台湾で安倍元首相の銅像が製作中 場所は日本の軍艦を祀る寺社「家族が亡くなってしまったような悲しみです」

9月中旬に完成予定の安倍元首相の銅像

 

 7月8日に発生した、安倍晋三元首相の銃撃事件。突然の訃報に、世界中の要人が追悼メッセージを寄せた。政府は9月27日に国葬を予定しており、こちらにも、海外から多くの弔問者が訪れる予定だ。

 

 そんななか、台湾には安倍元首相の「銅像」を建てることで、追悼しようとする寺社がある。その名は「紅毛港保安堂」だ。

 

 担当者である専務の陳凱鈞氏と、主任委員の張吉雄氏が取材に応じてくれた。

 

 

「『紅毛港保安堂』は、日本の軍艦を祀る廟であり、もともと日本と深い交流があります。台湾と日本はつねに緊密な関係ですが、中でも安倍元首相は生前、台湾に対してよくしてくださっていました。2021年12月には日本の国会議員の方を通じて『安倍元総理が訪台する際には、ぜひとも当廟に祀られている日本兵の英霊に参拝していただき、献花をしてほしい』とお伝えしておりましたが、まさこんなこんなことになるとは……。

 

 突然の訃報を聞き、安倍元総理の日台友好に対する貢献を記念するとともに、両国の変わらぬ友情の象徴として、銅像の建立を決めました」

 

 除幕式は、9月24日を予定しているという。

 

「銅像自体は、9月の中旬ごろには完成する予定です。地元選出の民進党国会議員である許智傑氏を通じて、頼清徳副総統らに除幕式への参加を打診していますが、出欠はまだ分かっていません。頼副総統は、安倍元首相の葬儀にも参加していたので、お願いをしました。除幕式はYouTubeを通じて、公開する予定です。

 

 また2018年に、御神体として祀っている軍艦『第三十八号哨戒艇』の資料が発見されたことから、御神体の本来の姿を模型で作成し、奉納するために寄付を募っています。

 

 台湾人にとって、安倍元首相の突然の逝去は、家族が亡くなってしまったような気持ちです。しかし、台湾と日本の友好は、安倍元首相の死で途切れてはなりません。今後も台湾と日本の間の友情を続けていくため、双方の交流を進めていかなければなりません」

 

 心温まる話ではあるのだが、そもそも、日本の軍艦を祀る寺社とはいったい何なのか。

 

「1946年、地元・紅毛港の漁師の方が1個の頭蓋骨を海で見つけ、地元の祠に安置したことから始まったそうです。大魚が続いたので、霊験があるとして人気になり、保安堂となりました。

 

 さらに、近くに住む男性が、知らないはずの日本語で突然『私は日本第三十八号軍艦の艦長であり、太平洋戦争中に死亡した。日本の護国神社に帰りたい』『部下を郷里に帰すことができず悔やんでいる』と語りだしました。

 

 そこで調べてみたところ、“第三十八号軍艦”と合致するとおり、第三十八号哨戒艇が台湾島南東のバシー海峡で沈んでいたことがわかったのです。以後、この寺社では第三十八号哨戒艇と、その艦長であった高田又男大尉を祀るようになったということです」(台湾事情に詳しいジャーナリスト)

 

 台湾在住のカメラマン・橋本佳実氏は、現地での評判をこう語る。

 

「寺社マニアの人には認知されています。その中では、ユニークさが売りの場所ですね。たしかに、銅像が建立されるのも納得できるほど、安倍元首相は人気でした。

 

 日本有数の親台湾派の有力政治家と見られており、銃撃当日のテレビ局のYouTubeチャンネルには、哀悼のコメントのほか、台湾への累計420万回分の新型コロナ用ワクチン供与での助力などについて、感謝の言葉が並びました。

 

 安倍元首相は日ごろから、『中国に禁輸された台湾産パイナップルをみんなで食べよう』とSNSにアップして応援したり、『台湾有事は日本有事』など、国連をはじめとする国際機関への加盟が出来ていない台湾にとっては心強い発言をしたりと、現地では尊敬の念を集めていました。

 

 また、7月15日には、台湾の大手企業や有志からの募金によって、安倍元首相を追悼する全面広告が産経新聞に掲載されましたが、募金が1日で集まるなど、その注目度は高く、多くの国民が広くその死を悼みました。

 

 台湾での実質的な大使館である『公益財団法人日本台湾交流協会』台北事務所の前には、有志がメッセージボードを設置しましたが、1日で満杯に。2日めには2枚めが設置されましたが、同日夜にはまた書く場所がなくなるほどでした。交流協会によると、7月11日から7月17日に台北、高雄両事務所を訪れて記帳した人は、1万5000人近くに上るといいます。

 

 また今回、銅像を建立する『紅毛港保安堂』は、交流協会よりも早くから、記帳を受けつけていました」

 

 当の日本では、安倍元首相の国葬が猛反対されている。追悼の気持ちだけは、なくしたくないところだ。

 

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