望でしたが、同じ下呂市の出身で高校の先輩にあたる熊崎勝彦元最高検察庁公安部長のすすめで、検察官に任官しています。熊崎氏は東京地検特捜部長時代に、金丸信の巨額脱税事件、ゼネコン汚職事件、大蔵省接待汚職事件の指揮を執った人物です。

 

 熊崎氏は2021年に亡くなっていますが、リクルート事件を捜査した吉永祐介東京地検検事正(当時)、松田昇特捜部長、宗像紀夫主任検事のラインに連なる“現場派”で、森本氏もこのDNAを受け継いでいます」(歳川氏・以下同)

 

 リクルート事件では、労働省、文部省、NTT、政界の4つのルートを捜査の対象としたが、いきなり“本丸”に攻め込んだ。

 

「当時NTTの会長だった真藤恒氏という“超大物”をいきなり逮捕したんです。熊崎氏の後輩である森本氏も、当然こうした捜査手法を徹底的に叩き込まれています。今回、安倍派の事務総長である高木毅国対委員長、西村康稔前経産相など、政治家の名が取り沙汰されていますが、いきなりドカンと超大物の逮捕もあるかもしれません」

 

 さらに、森本氏には安倍派に対する“怨念”がある。2020年2月の安倍政権による検察人事への介入問題だ。モリ・カケ・桜問題で追い詰められた安倍元首相は、検察官の定年延長を閣議決定。“政権に近い”とされていた黒川弘務東京高検検事長が、検事総長に就任することを可能にした。

 

「結局、2020年5月に賭け麻雀問題が発覚し、黒川氏は検事総長になれなかったわけですが、安倍一強状態のなかで、安倍官邸が人事を画策したのは事実ですよ。

 

“安倍一派”による不当な人事介入に対し、現場の特捜検事たちは欲求不満が溜まりに溜まっていました。黒川氏に代表される“赤レンガ派”に対する反発もあって、それが今回、捜査の本気度に繋がっているわけです。捜査態勢も、当初の50人から100人に増員された。これだけ力を入れているんだから、何もなかったで終わるわけにはいかない。続々と“お縄にかかる”議員が出てくる可能性がありますよ」

 

“パンチ森本”が闇金議員をノックアウトだ!

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