産経新聞「東北総局」廃止で全国紙の看板を捨てた! 大物OB・俵孝太郎氏は「天下国家を論じるメディアになれ」

産経新聞が主催する棋聖戦で、藤井聡太棋聖に賞杯を手渡す飯塚社長(写真・朝日新聞)

 

「経営陣は、どこまで合理化を図るのでしょうか。戦線縮小が続き、社内の空気は非常に重たいものがあります」(東京本社管理職)

 

 5大全国紙の一角を占める「産経新聞」を発行する産経新聞社が、とうとう決断した。

 

「3月下旬、東京本社の幹部らに『2022年10月にも、東北地方を統括する東北総局を廃止する』ことが伝えられました。同時に、前橋支局、宇都宮支局、静岡支局も廃止が決まりました」(同前)

 

 

 従来の支局は、県庁所在地の中心部のビルに入居し、仙台市にある東北総局の場合は「支局長とデスク、現場で取材をおこなう記者が3〜4人の態勢でした」(同前)

 

 それが10月の再編で、記者が一人駐在するだけになるという。

 

「記者の自宅マンションやアパートを拠点に、記事を出稿することになるのです。数年前に我が社は、東北総局以外の5県の支局を廃止して、“駐在地域” としました。しかし、東北の拠点である仙台を駐在地域にするのは、東北地方から撤退するに等しい。これでは、全国紙の看板を下ろすようなものです」(同前)

 

 支局削減の背景には、新聞社を取り巻く厳しい経営環境がある。産経新聞社の場合、売上高は前年同期比で8.5%減、営業利益や経常利益はともに約5億円の赤字となっている(2022年3月期中間決算)。

 

 だが、現場からはこのような恨み節が聞こえてくる。

 

「3月16日に福島県で発生した地震のときにも、他紙に見劣りする紙面になっていました。これ以上人員を減らされたら、目も当てられません」(社会部記者)

 

「支局員は県警、県政、遊軍取材を掛け持ちしています。十分な取材ができず、共同通信の配信記事が増えている実感があります」(支局記者)

 

「経営陣はネットでチケット購入や買い物ができるサービス『産経iD』に活路を見出すつもりですが、とうてい新聞事業の赤字を補うレベルではありません」(管理部門社員)

 

「これまでは、同じフジサンケイグループであるフジテレビが『産経新聞』に広告を出稿するなどして、経営を下支えしてきました。しかし、フジテレビも2022年3月にリストラをおこなうなど経営状態は悪く、フジ社内では『産経を助ける余裕はないだろう』との声が上がっています」(別の管理部門社員)

 

 こうした支局の廃止は中国、中部地方ではひと足早く進められており、10月以降、47都道府県中、従来型の支局が置かれるのは13県にすぎない。ある記者は寂しげにこう語る。

 

「今後の駐在地域では、たとえば『栃木版』『群馬版』といった県版を『北関東版』などに統合し、人件費や支局運営費を削減する狙いでしょう。『産経』に県版の需要を感じる読者は少ないという経営判断なのでしょうが、支局は新人記者の修業の場所でもあります。社全体が縮小していく姿は、見ていて切ないです」

 

 東北総局などの廃止について産経新聞社に問い合わせると、「現段階でお答えできることはございません」(広報部)との回答があった。

 

 悲観的な証言が多数派を占めた今回の支局廃止だが、「支局廃止は大賛成。評価します」と即答した人物がいた。元「サンケイ新聞」論説委員で、政治評論家の俵孝太郎氏(91)だ。

 

 俵氏は1953年に産経新聞社に入社。34歳にして論説委員に就任し、1969年の退社後は『FNNニュースレポート』(フジテレビ系)や『マジカル頭脳パワー!!』(日本テレビ系)で活躍した大物OBだ。

 

「私は、支局で扱うニュースは、地元のテレビや新聞にまかせればいいと思います。たとえば、ある地方で大きな災害があったとしましょう。そのとき、総力を挙げて取材する地元メディアに比べて、NHKや全国紙の報道は、間が抜けているように私には映るのです。どうやっても、支局の取材力では、地元に本社があるメディアには勝てないわけです」(俵氏、以下同)

 

 全国紙の新人記者は、大半がまず地方の支局に配属され、取材のイロハを学ぶ。だが俵氏は、そうした支局の役割についても一刀両断する。

 

「私は支局に出たことがないんですよ(笑)。昔は『こいつは書けそうだ』という記者は、初めから本社の中で育てたものです。私も2年間 “サツ回り” (警察担当記者)をして、事件が起これば2日でも3日でも帰りませんでした。サツ回りにローカルニュースの本質が詰まってるんですよ。私はそれで十分だと思います」

 

 そして「産経新聞」の進むべき道を、こう示す。

 

「『産経』は、天下国家を論じるメディアになればいいと思います。『読売』は、ナベツネ(渡邉恒雄主筆)が現場にいて、怒鳴っていたころまではよかった。『産経』は、その点では今も頑張っています。根性が入っていて、けっこういい記事を書いていますから」

 

《創刊以来、「モノをいう新聞」を標榜し続ける全国紙》(産経新聞社ホームページより)

 

 新聞協会賞(編集部門)から「産経新聞」の名をあまり見かけなくなって久しい。全国紙の看板を事実上下ろして、「モノをいう」ばかりの新聞を、読者はこれからも読んでくれるだろうか。

 

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