どこでも見かけるアメリカザリガニ…わざわざ輸入した意外な理由とは/5月12日の話

 

 1927年(昭和2年)5月12日、食用ウシガエルの餌にするため、日本にアメリカザリガニが輸入された。現在あちこちの川で日常的に見かけるが、この日、輸入されたのはたったの27匹だった。

 

 ザリガニは身近な生き物だが、実は、「日本の侵略的外来種ワースト100」に指定され、外来種のなかでも特に生態系や人間社会に悪影響を及ぼす存在とされている。

 

 

 国立環境研究所室長の五箇公一さんが、こう語る。

 

「アメリカザリガニやウシガエルが輸入されていた当時は、富国強兵の時代。外来種をたんぱく源として活用することが推奨されていたのでしょう。

 

 実際に、食糧難だった戦後まもない時代では、みんなが食べて命をつないでいました。私の母も食べたらしく、『ウシガエルは、皮を剥いでもまだ跳ねたよ』と話していました。

 

 いまはもう誰も食べませんから、すごい勢いで増えています。日本全国で何千万匹、いやそれ以上かもしれません。アメリカザリガニは汚い生活排水のなかでも生きていけるし、ペットとしても身近です。

 

 しかし彼らは大食漢で、ため池や沼にいるゲンゴロウのような希少種までばくばくと食べてしまう。水草や稲をはさみで切ってしまうので、農業被害も増えています。そうした意味で、非常に厄介な生き物なんですよ」

 

 外来種である以上、基本的には根絶が理想だ。実際、2020年11月から、環境省は外来ザリガニを「特定外来生物」と指定し、新たな販売や飼育を原則禁止する措置を取っている。しかし、アメリカザリガニは、指定により、かえって大量に捨てられて混乱を招く恐れがあるため、除外されている。

 

「正直、数が増えすぎて、根絶対策はできていないのが現状です。国としても、法律上の特定外来生物に指定するところまで踏み切れない。

 

 ですが、そんなことを言い続けていては被害が拡大するばかりで、これ以上の輸入や飼育に何らかの規制を設けなければ繁殖は止まらないでしょう。

 

 ある意味、大量に資金を投入すれば、どんな外来種でもゼロにできるんです。たとえば沖縄・奄美で問題になっていたマングースは、20年近く捕獲を繰り返したところ、まだ検証中ではありますが、奄美では根絶した可能性が示されています。

 

 人件費含め年間3億円ほどかかっていますが、海外での事例と比較すれば、たった3億という言い方もできます。お金をかけて、本気で取り組めば根絶は可能です」(五箇さん)

 

 アメリカザリガニを「面倒くさい外来種」としながらも、単純に外来種を悪者にする現代の風潮に、五箇さんは釘を刺す。

 

「在来種と外来種を、善悪の二項対立にするのではなく、なぜ外来種がこんな状況に至ったのかを知ることが、問題の本質を考える上で重要です。

 

 もともと食用として日本に連れてきたのに、生活が豊かになったら食べなくなってしまう。

 

 さらに、私たちが子供だった高度経済成長期は、公害がひどく、生活排水や農薬で環境が汚されている時代でした。むしろ、外来種しか住めなくなってしまった世界を、我々が作り上げたとも言える。

 

 勝手に連れてこられて、勝手に悪者にされている。生き物が常に被害者であることには変わりありません。そうした背景を知った上で、じゃあどう責任を取るのか、という観点が必要です」

 

 アメリカザリガニを駆除できれば、すべて解決とはいかない。

 

「かつての日本のような、しっかりした里山で、元気な生態系が持続していれば、よそ者である外来種が蔓延る余地なんてないんです。逆に言うと、どれだけ駆除しても、生態系が弱っていれば外来種は増えてしまう。

 

 ですから、アメリカザリガニを駆除するということは、日本の自然環境を取り戻すプロセスの一環であると考え、自然再生とセットで進めていく必要があるでしょう」(五箇さん)

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