工藤会総裁に死刑判決 「気骨の裁判官」は「漫画村」事件も一刀両断、「宮古島唯一の裁判官」だったことも

野村悟被告(写真・朝日新聞)

 

「修羅の国」という不名誉な異名を持つ北九州で暴れまわり、「日本最凶の組織」と称された特定危険指定暴力団工藤会(本部・北九州市)総裁の野村悟被告(74)に死刑判決が言い渡された。

 

 1998年の元漁協組合長射殺、2012年の元福岡県警警部銃撃、2013年の看護師刺傷、2014年の歯科医師刺傷の4事件で首謀者と認定。このほかにも放火や手りゅう弾の投げ込みなど、市民を直接狙った事件にかかわっており、トップとして指示していた野村被告の罪は大きい。

 

 

「主文が言い渡されると、野村被告は足立勉裁判長に向かって『公正な判断をお願いしたのに全然公正じゃない』『生涯後悔するぞ!』など暴言を連発。無期懲役を言い渡された工藤会ナンバー2の田上不美夫被告(65)も『ひどいな、あんた。足立さん』などと憎まれ口を叩きました。

 

 足立裁判長は4月に東京高裁に異動したのですが、この日は福岡地裁に出張して判決を読み上げていたんです。それを知っている田上被告は『東京の裁判官になってよかったね』と、地元にいれば報復するぞといわんばかりの恫喝をしたのです。裁判所の中で威圧的な発言をする、まさにザ・ヤクザですよね」(社会部記者)

 

 脅されながらも、毅然として死刑を言い渡した足立裁判長は、那覇地家裁平良支部(沖縄県・宮古島)の支部長を務めた経験を持つ。島でたった1人の裁判官として島民とふれあいながら、人々の本音や地域が抱えている課題を引き出すことに努めた。合唱、テニス、夏祭りと行動範囲を広げ、島民からは「裁判官のイメージが変わった」と言われたという。

 

 また、過去に「漫画」をめぐる裁判を多く手がけている。2002年、児童買春をおこなった罪で有名漫画家に「読者である青少年に与えた悪影響は大きい」として有罪判決を言い渡し、2019年には海賊版サイト「漫画村」に人気漫画を無断掲載した罪に問われた被告に「著作物の集積制度を破壊する悪質な犯行で、社会的な影響は大きい」として有罪判決を言い渡している。

 

「東京地裁からスタートし、福岡のほか神戸や水戸、横浜、松山などに赴任。工藤会の事件は2019年の初公判から今年3月の結審まで計62回の公判を担当しています。今後も脅迫されたりする危険はあるかもしれませんが、屈することはないでしょう」(地方紙記者)

 

 日本有数の危険組織の幹部に死刑と無期懲役の判決を下した足立裁判長。その気骨の決断で、地元の平和を求める住民たちの願いは叶うのか。福岡の今後に注目が集まる。

 

ジャンルで探す